第207話 敵の行動



 ヨミが『堕天王ルシファー』を発動し、『能堕結界』が展開された。


「あ、桃太郎達が弱くなっちゃった!?」


「レベルは逆転したけど……」


 ヨミのレベルが68まで上がり、桃太郎はレベル60へ下がった。3匹のモンスター達はレベル30になっているが、まだ油断は出来なかった。

 四天王の魔法で召喚された桃太郎達がこれで終わるとは思えなかったから。




『煉獄車』




 極炎猿が自分を炎で包み込み、転がってきた。レベル30以上の差もあるのに、恐れることもなくヨミへ突っ込んでいく。それに対して、ヨミは嫌な予感を感じた。


 このまま斬り伏せてもいいけど……ここは回避!


 自分の勘に従って、反撃をせずに回避をした…………




 その選択は正しかったようで、回避した後に桃太郎が何かしようとしていたのが見えていた。桃太郎は激突しなかったのを見て、その何かをキャンセルしていた。




『ブレイブ・ショックバード』



『廻天爪突』




 今度は2匹同時、太陽の光を纏って突撃する鋼錬雉と前足の爪を伸ばし、自分自身を回転して突撃する狂獣犬。

 ヨミは2匹が繰り出す攻撃の性質を見破る。


 どちらも接触攻撃……さっきの猿も同じ!


 レベルが大きく離れたなら、桃太郎のサポートに徹した方がヨミに勝てる可能性が高いのに、何故か桃太郎は動かず、3匹が積極的に接近戦で戦おうとする。先程までは1匹は必ず遠距離から攻撃してきたのだが、今は3匹が近距離で攻めてきている…………

 クロエの召喚モンスターが脳死で攻めるなんて、考えられないので何か策がある可能性が高い。現に、桃太郎が何かしようとしているのだからーーーー




 接触しては駄目ね。なら、この力が役立つわ!




 まだ1度も使っていなかった、魔法陣の模様が描かれた左手。




「『魔陣封頸』……『月鏡の裁断ミラー・ムーン・ジャッジメント』をリリース!」




 左手を突撃してくる鋼錬雉、狂獣犬へ向けて、『魔陣封頸』を発動した。『魔陣封頸』の効果はーーーー




『魔陣封頸』


 自分の使える魔法を左手に刻まれた魔法陣に保存し、解放することが出来る。その解放される瞬間に消費されるMP、溜め時間は皆無となる。

※保存、解放は1日に5回ずつまで。



 このスキルは前以まえもって、自分が使える魔法を保存が出来て、その保存する時にその魔法を発動するのに必要な魔力を消費するが、解放する時は魔力を消費も溜め時間が必要なくなる。

 なので、ヨミは保存する魔法は『月鏡の裁断ミラー・ムーン・ジャッジメント』を選択した。この魔法は本来なら、現在のMPで8割も消費し、30秒の溜め時間があった。その厳しい条件が使用状況を限らせていた。




「「…………!?」」




 MPを8割も使うだけあって、レベル30に弱体化した2匹は耐えることも出来ずに消し飛ばされる。


 このスキルは回数制限があるといえ、使い勝手が良いわね。アルバドムの時にも使えたらすぐ終わったけど、保存していなかったから使えなかったよねぇ…………む、桃太郎が何かしようとしている?


 2匹のモンスターがヨミに触れることも出来ずに消し飛ばされたのに、桃太郎は表情を変えずに刀を地面に突き刺していた。




『極炎爆拳』




 桃太郎へ視線を向けていた所に極炎猿が拳を燃やして殴りかかってきた。


「ん……? もしかして!?」


「あ、気付いちゃった?」


 ヨミは1つの可能性に気付いた。3匹の目的がヨミに触れることではなく…………




 チッ! どのみち、やるしかないわ!




 既に極炎猿が接近して、殴りかかってくる拳が襲ってきている。避けても、技の名前から爆発しそうな気配がするのでぎりぎり避けても駄目だと判断した。なら、ドルマを横に振り切って倒すしかない。


「…………!」


「……仕方がないわ。やっぱり、目的はやられて貰うことだったわね?」


「正解! このままじゃ、桃太郎でも厳しいからね~」


 クロエから正解を貰い、再びに桃太郎へ目を向けると、地面に突き刺さった刀に何かの力が集まっているのがわかった。




「本番はこれからなのね」


「うん。頑張って倒してみてね!」


 喋らない桃太郎の代わりにクロエが応え、ゆっくりと刀を抜く桃太郎がいたのだったーーーー






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