第159話 共闘



 ヨミはアルベルトがやられたと言う中ボスへ挑みに行った。なのだが…………




「あら、貴方もいたのね。元4位さん?」

「ッ、貴様は!?」


 ボス前に設置されているセーフティエリアには顔見知りがいた。予選でヨミに負けて、本戦から漏れた元4位のハイドが。…………側にルイスがいるのが見えるけど、声を掛けることはしない。


「まさか、俺らの邪魔をしにきたのか!? 皆、構えろ!!」

「ばっかね、私がわざわざ雑魚を片付ける為に此処へ来る訳がないでしょ?」


 ハイドは自分らをPKしに来たと思ったようだが、それは勘違いである。ヨミが言った理由もそうだが、ハイドを狙う理由も全くないのだ。


「それに、此処はセーフティエリアよ? 武器を構えてもやれることはないことを、貴方は理解出来ていない初心者なのかしら?」

「貴様ァァぁ」


「む? なんの騒ぎだ…………またか」


 ヨミの後ろから声が聞こえ、振り向くと……アルベルトがいた。ヨミとハイドの姿を捉えて、呆れたように目を細めていた。


「イベントみたいに非戦闘の場でいがみ合うなよ」

「いがみ合う? 違うわ、私は絡まれているだけよ」

「貴様! イベントであれだけやって、よく被害者面が出来るな!?」

「イベント? 予選のこと? それとも、街でのことかしら?」

「全てだッ!」


 ハイドは予選で負けたのはともかく、街に被害を出させたことにより怒りを震わせていた。


「……うひ、だから?」

「……は?」

「だから何? 私がやりたいようにやっただけよ。ゲームなんだから、楽しまないとね!」

「……狂っていやがるッ! お前は絶対に許せる存在ではない!」

「うひひひっ、何も出来ない負け犬が吠えているようにしか聞こえないわね!」


 もうハイドには用はないので、ハイドとそのパーティ仲間を無視して中ボスの部屋に入ろうとする。




 入ろうとしたが、そこで声で呼び止められる。




「ちょっと待った。少しいいか?」


 アルベルトに呼び止められた。


「……? 何か話したいことがあるのかしら?」

「まず、謝罪をさせてくれ。あの時はすまなかった」


 周りに人がいようが、アルベルトは頭を下げて謝っていた。その様子が場に戸惑う雰囲気を広げる。


「あ、アルベルト!? 何を……」

「ハイド、黙ってくれ。こっちの話だ」


 ハイドが話に割ってきたが、アルベルトはハイドへ目線を寄越すこともなく、拒絶した。


「あの時って、試合前のことね?」

「あぁ、イベントが終わった後にGMに叱られたよ。俺の勝手なエゴでアンタに不利益を被らせたからな」

「ふぅん……別に私は気にしていないけどね。まぁ、謝罪は受け取るわ」

「ありがたい。それから……本題なんだが、この中ボスと戦うなら共闘をしないか?」


 ヨミはアルベルトに共闘を持ち掛けられたことに驚いていた。




 なんか、あの戦いから変わった? つまらなそうな目をしなくなったような……




 前のアルベルトを良く知っている訳でもないが、他人に共闘を持ちかけるような性格には見えなかった。だから、共闘と言われて、すぐに返事が出来なかった。


「……駄目か?」

「いえ、驚いただけよ。リベンジで此処に来たんじゃないの?」

「そのつもりだったが、やはり1人では厳しい相手だと理解はしている。もう負けたくはないから、頼りになりそうな相手に……共闘を提案をしたい」

「ふぅん…………まぁ、別にソロで拘っている訳でもないし、構わないわ」

「ありがたい。宜しくな」


 こういう展開になるとは思ってはいなかったが、最強の人類であるアルベルトと組むのも面白そうなので、その提案を受けることにした。




 2人が会話している間、無視されていたハイドは呆気に取られたままだったーーーー







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