第194話 働きたくない日



 表の掲示板で有名になっているヨミはーーーー






「あー、働きたくないわ」


「ヨミちゃんは働いていないよね?」


 ギルドホームに備えられているソファーに寝転がるヨミがいる…………ニートらしい言葉を漏らしながらだ。そこにツッコミを入れたのはメリッサだ。

 今、ギルドホームにいるのは2人だけなので、プライベートな話をしても問題はない。

 何故、ヨミがそんな言葉を漏らしたかは…………


「現実じゃなくて、ゲームの方でね」


「あー、確かに最近は結構動いていたわね」


「だから、今は何もしたくない。ゴロゴロしながら太る心配もない甘味を食べ続けたい」


「別に苦言を言うつもりはないけど、ほどほどにね」


 王城を陥落させた今、ヨミは戦闘も陰謀も会議もする気分ではなかった。他の仲間には自由に行動してもいいと伝達しているので、この場にはギルドホームに用があったメリッサとだらけるヨミしかいないのだ。


「まさか、王城を陥落させるとはね」


「んー? 失敗すると思っていたの?」


「ギミックを見付けたといえ、数の差もあったし、どれくらい弱体化出来るかも不明だったからね」


 失敗の可能性を減らす為に色々と情報を集めていたが、メリッサが言ったように弱体化の効果がどれくらいかわからないままだった。そこは推測で進めるしかなかったが、ヨミだけはやれると判断した。


「第三の街であること、ルクディオスのレベルから考えて、王のレベルは100を超えないと考えたわ。まぁ、ピッタリだったのは驚いたけどね」


「……もし、弱体化しても想定以上の強さを持っていたらどうするつもりだったの?」


「もう終わったことを気にしなくてもいいのになー。その時は倒すのを諦めて、全員で自爆する予定だったわ」


 自爆をすれば、少々のペナルティを受けるだけで王を倒せなくても王城へは大ダメージを与えられただろう。それでも、ヨミの目的を達成は出来る。


「自爆って……聞いてないけど?」


「あぁ、説明していなかったわね。メリッサ、マミ、メルナは別行動だから言わなくても問題はなかったしね」


「……ん? ルイスは?」


「自爆をする為の薬品をカロナと一緒に作っていたから知っていたわ」


「……はぁっ、次からは全員に伝達してよね。もし、自爆しましたといきなりと伝えられたら困るわ」


「……ん、まぁ。そうね。次からは伝えておくわ」


 別行動をしていたといえ、突然に向こうから自爆して死戻りをしましたと言われても困惑するだけだろう。


「ねぇ、聞いてもいいかわからないけど、どうして種族が変わっているの?」


「あー、詳細は話せないようになっているけど、ある条件を達成するとパワーアップするシステムみたいなのがあったの。その時に、種族も堕天使になった訳」


 隠しシステムは運営の判断で、現在のストーリーの進行度ではまだ拡散するには時期尚早だと言うことで、仲間にも詳細を話せなくなっていた。


「色々とスキルも増えたけど、今後のお楽しみにね」


 ヨミは色々と新たなスキルを手に入れたが、仲間にすぐ教えることはせずに今後の戦闘で徐々に見せていくつもりだ。その方が面白いからだ。


「そう。切り札なら仲間にも隠すのは普通よね。機会があれば、見せてね」


「機会があればねーー」


 話が終わったと判断し、ソファーの側に置いていた甘味、ロールケーキに手を伸ばす。中に生クリームが入ったシンプルなロールケーキだが、甘さが控えめで美味しい。




 うん、美味しいわ。…………あ、まだ確認出来ていないスキルもあるけど今日は動きたくないな…………。





 ヨミが新たに手に入れたスキルは、5つ。『飛行』、『堕天の剣術』、『種族隠蔽』、『聖魔耐性』、『堕天王ルシファー』で、『堕天王ルシファー』に関しては様々な能力が詰め込まれている。

 スキルの効果を説明するなら…………



『飛行』


 翼を持つ種族にしか取得出来ない。5分間は自由に空中を飛べる。(クールタイム時間は3分間)



 5分間飛び続けられるが、その後は3分間の休憩が必要になり、使い処に気を付ける必要があるだろう。



『堕天の剣術LV1』


 堕天使用の剣術。主に相手を弱体化させる能力である。(『堕足呪剣』、『堕力呪剣』)



 2つ共、アルバドム戦で確認出来たので話すことはないだろう。



『種族隠蔽』


 自分の種族を今までになったことがある種族として騙すことが可能。(種族変化可能 【人間】、【魔人】)



 このスキルで、ヨミは人間として種族を隠蔽出来ているのだ。翼を隠せるし、邪魔にならないので、人間として過ごすつもりだ。



『聖魔耐性』


 光、闇に関する魔法やスキルに対する耐性を得る。光、闇によるダメージを減らし、状態異常にも掛かりにくくなる。



 これはシンプルに耐性系のスキルである。光と闇の耐性はそう簡単に得られないので、少々珍しいスキルである。



堕天王ルシファー


 支配者スキルの1つ。様々な能力があり、王に相応しい強さを持つ。(『堕天使の根源』、『能堕結界』、『黄泉写祀』、『???』)

※ペナルティについて。

・自らで発動を解除した場合は(使用した分数×2時間)がスキルの発動が不可になる。

・発動中にやられた場合はゲーム世界で1週間がスキルの発動が不可になり、ステータスが半分も減少する。



『堕天使の根源』


 『堕天王ルシファー』を発動したのと同時に発動される。自分のレベルを20加算し、ATKとINTとAGIを上昇させる。


『能堕結界』


 『堕天王ルシファー』を発動したのと同時に発動される。結界内にいる発動者以外の生物、無生物が効果を受けることになり、レベル20分のステータスが下がる。


『黄泉写祀』


 1日に3回まで使用可能。相手が使った放射系の魔法、スキルを真似ることが出来る。威力は自分自身のステータスを適用される。



 というように、『堕天王ルシファー』の能力は現時点では化け物レベルと言ってもいいだろう。アルバドム戦では見せられなかった能力があと1つ残っているが、今後で試すことは出来るだろう。

 ペナルティについては、やられた場合が重いのだが、やられなければ問題はない。




 よーし、ロールケーキを食い尽くすぞ!




 今日はソファーから動かずに甘味を楽しむのだったーーーー







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