第177話 悪魔であり人間でもある



 戦いを選んだヨミ達は先手を取ろうと動こうとした。しかし、身体が動かないと気付いた。


「まだ戦いが始まらない?」

「慌てるな。僕の話を聞いて貰おう。戦うのはそれからでもいいだろう」


 どうやら、ボス戦みたいに準備時間みたいのがあるようだ。王から話もあるみたいだが。


「まず、足りない部分を補足してあげようと思ってな。僕は悪魔族のアルバドムで間違いはない。しかし、アデル王国のアルデュールでもあるのさ」

「……アルデュールの身体を奪ったからでは?」


 口は動くようね。話は繋がるかしら?


「不正解だ。元からアルデュールであるという意味だ」




 話が繋がった。つまり、会話によって進行するイベントみたいね。


 そうだとわかれば、ヨミは気になったことを聞くことにした。


「つまり、産まれた時からアルバドムであり、アルデュールとも言える。もしかして、封印されている悪魔の身体は既に死んでいて……転生でもしたの?」


 ヨミの答えは正解だったようで、アルバドムはニコッと笑みを浮かべて頷く。


「転生!? そんな要素をゲームに盛り込むか」

「あは♪ 初めて聞いたわ」

「……つまり、今のあいつは人間か?」


 そう、アルバドムは封印されていた悪魔族だが、それは中身でしかない。悪魔族でありながらも、産まれた時から人間の人生に馴染み、ここまでの地位を築き上げたのだ。


「前世は余程、名のある悪魔だったのね♪ でも、実力はどうかな?」

「間違いなく、悪魔族だった時よりは格段に下がっている筈だ」


 転生したのなら、間違いなく悪魔族だった頃より弱くなっている。更に王になって、忙しい立場なら自分を鍛える期間は他より短くなっている筈。前世の知識があっても、時間は有限なのだ。


「確かに、実力は悪魔族だった頃には追い付いてはいない。しかし…………」




 アルバドムから覇気が溢れ出て、更にプレッシャーを受けるヨミ達。




「賊程度に劣る僕ではない」




 先程は王としての覇気だったが、今は強者としての覇気で押し潰されそうな空気が広がっていた。


「うひ、それでも私は勝つわ」

「……ふん、この程度のプレッシャーに負けるぐらいなら来ないか。まぁいい、最後の通告だ。降伏し、僕の下に付け。それで全てを許してやる」


 アルバドムは下に付けば、兄であるルクディオスを殺したことを許すと言っているのだ。アルバドムにとっては兄でも戦力の駒でしかなかったので、代わりの強者が手に入るならどうでも良かった。


 その最後の通告をヨミ達は…………




「「「「断る!」」」」




 全員が揃えて、断ると断言した。


「そうか……、なら死ね」


 アルバドムはつまらそうな物を見るような目になり、ずっと黙っていた近衛騎士の女性へ命令を下す。




「アリエッタ、本来の姿を見せてやれ。そして、全員を殺れ」




 命令を受け、腰に掲げていた騎士の剣を棄てて本来の姿に戻った。額から黒い角が伸び、背中から4本の腕が生えてきた。そして、服装が鎧からメイド服へ変わり、6本の手に鉄扇が現れる。


「悪魔従者であるアリエッタが行きます」




悪魔従者のアリエッタ レベル56




 鑑定で見れた情報は少ないが、騎士団長であったあのルクディオス殿下よりもレベルが高い。

 更に、王座に座り続けるアルバドムの場所に結界が現れた。




 ーーーーアルバドムへの攻撃は無効化されます。結界を解く為には悪魔従者のアリエッタを倒す必要があります。




 ヨミ達がやるべくことはアナウンスで教えてくれた。そして、ようやく身体が動けるようになった。


「あは♪ 楽しくなってきたね!」


「あいつは3人でやるから、リーダーは下がっていろ」


「その方がいいだろう。行くぞ!」


 ヨミを消耗させないように、3人でアリエッタを相手にするつもりだ。


「うひ、任せるわ!」


 カロナとジョーが前に出て、ジュンがサポートの動きへ移るが…………




「『練風装化』」




「「なっ!?」」




 アリエッタは1つの技を使った。




 それだけで…………




 カロナとジョーは首、胸、胴と3分割に斬り裂かれていたのだったーーーー






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