第195話 第二陣



 あれから、一週間は経った。


 今日は前から告知されていた、第二陣の解放日だ。あと10分で第一の街、アルトの街に新規のプレイヤー達が溢れる予定だが…………既に街は様々なプレイヤー達で溢れそうになっていた。




「どうだ? あいつらの姿は?」


「いえ、確認出来ていないようです」


 広場にはハイド達の姿もあり、レッドプレイヤー達を警戒している様子が見られた。


「あいつらの目的は間違いなく、勧誘だろう。今回はイベント扱いではないから街の中ではプレイヤー同士の戦いは出来ないが、邪魔をするぐらいは出来るだろう」


「はい、その為のアイテムも掻き集めて配分しています」


 プレイヤーを傷付けることは出来なくても、煙幕などのアイテムだったら邪魔をすることは出来る。ハイドの仲間達も何処に現れても大丈夫ように、配置されている。


「アルベルトはやはり来なかったか?」


「えぇ、勧誘などは興味がなくて来ませんでした。代わりにヒルダが来ているようです」


「相変わらず、興味がないことには動かないな」




 どうやら、アルベルトは来てないようね。ちらほらと知った顔は見えるわね。




 ここにいる有名な人はハイドだけではない。トーナメントで戦ったメイドですが、何か? や、激裂鬼夜羅死苦のリーダーであるルダンの姿が見える。他にヒーロー軍隊、『旅立つ青鳥』のメンバーもいた。




 ハイド達から標的にされている、当のヨミは何処にいるのか? そのヨミは…………




「うひ、探しているみたいだけど、アルティスの仮面の前には無駄なことね」


 ヨミはアルティスの仮面を使い、この街で1番高い建物の頂上に立っていた。最近、アルティスの仮面が効きにくい相手ばかりだったが、プレイヤー達の相手にはまだまだ通用している。『意識誘導・集』、『認識障害・惑』の2つが仕事をしており、ヨミが高い建物にいることは目を凝らせば地上から見える所をわざわざ注視させないようにして、更に景色に溶け込むように惑わすこともしている。


 アルティスの仮面にまだ色々な使い方があったとはね。暇している時に色々試して良かったわ。


 『意識誘導・集』は今まで、仮面に集中させることで、他の印象を弱くしていたが、今はヨミと言う人物の印象を薄くして、他の景色に目が移るようにしてある。そして、『認識障害・惑』に関しては戦う時に武器の距離感を惑わしていたが、今は景色と同化しているようにと相手の目を惑わしている。

 そのような使い方も出来るアルティスの仮面は流石、国宝クラスのアイテムと言えるだろう。


「そろそろね」


 新規のプレイヤーがログイン出来る時間になり、ボツボツと現れ始める。ある程度の数が現れたのを確認してから、仮面を外して、飛び立った。








「ッ! いた! 今まで何処にいた!?」


「気付きませんでした……でも、どうやって……?」


 ハイドからにしたら、突然に空からヨミが現れたとしかわからなかっただろう。ヨミは空中におり、アイテムを投げたくてもぎりぎり届かないと言える嫌らしい距離感を保って浮いていた。




「さぁ、この世界へようこそ! わかっている人もいるかもしれないけど、自己紹介をさせて貰うわ! 私はレッドプレイヤー達の巣窟、『銀月の使者』のリーダーであるヨミと言うわ!」




 ヨミはたった1人で皆の前に現れて、自己紹介をしたのだった。




「私達はね、仲間を求めているわ。でもね、弱いNPCを殺しただけで自慢するレッドプレイヤーはいらないわ。私達が求めるのは、貴方だけの持ち味。強さ、覚悟、夢…………なんでもいいの。それを見せて欲しいわ。私が面白いと思わせるような存在が欲しいわ!!」




 ヨミがやっていることは勧誘ですらない。ヨミが求める存在の在り方を叫んでいるだけ。




「理解した上で、私達の仲間になりたいならまずはイエローになってきなさい。そうすれば、道が開かれるでしょう! うひひひ、ゲームを楽しもう「そこまでよ」……あら? 久しぶりね」


 話を遮った存在がいた。その人はヨミの目線が並ぶように、高めの建物の屋根に立っており、長いツインテールが揺れていた。




 ーーーーその人はテイトクだった。





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