第203話 何もしていなくね?
ジム通いを始めた美世、最初の日は会員証の完成に時間を取られたのでプールで軽く泳ぐだけで済ませた。
そして、帰ったらいつものようにゲームへログインする。
「あら、ジュン? こんな時間に珍しいじゃない」
「ヨミか……」
現在、夕方の6時なので仕事が終わったばかりのジュンが既にログインしていたことに驚くヨミ。何故か、元気がなさそうに見える。
「いつもなら、夜8時ぐらいには入っていたのに?」
「あー、今日は会社に帰った後、部長からの話を聞いて終わったからな」
「ふむ? 元気がないのは部長からの説教で? 偉い人から怒られるなんて、どんなミスをしたのよ」
「なんで説教だよ!? 俺は話を聞いたと言ったよな?」
「そりゃ、元気がないからそうだと思っただけよ」
「あ~、それはな……」
何故、元気がなかったと言うことは……部長からの話にあるが、内容が会社でのことではなかった。ここの世界でのことだったのだ。
「なぁ、いつも悪役として大きな事を起こす時、計画は殆どがヨミによって立てられているよな?」
「……まぁ、そうなるわね」
思い出してみれば、意見を聞いたが最終的にはヨミの策ばかりが採用されている。ヨミは決しては強要はしていないが、何故かヨミの案ばかりが決定されるのだ。
「それで、上が疑問を持ったんだ。『あれ? 潤って、何もしていなくね?』ってな……」
「ぷっ、あはははははーー!! 良かったじゃない!?」
「何処がだよ!?」
「上の方と言えば、貴方の上司でしょ。そんな人達に名前を覚えられているじゃない!」
「そんな、悪い意味で覚えられたって、嬉しくねーよ!」
つまり、上は潤が中心になって、悪役プレイヤーを纏めて貰うと考えていたのだ。それが、何故かヨミが中心になっていて、頼んだつもりであった部下が何もしていない。それにどうなんだ? と思った上の人が指示を出したのだ。
「それで、一度は誘った俺が企画して、何かを起こせと言うことらしい。その時、ヨミは実行だけで作戦を考えるのは無しで」
「あららら、大変ね……まぁ、頑張ってよね」
「他人事な……何かを起こせと言われても、どのレベルでやればいいかわかんねーよ」
「そうね、詳しいことは部長に聞いて、メリッサとルイスに相談したら?」
「……そうすっか」
いつになるかわからないが、一度はジュンが中心になって、何かを起こすことになりそうだ。ヨミはそれまでにジュンがガタガタな作戦になっても大丈夫ように実力を高めた方がいいだろう。
「んー、今のところ、ストーリーの進行はどうなっているのかしら?」
「ストーリーか。昨日で中ボスは既に全員が倒されているから、後は大ボスだけだな。まだ場所はわかっていないようだ」
「場所がわかっていないのね。まだ調べてない場所はある?」
「アルベルトやハイド達が調べていないのは……北だな」
「北ね、まだ行ったことがない場所だわ。北の中ボスはどんなのだった?」
「掲示板によると、氷の能力を使った鬼みたいだ。レベルはお前が倒した鬼のと変わらない。詳しいことも書かれているから見てみるといいぞ」
「ふぅん、暇だし探すついでに中ボスに挑んで見るわ」
「おい、戦っている途中で寒くなるらしいから耐寒にも気を付けておけ」
「わかったわ。何かないか探してみるわ」
ギルドホームにはギルドボックスと言うモノがあり、カロナやルイスが作った薬品が入っているので使えそうなのを探してみるヨミ。
えっと、耐寒は……あ、あった。効果時間は5分間ね。10個はあれば充分でしょ。他に良い物はーーーー
他に使えそうなのを物がないか調べてみたら、変な物を見つけた。
「この武器は……」
「あ? それは、俺がダンジョンで見つけた奴だな。俺は使わないから入れておいたぞ」
ジュンはダンジョンに潜ったこともあり、最深階までは行けていないが珍しいアイテムや武器を手に入れている。
「へぇ、確かに貴方は使わなそうよね。面白そうだから貰うわ」
「好きにしなよ。誰かが使うと思って、入れたしな」
ヨミは面白そうな武器を手に入れたのだった。この武器を試すのも含め、北で暴れることにするのだったーーーー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます