第204話 伸縮刃
北のフィールドは高低が激しい山であり、他のプレイヤーが探索を後回しにするぐらいに、面倒なフィールドである。その中で中ボスを倒したプレイヤーは立派だと思えるぐらいだ。
「この服で来たのは失敗だったわね……」
今のヨミは山を登るのに、いつもの白いゴスロリ服を着ていた。別に動きにくいとかはないが、耐寒が出来ている服ではないので身体が冷えるのだ。
ダメージを受けるほどの寒さではないので、まだ耐寒の薬を使っていないが…………
私の服は思ったより薄く出来ているよね。動きやすいようにと作って貰っているから仕方がないけど。
ダメージは受けないが、それでも寒いモノは寒いのだ。
「……ふぅ、山の中層となれば雪が降ってくるのね」
「ギガァァァ!」
「あ、敵ね」
中層まで行くと、ようやくモンスターが現れた。現れたモンスターは雪男みたいな姿をしていた。
スノーベビーマン レベル32
レベルは低いわね…………いえ、今までの敵が高かっただけでアレが普通だったわ。
最近はレベル40超えの敵ばかりと戦っていたから、モブのレベルを見るのが久しぶりで低く感じたのだ。
「まぁいいわ、早速に試させて貰うわ」
「ギガァァァ!!」
スノーベビーマンは手に持った棍棒を振り下ろそうとしてきたが、大振りなので簡単に避けられる。隙が出来た脇腹に向けて、ヨミは脚を振り回した。
「えいっ!」
「!?」
ヨミが脚を振り回すと、脚から何かが伸びてきて脇腹を斬り裂いた。それは一瞬で、伸びたモノはすぐ縮んで姿を消したのだった。
へぇ、思ったより切れ味があったわ。足装備への付属品、『伸縮刃』は脚を振り回すだけで刃の鞭が伸びて斬り裂いてくれる武器。両手が使えなくても攻撃手段があるのはいいわね。
ジュンが見つけた武器とは、足装備へ装備されている防具へ付けることが出来る代物だった。つまり、防具であっても攻撃性能がある武器へなれるのだ。
今、装備しているエイリアルの靴は元から『二段ジャンプ』が出来るブーツだったが、更に新たな能力が付け加えられたということになる。『伸縮刃』の効果はーーーー
『伸縮刃』
伸ばせる距離は5メートルまで。離れている程に与えられるダメージが減少する。
(1メートル以内での威力はAGIの50%となり、1メートル離れるごとに10%減少する)
つまり、5メートル先にいるモンスターにはAGIの10%分しかダメージを与えられないことになる。しかし、ヨミはこの武器を主体に戦う訳でもないので、威力が低くても相手の集中力を削げれば充分。1メートル以内なら、急所を狙えば一撃で殺せるかもしれない。
「この武器は称号の『泥臭い戦闘者』と合うわね」
「ギ、ッゴォォォ!!」
遅いけど、お試しで。
転がって避ける程でもないが、お試しのことで転がって避けてみた。避けている途中で脚を勢い良く振り回すだけで鞭の刃が暴れてくれる。
「ギゴォっ!?」
「うわ、周りに味方がいたら巻き込んでいるわね……」
ダメージを受けたのはスノーベビーマンだけではなく、周りの木にも切り傷が刻まれていた。先程みたいにスノーベビーマンへ向けたなら、周りには当たらないが……今のように勢い良く脚を一周したら、周りの木も刻まれる結果になったのだ。
使う場面も考えないと危ないわ。ソロなら良いけど、パーティを組む時は外した方がいいわね。
『伸縮刃』の使いどころを考えている時にまだ体力が残っているスノーベビーマンが襲ってくるが…………
「もう充分よ。消え去りなさい、『夜天月斬』!」
もう用済みなので、日傘の隠し刃を抜いて、黒い刃で斬り伏せた。ヨミのレベルは48になっているので、あっさりと体力を全て奪い去ったのだった。
「……あまり経験値は期待できないか。さっさと第4のフィールドに向かいたいわね」
ヨミのレベルはアルバドムを倒して、レベル48になっている。このレベルはおそらく全プレイヤーの中でも1、2位にはなっているだろう。中ボスや大ボスは別にして、ここのフィールドでは物足りないと判断した。
大ボスの扉をさっさと見つけたいけどーーーーッ!?
ヨミは今まで感じたこともない重圧を感じ、冷や汗をかく。その重圧が放たれている方向へ目を向けると…………
「お久しぶり♪」
いつぞ、会ったことがある幼女がいたのだったーーーー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます