第184話 推測



「ーーまさか、あいつを見付けて消すとは。どうやって、わかった?」


 戦闘中だったのだが、会話のパートに入ったからか身体が動けなくなる。膝を突くアリエッタへ攻撃しようとした、ジョーとカロナは向かう途中で止まる形になっていた。




 まったく、アリエッタを片付けるチャンスなのに。会話をしないと進まなそうね……




「私達はこのギミックを知っていたわ。数百年も続いていたことも」


「…………」


「それで、私は考えたのよ。数百年も封印されていて、貴方に仲間がいたなら黙って見ているだけなのかと」


 いや、それはあり得ない。同族に余程のクズか使えない雑魚だと思われていない限り、解放しようと何かしてくる筈だと。歴史書にはアルバドムのこと、聡明で強力な悪魔だったと書かれていたことから、解放をしない理由が見つからなかった。


「そして、仲間が解放を目指すならどうするかも推測してみたわ。現在の状況に照らし合わせてね」


 アデル王国の人間達……詳細には血の契約を結んでいる貴族達に聞いたのだ。封印されている悪魔のことを知っているかと。

 殆どの貴族は知らなかったが、最初に血の契約を結んだ貴族のおじさんだけは知っていたのだ。おそらく、第一王子の教育係だったこともあり、聞かされていたのだろう。


「封印のことを知っている貴族に聞いたけど、まだ悪魔は封印されていると信じていたみたい。封印されているのは身体だけで転生で別人になっているとは思わずに」


 それで、ヨミは大々的に事を起こさずにアルバドムを解放している可能性に思い当たった。封印されていた悪魔が解放されていたなら、周りはもっと騒いでいる筈だ。


「貴方は目立っている自覚はなかったようだけど、噂を聞くには周りの人間にしたら結構目立っていたわ。だから、私は疑う理由が出来て、調べることにしたの」


「……あはは、あの時はまだ加減がわからなかったからな」


「勿論、貴方だけではなく周りも調べたの。そしたら…………怪しい人が浮かび上がったわ。何せ、アルトの街にいる子爵家の貴族が月に1回は王城へ訪問していたわ。王族との繋がりがないのに」


「……もういい、原因はアレだとわかった」


 アレとは、ギミックの封じる際に受けた反動のことだ。悪魔の故郷である場所まで離れることが出来ないの他に、月に1回はそのギミックを封じた悪魔の魔力を込めなければならなかった。その制限で王城へ通う必要があり、ヨミ達にバレる結果となったのだ。




「そう? なら、貴方は絶体絶命な状況にあるけど? 貴方はまだ戦わないのかしら?」

「……ふっ」


 アルバドムは弱体化されたが、まだ余裕を持って王座へ座り直していた。


「ここまで追い詰めたのは素直に称賛をしてやろう。しかし…………」






 勝ち誇るにはまだ早いんじゃないかな?






「う、うぐ! あ、アル……バドム、様?」


 突然にアリエッタが苦しみ始め、困惑した眼でアルバドムを見るが…………当のアルバドムは冷たい眼で命令を下していた。


「今のお前では勝てないだろう。だから、凶暴化させて戦って貰う」


「きょ!? そ、それだけは……!」


「さぁ、命があるだけ暴れ尽くせ! 『凶暴化』!!」


 アリエッタはアルトの街にいた悪魔達と一緒に上司であったアルバドムを助けに来た者で、今まで近衛騎士に扮して仕えてきた。しかし…………


 弱体化で役立たずになったアリエッタを容赦なく捨て駒にしたアルバドム。





「うぎぃ、がぁぁぁあああーーーー!!」





 アリエッタは理性もない化け物になった。凶暴化すると、一時的にレベルとSTRとAGIが格段に上がって暴れ続ける。そして、最後にーーーー死ぬ。




悪魔従者のアリエッタ(凶暴化状態) レベル46 《残り03:00》




「おいおい、パワーアップかよ。レベルは前より下だが、パワーは高そうだ」


「やるしかないね♪ あの力は制限時間があるみたいよ」


「ちくしょう、少しは楽になると思ったのによ」


 アリエッタが凶暴化した瞬間に皆は動けるようになった。鑑定でみると、アリエッタは3分しか戦えないとわかる。だが、時間稼ぎに動こうとすれば、パワーで押しきられてしまう可能性がある。だから、3人は全力で叩き潰すことにしたのだったーーーー








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