第174話 作戦開始
陽が射し込み始める時間。街では店はまだ開いておらず、広場にいる人はまばらで騒がしくなるまでは少々は時間がいるだろう。
そんな時間にーーーー
「な、ルクディオス殿下!? こんな時間に……? 後ろの方々もーー」
ここは王城前の門、門番はこんな時間に現れた人物に驚きを隠せないでいた。いつもなら、こんな時間に王城へ訪ねてくる人はあんまりいない。
ルクディオス殿下は第一王子だが、騎士団長であるので、この時間なら騎士団の修練場にいる筈なのだ。緊急時であれば話は変わるが、そんな情報は伝えられてはいない。更に、ルクディオス殿下の後ろにいる百人に達する兵士達、貴族が並んでいることにも困惑させている原因になっていた。
「下がるが良い! ルクディオス殿下は王城へ用が出来た。緊急のな!」
「き、緊急……?」
困惑していた門番へ声を上げたのは、貴族の1人であるおじさん。門番がよく確認すれば、貴族のおじさんの顔が青ざめていることに気付いただろう。しかし、門番にはルクディオス殿下の突然な訪問により、余裕がなかった。だから、緊急の内容を知らないまま、百人以上の兵士達が並んでいようが詳しい確認をせずに通してしまう。
「早くせよ!」
「わ、わかりました」
門番が門を開けるようにと通達させ、ルクディオス殿下達を王城内へ通してしまう。
「どういうつもりでしょうか。ルクディオス殿下?」
王城内へ入れたが、その玄関口で1人の人物に止められる。だが、ルクディオス殿下は無表情で何も答えない。その代わりに、貴族のおじさんが喋り始める。
「ヤムクル殿! そこを通して貰いたい! アルデュール陛下へ用がおありだ!」
「…………成る程、アルデュール陛下の言う通りになってしまいましたか」
ヤムクル殿と呼ばれた人物は手を上げると、玄関口からの死角に隠れていた騎士達が現れる。
「さて、紛れている賊よ。現れるといい!! アルデュール陛下は既に見透しである!!」
ヤムクルはアルデュール陛下の近衛騎士の1人であり、王城の守護を任せられている強者。ヤムクルの言葉通り、アルデュール陛下はルクディオス殿下達が何者かに操られていることに気付いていた。
「や、ヤムクル殿ぉぉぉ?」
「……血の契約書か。しかも、兵士達までも書かされているな……」
ヤムクルは手に魔導具を持って確かめており、ここにいる兵士達も血の契約書によって縛られていると気付いた。
「あー、バレちゃっているな。リーダー、どうする?」
兵士に扮していたジュンが前に出て、リーダーに伺っていた。その答えはーーーー
「うひっ、命が尽きるまで暴れ続けなさい。No.3、ここはまかせるわ。行くわよ!」
ローブを被り、貴族に紛れていたヨミが号令を出すと大人しく並んでいた兵士達がヤムクルや騎士達に向かって武器を抜いた。
「っ! 武器を抜いて抑えよ! 私はあの者を……」
「……貴方は私が相手になる」
ヤムクルは号令を出したヨミに向かおうとしたが、ネヴィルアがネクロマンサーの人形で死体のルクディオス殿下を操り、立ち塞がった。
その隙に、乱闘になった現場から抜け出したのは6つの人影。
「目標はリーダーをアルデュールの前へ送り届ける。いいな!」
「あはっ♪ 面白くなってきたよ♪」
「確かにな。少数で攻めるのは厳しいと言うとこだが、リーダーに勝算があるなら乗るしかねぇよな!」
「了解だ。命を大事にでいいよな?」
「うわ、始まっちゃったな。無理はしないでいこう」
「うひひひっ、頼んだわよ」
ジュン、カロナ、ジョー、ボウ、リー、ヨミはアルデュール陛下がいる王城の奥へ走り出して行くのだったーーーー
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