第206話 桃太郎
クロエが1冊の本を取り出したかと思えば、1人と3匹の何かが召喚された。『
絵本では桃太郎は人間だったよね? 何故、鬼みたいに角が生えているのよ……それに犬、猿、
ヨミが思っている通り、絵本に出てくる桃太郎は桃から生まれた人間なのだが、角が生えていて手には刀と金棒を持っていた。更に犬は犬というより狼男みたいな姿だし、猿は身体が燃えていて極炎猿と名が出ている。雉に至っては、身体がメタリックで生き物ですらなかった。
「ふふん♪ どう、私の桃太郎は? 強そうでしょ!」
「これを桃太郎と言ってもいいかわからないけど、強そうなのは間違いないわね……」
ヨミは桃太郎達が現れた瞬間に、鑑定を使っていた。クロエは全く何も見えなかったが、桃太郎達は何とか名前とレベルだけは見えた。
暴虐の桃太郎 レベル80
狂獣犬 レベル50
極炎猿 レベル50
鋼錬雉 レベル50
無理…………アルバドムと戦う前のヨミだったら、そう思っていただろう。
「『悪堕ち』」
「おおっ! このレベルの差でも諦めないのね!」
「なら、少しはレベルを下げて欲しいけど?」
「ゴメンね。私の魔法で1番弱いのがこれなの」
「1番弱い……」
これで1番弱い……? 『
ヨミは理解した。今のレベルではクロエの相手にはならない。目の前にいるモンスターにも勝てるかわからないのに、まだ強いモンスターを出せるのだ。
「そろそろ始めようよ! 私は戦わないから安心してね。行っちゃって!」
「「「「…………」」」」
「っ!」
桃太郎達は何も叫ばず、命令を下された瞬間に動き出した。先に前へ出たのが、メタリックな身体を持つ雉。
『メタル・ウィング』
こちらへのハンデなのか、相手が技を使う前にアナウンスから技名が流れた。このアナウンスがあったお陰で、突っ込んでくる鋼の翼を避けることが出来た。だが、反撃へ移る前に他のモンスターが攻撃してくる。
『極炎玉』
温度が桁外れに高そうな炎の玉が複数を両手で投げてきた。
「コントロールが良いわね!? ドルマ! 『夜天月斬』!」
避け続けても次の玉が次々と来るのでドルマを装備して、『夜天月斬』で相殺していく。炎の玉が止む前に狂獣犬が動いた。
『爆叫音波』
狂獣犬がしたことは叫んだだけ。しかし、その叫びは全てを破壊する音の激流だった。
「ッ! 『呪怨咆哮』! キッカぁぁぁぁぁ!!」
『呪怨咆哮』を使ったが、相殺は無理と察知し、キッカを盾にした。しかし、音の衝撃を全て防ぐことは出来ず、僅かにダメージを受けてしまう。音の攻撃が止んでも、ヨミは油断しなかった。この流れなら…………
『桃重圧』
やっぱり来た!
レベル差が30もあるので、受け止めることはしない。技の名前、棍棒を振り回していることから効果は読めた。上空から叩きつけようとする桃太郎から大きく距離を取った。
ドゴォォォォォッ!!
そこには桃の形に潰れた地面があった。推測していた通りの効果だったようで、広範囲の攻撃で大きく距離を取らなかったら巻き込まれていただろう。
「『乱月光波』」
「…………」
スパッ!
桃太郎が無動作に刀を振っただけで『乱月光波』が斬り裂かれてしまった。
「レベルの差がこれだけあると…………」
『シャイニング・デスバード』
いつの間に上を取られていたヨミは太陽の光を吸収した鋼錬雉が光り出し、大量の光る雉がヨミに向かって降り注いだ。
休む暇もくれないわね!?
ヨミに出来ることは避けながら、反撃するしかないが…………それも読まれて、他のモンスターから次の攻撃が来るだけ。だから、ヨミは賭けた。
「ゴメン! ピクト、やられるかもしれないけど……盾になって!」
テイトクの時と同じようで盾になって貰うが間違いなくピクトはこの攻撃を喰らえば、やられる。しかし、犠牲がないと次に進めないからだ。
「ピィィィィィ!!」
ピクトはやられるとわかっていても、逃げずにヨミを包むように守った。光る雉を受けて、ピクトの身体が燃えてしまうが叫び声を上げずに黙々とヨミを守り続けた。
「…………ありがとう。『
ヨミを守りつつ、時間を稼いでくれたピクトに感謝し、『
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