第196話 対立



 演説に割り込んだテイトクに対して、ヨミはフレンドとしてではなく、黒い笑みを浮かべて挑発をする。


「あら、トーナメントでアルベルトに負けたテイトクではないですか。最近、噂も聞かないから止めちゃったと思ったけど?」


「……ふん、リアルでやることがあったからな。決して! アルベルトなどにやられて悔しかったから休んでいた訳でもない!!」




 あぁ、リアルは嘘ではなさそうだけど、アルベルトに負けて落ち込んでいたのは間違いないよね? あの反応は。




 強がる子供のように見えて、つい優しい眼で見そうになる。


「むむ! そんな眼で我を見るな!」


「そう言われてもねぇ。それよりも、私と戦いに現れたよね? なら、相手をしてあげるわ」


 演説は割り込まれたが、言いたいことは既に言い終えている。だから、ヨミは戦いの場所へ移る為に翼を羽ばたこうとする。


「さぁ、新人達はゲームを楽しみなさい。テイトクとは……」


「待て! 俺達も仮面ちゃんとやりたいぜ!!」


 ヨミの相手をしたいと名乗り出たのは激裂鬼夜羅死苦のルダン。


「待ちやがれ! 俺達もお前を倒す為に来ている!」


 それから、ハイドも名乗り出て…………




「うひ、うひひひ!! 人気者は大変だわ。なら、今から一時間以内に第三のフィールドにある『闇鬼の館』へ来なさい。辿り着けた人だけ相手をしてあげるわ!!」


「な、『闇鬼の館』だと!? そこまでの道中では……」


 『闇鬼の館』はアルベルトが見付けた中ボスがいるフィールドであるが、ハイド達はまだそこまで行ったことはない。アルベルトのお陰で行き方はわかっているが、そこまでの道中では面倒なモンスターもおり、易々と通り抜けられる訳でもない。


「うひひひひひ! その道程度を余裕で通り抜けて貰わないと、私の相手にはならないわ。待っているわね」


「待ーー」


「じゃあね」


 ヨミは翼を羽ばたき、アルトの街から飛び去ったのだった。






「チッ、行くしかないな」


「テイトク! 行くつもりなら組まないか!?」


 ハイドがテイトクに声を掛けるが…………




「断る」


「な、何故!? パーティを組んだ方が……」


「あいつとは1対1でやりたいんでな」


 テイトクはさっさと話を打ち切り、広場の中心にある転移陣でアデルの街へ向かったのだった。


「俺達も行くか」


「ルダン達はーー」


「いらね。お前達と連係が出来るとは思えないからな」


「……そうか」


 『激裂鬼夜羅死苦』もテイトクの後を追うように転移陣へ乗った。


「……ハイドさん、どうしますか?」


「……クソッ、今の俺らでは一時間以内では『闇鬼の館』までは行けないだろう」


「アルベルトは30分で着くと言っていましたが……」


「あのアルベルトと比べたら駄目だ。常人はその3倍は掛かると思った方がいい」


 ハイドみたいに幾つかのパーティを引き連れるとなると、道中にいる面倒なモンスターと言われている奴らに邪魔をされて、思うようには進めない。だから、ハイドは……


「仕方がない。今回は諦めて、ギルドへの勧誘を進めて行こう」


「わかりました。仲間達にもそう伝えておきます」


 ハイドはヨミを追うのを諦めて、ギルドの勧誘を進めることにした。出来るだけイエローやレッドのプレイヤーを増やさせないように。




 新規のプレイヤーにとっては衝撃的な初日になったのは間違いないだろう。ヨミの演説により、芽吹いたプレイヤーはすぐ行動を起こすのだったーーーー





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