第157話 対話
ヨミは両手を上げて降参するイエローの前へ向かい、仮面を外す。
「話があるんだったよね。何?」
「話というより、お願いと…………謝罪かな?」
「うん?」
想像もしてなかった内容に首を傾げるヨミ。お願いはまぁ、あり得るかもしれないけど……謝罪? 謝れるようなことをされたのかと記憶を探ろうとしたが…………やはり、何も思い付きはしなかった。
「お願いは、多分バカが何度も襲いかかると思うから無視せずに戦ってあげてくれるかな?」
「バカ?」
「レッドのことよ」
「リーダーをバカだと思っているんだね……」
「あ、言葉が足りなかったわ。正義バカね。そして、ゴメンね。面倒な人に絡まれたと思っているかもしれないけど、そんなに悪い奴じゃないから。ただのバカで」
「また抜けているわよ。まぁ、どっちでもいいけど……」
つまり、イエローのお願いと謝罪とは、レッドがこれからもヨミを襲うから相手をしてね、それから迷惑を掛けるからゴメンねってことだろう。
「あ、勿論。タダじゃないわ。他の人は挑む前にギルドでアイテムやお金を預けるからヨミに渡らないけど……私だけはちゃんと持っているから」
「あー、もしかして貴重な物も持っていたりする?」
「えぇ、こうみてもβ版で遊んでいたから少しは融通出来るよ? 今回はお金と……これね」
イエローが見せてくれたのは1本の古びた鍵。ヨミはそれを前に見たことがある物だった。
「あ、その鍵……」
「あら、知っているのね?」
「えぇ、私も持っているわ。奪った物だけど」
その鍵は、『七つの不思議な鍵』と呼ばれており、その鍵を七つ集めて統合することでレアなアイテムを手に入れることが出来るのだ。今、ヨミが持っている鍵は『七つの不思議な鍵Ⅲ』でイエローのは『七つの不思議な鍵Ⅱ』なので、『七つの不思議な鍵Ⅴ』まで統合出来る。
「譲渡は不可能だから……」
「えぇ、わかっているわ。話はもうないからやっちゃって」
「ふぅん、私のことは聞かないのね」
「私が言っただけで、意見を変えるとは思ってないわ。それに、ここにいる世界はゲームなのよ。だから、楽しまなくちゃね♪」
楽しむ為なら仕方がないと思っているようで、ヨミのやり方に苦言を漏らすことはなかった。
「そう、一応お礼は言っておくわ。じゃあね」
痛みを感じさせない技、『魚群アロー』でイエローのHPを0にするのだった。そして、イエローの所有金と所有物がヨミへ移り、『七つの不思議な鍵』のレベルが上がった。
変な奴だけど、ヒーローの中でも好感は持てるわね。
手に入れた鍵を手に持ちながらそう思うヨミであったーーーー
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