第178話 ネヴィルアvsヤムクル 前半
カロナとジョーが3分割にされている頃、ネヴィルアがいる玄関口では…………
「ハッ!」
「…………」
近衛騎士のヤムクルが繰り出した斬擊は死体になっているルクディオス殿下が大剣で受け止めている。
「……ルクディオス、使え」
ネヴィルアが命令を下すと、アイテムボックスから『閻雷』が取り出される。
「っ、甘いことをしてはいられないか……!」
ヤムクルはルクディオス殿下を必要以上に損傷させたくはなかった。しかし、国宝クラスである『閻雷』を使われることになれば、本気にならないとやられてしまうと判断した。
現在は、ネヴィルア側が優勢だった。血の契約書によって、無理矢理に戦わされている兵士達を殺すにはいかず、無力化させようと頑張っている騎士達に対して、兵士達はネヴィルアの命令で死ぬまで戦うことになっていた。だから、被害は騎士の方が多くなるのは当然だ。
兵士の多くが、他人の為に死ねる覚悟を決められない若造ばかりなのが|躊躇(ちゅうちょ)をさせる要因にもなっていた。
「嫌だ、戦いたくない!」
「痛ぇよ! 死にたくないよ!!」
「あぁ……止めてくれ……」
ほぼ全員が命乞いをしていて、騎士達も相手を殺すことを躊躇させている。若造ばかりなのも、それが狙いで連れてきているのだ。
「……流石、リーダーは凄い」
兵士を若造ばかりにしているのも、ヨミの案である。ネヴィルアの言葉にヤムクルは怒りが込み上がる。
「……貴女はその声を聞いて、なんとも思わないですか! 更に死体を操ることにも……!!」
ヤムクルが叫ぶも、ネヴィルアはきょとんと顔を傾けた。ネヴィルアから出た言葉はーーーー
「……? なんで?」
純粋なる疑問だった。
「なっ!?」
「人は死んだら、人形と変わらないよ? 兵士達は……運が悪かったかな。でも、死は終わりじゃないから大丈夫だと思うよ?」
ネヴィルアの感覚はヨミやマミに近い。ここはゲーム内であり、データでしかない。更にヨミからNPCは死んでも別のサイバーに移されているだけと聞いている。だから、その答えだったがーーーーヤムクルにしたら、人のことを人間だと思っていない。だから、好きなように扱っても気にしないと言うように聞こえただろう。
「わかった。貴女はここで討たなければならない存在のようだ! ルクディオス殿下……すいません!」
ヤムクルはこれ以上の被害を出さないように、本気でルクディオス殿下を片付けることにした。
「『魔黒装召喚』!」
「!? それはルクディオスの……」
なんと、ヤムクルがルクディオス殿下が使っていた『魔黒装召喚』を発動して、黒い鎧を包み始めたのだ。
「私が使えるのが不思議か? 言っておく。ルクディオス殿下に剣を教えたのは私なのだから!」
ヤムクルの正体は元騎士団長であり、アルデュール陛下に負けて引退はしたが、アルデュール陛下の近衛騎士の地位に収まっていた。そして、ルクディオス殿下に剣を教えた師匠でもあった。
「……その鎧があっても、『閻雷』は防御を貫くよ」
「…………」
ルクディオス殿下はヤムクルのように『魔黒装召喚』を使ってはいないが、レベル50である実力にて、素早い動きでヤムクルへ迫る。
「『閻雷』の能力など、理解している!」
ヤムクルは鎧の重さをなんでもないと言うように、滑らかな動きでルクディオス殿下の振り降ろしを受け流し…………
「『連武閃華』」
一瞬でルクディオス殿下の両手両足が斬り裂かれた。そして、そのままネヴィルアがいる場所へ斬擊が襲う。
「……盾になって」
「「「うわああぁ!?」」」
「な!?」
ネヴィルアは慌てることもなく、近くにいたネクロマンサーの人形と数人の兵士を重ねて盾にして防いだ。人形と兵士達は斬擊によって、斬り裂かれたがネヴィルアは無傷。
「あ、貴女は!」
「勿体ないけど……『逆転結界』。『復体人形召喚』」
結界が発動され、アイテムの強化や装備の強化を逆転させた。そして、アダルメンによって複数の人形が現れた。『逆転結界』によって、駒の兵士達を巻き込んで、ヤムクル達に負荷を掛けた。
「さぁ、蹂躙の始まりだよ……?」
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