第166話 秘密の場所




 夜中、街が静まる時間になり…………




 少し前に見つけた古い下水道の中を歩いていく1つの影があった。その影は下水道を進んでいくと、途中で1つの扉を見つけて中へ入っていく。




「お、来たな」

「時間ピッタリだね♪」

「……ふん、血の契約書で時間さえも破れもせんよ」


 中に入ると、本棚の幻影に包まれた部屋があり、2人の男女が立っていた。その2人とは、ジョーとカロナである。


 下水道へ入った1つの影は前に脅して血の契約書を結ばせた貴族のおじさんであり、今後の計画で擦り合わせをする為に呼んだのだ。


「そうだったな。本当に血の契約書は便利だな」

「うふふ♪ 見つけたル……No.8に感謝ね♪」


 つい、名前を言い掛けるも、すぐ訂正してコードナンバーを発する。ちなみに、ジョーがNo.4、カロナはNo.5となっている。


「おいおい、気を付けろよ?」

「ゴメンゴメン♪ それよりも、計画を進めようよ。決行日なんだけどーーーーその前に、隠れているネズミ達。出て来たら??」


 決めておいた決行日を伝えようとする前に、カロナが見付けた気配に向けて、声を掛けた。




「……わかっていたのか」




「あ、あぁ! ルクディオス殿下!?」


 貴族のおじさんが上げた通り、扉の近くから現れたのはルクディオス殿下と4人の近衛騎士達だった。透明になれる布を被って、貴族のおじさんを尾行していたようだが、カロナに見破られたので姿を現すことにした。


「へぇ、便利な道具があったんだな」

「私のスキルからは隠しきれなかったわね♪」


 カロナは『熱感知』を持っているので、透明になれる布を被っただけで熱を漏らしたままの敵を見逃すことはなかった。


「る、ルクーー「黙れ」ッ!?」

「おじさんは端っこで黙って座っていてね♪」


 ジョーとカロナの命令、血の契約書によって無理矢理に従われてトボトボと壁まで歩いていく。


「……血の契約書で縛られているのか。人質を取られてしまったか」


 血の契約書は両方の同意がなければ、効果は発揮しないので、人質を取られたか脅されていると判断した。


「さぁ♪ アンタがルクディオス殿下と呼ばれている第一王子でいいよね?」

「そうだ。お前らを捕まえて、何をしようとしているか、話して貰うぞ」

「私達にお任せを」


 ルクディオス殿下に着いてきた近衛騎士4人が前に出て、剣を抜いた。


「あはははっ、こいつどいつもレベル40もありやがるな。ルクディオス殿下の奴はレベル50と来たもんな」

「じゃ、連絡するから任せるね♪」


 近衛騎士4人に対して、ジョー1人だけが前に出てくる。カロナはある人に連絡をし始めた。


「さぁ、俺が相手になってやろう」

「……レベル35か。その程度で俺達の相手にしようとは、ただの馬鹿か?」

「馬鹿なのかは、戦って確かめてみやがれや!」


 ジョーは双剣を抜き、突撃する。それに対して、ルクディオス殿下は手を出さずに下がり、4人の近衛騎士が動く。


「『聖域結界』を発動せよ」

「「「了解!」」」


 近衛騎士のリーダーっぽい人が指示を出すと、それぞれの近衛騎士を中心にした光る陣が現れる。その範囲は半径2メートルもあり、その範囲へジョーが踏み込むと…………


「おおっ?」

「気付いて、すぐ下がるか。お前ら、油断はするな」

「これが、聖騎士の結界だったな。聞いた通りだ」


 力が抜かれているのを体感し、すぐ範囲から下がって抜け出したジョー。この前の会議で近衛騎士が聖騎士であり、特殊な結界を使えると聞いていたので、驚きは小さかった。


 『聖域結界』の効果はジョーみたいなレッドネーム、犯罪者だけに発揮する。地面に光る陣に踏み込むと、対象者のステータスを30%減少させることが出来、近衛騎士達の犯罪者に対する最強の手札である。


「攻めよ!」

「「「はっ!」」」

「ひひひっ、このままでは全力で戦えねぇな…………だがな! 対策をしてないと思ったかよ!? 『赤血結界』ぃぃぃ!!」




「「「「なっ!?」」」」




 結界には結界をだ。上位の騎士が使える『聖域結界』の対策は既にあの会議から立てていた。

 ジョーは『赤血結界』を発動し、ドロドロと赤黒く光る陣を広げた。『聖域結界』は対象者を弱体化させるが、『赤血結界』は他者の結界を侵し、同じ効力を得ることが出来る。つまり…………


「うはははっ! 同じ弱体化した上で戦おうぜ!?」

「き、貴様!?」


 赤黒く光る陣を踏んだ近衛騎士達もステータスが30%も減少され、戸惑う。その隙を逃さずに双剣を振るう。狙われた近衛騎士は剣で防御をするが、力で押し負けて吹き飛ばされる。


「チッ! 結界の意味がないな! 解除せよ!」


 近衛騎士達はリーダーの指示に従い、結界は解除された。発動中は魔力が減っていくので、効力が薄いと判断したのだ。


「俺も解除だ。さぁ、無駄な小細工はせずに楽しもうぜ!」

「No.4! リーダーからプランBに移行、こちらにNo.2とNo.3を向かわせるって。あと、No.3から死体を増やしておいてって♪」

「あいつらも来るのな!」

「……俺も出る」

「ルクディオス殿下!?」


 カロナが連絡を終え、新たな指示を受け取っていた。その言葉を聞いていたルクディオス殿下は嫌な予感を感じ取り、近衛騎士達だけに任せずに自分も出た方がいいと判断した。


「なら、貴方の相手は私がするね♪」

「ふん、援軍が来る前に終わらせてやろう」


 ルクディオス殿下の相手はカロナがする。カロナは不気味なノコギリを取り出し、ルクディオス殿下は銀嶺な大剣を抜いた。




 秘密の場所では、騎士団長と近衛騎士達がジョーとカロナがぶつかり合うことになるのだったーーーー






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