第183話 ギミック



《ハイド視点》



 どういうことだよ、どうしたらこんなことになるんだ!?



 ハイドの前には怒り狂う複数の悪魔がいた。


「貴様ら! どうやって見つけたぁ!?」




 知らねーよ! 俺らも緊急時だとしか聞いてねえし!!




「話を聞く必要はない。さっさと殺れ」


 ハイド達の背後で命令を下すルファスの姿がある。ハイドは貴族だと聞いているが、初対面である相手に命令をされることにイラつくが、今は戦いに集中しなければならない。


「……仕方がありません。悪魔は見逃せませんし、やりましょう!」

「そうだな。それにしても、1番偉そうなのがレベル1とか意味がわからん」


 頼りになる仲間であるレムから喝を貰い、悪魔達に向き合う。悪魔達のレベルは平均20ぐらいはあるが、1番奥にいるのは何故か、レベル1なのだ。


「まぁいい、あいつはルイスの仲間に任せて、周りを片付けるぞ!」







《悪魔視点(レベル1)》



 何故だ! 何故何故何故何故何故ぇぇぇぇぇ!!


「周りは貴女を助けに行く余裕はないみたいよ?」

「き、貴様……、何故わかった?」


 この悪魔は、昔からアルバドムとの関わりがあり、アデル王国の王城にあるギミックを封じ、アルバドムが動けるようにした本人である。

 ギミックとは、歴史書に書いてあった通りにアルバドムを封じたとされている封印の結界のこと。


 その封印の結界で数百年も封じられていたが、この悪魔が十数年前に自らの身を掛けて封印のギミックを封じた。その反動でレベルが1に固定されたが、封印のギミックを封じ込めたお陰でアルバドムは転生と言う手段を取れるようになった。


 封印の結界は2つあり、身体と魂の自由を封じ込める効果を持つ。身体だけを解放しても、魂は封じられたままになり植物状態のアルバドムが出来上がるだけだっただろう。

 なので、魂の方を解放したのだ。転生に成功したアルバドムはすぐ解放してくれた悪魔を安全だと思える場所へ保護したのだ。アデル王国から離れた、アルトの街にある貴族街で潜伏出来るように、人間の貴族へ成り済ましていた。


 本当なら、悪魔族の故郷である最も安全な場所へ帰したかったが…………出来なかった。何故なら、ギミックを封じ込めた悪魔はギミックとの繋がりが出来て、離れすぎると効力が消え、封印の結界が万全へ戻ってしまう。更に、毎月に1度は魔力を込める必要があることの理由もあり、故郷へ戻せなかった。




「や、やめろ! 止めろぉぉぉぉぉ!!」




 もし、ギミックとの繋がりを持つ悪魔が死ねば、どうなるか?


「じゃあね。『ファイアランス』!」

「うぎゃぁぁぁぁぁ!!」


 メリッサは容赦もなく、レベル1の悪魔を燃やし尽くした。耐えることもなく、あっさりと死んだ瞬間にーーーー繋がりが消えた。














「ぐぅ!?」


 王座に座って戦いを観戦していたアルバドムが胸を押さえ、戦いの途中だったアリエッタにも何かが起きて、顔を歪めて片膝を地に着けていた。


「来たか!」


「あは♪ 鑑定をしてみてよ。凄いことになっているよ」


「あぁ……レベルが凄く下がっているな」


 ヨミもアリエッタに向けて鑑定してみると…………




悪魔従者のアリエッタ レベル28




 レベルが半分も下がっていた。これが、封印の結界が本来の力へ戻ったと言える。つまり、メリッサ達は成功したと言うことだ。


「アルバドムの方は…………流石にまた封印されると言うことにはならなかったけど、弱体化されているわ」


 弱体化されたお陰で、さっきまで通じなかった鑑定が通るようになった。




アルデュール(アルバドム) レベル50




 弱体化によってレベルが半分になったなら、元はレベル100だったと言うことにはなる。ヨミが考えていた通り、ギミックを発動しなければ、勝つ可能性はなかっただろう。




「うひ、うひひひ! これで勝つ可能性が出て来たわ!」




 ギミックに関わりがある悪魔を倒し、アルバドムとアリエッタの弱体化に成功した。

ここから反撃の狼煙をあげるヨミ達ーーーー






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