第155話 ヒーローは忍者だった



「話は終わりだ! こちらから行かせて貰う!」


 静かになった空気をぶち壊すようにレッドが動き出した。武器を取り出す動作をし、現れた得物は…………


「短刀にクナイ?」


 ヒーローらしくない武器に眉を潜めている間、レッド以外のヒーローが森へ身を隠した。そして、ヨミの上空から声が上がった。


「水遁、水砲弾!」

「忍術!?」


 上空にいたのはブルーで、幾つかの水弾が放たれているとこだった。




 ヒーローが現れたと思えば、使ってくる技が忍術とか予想外よ!?




 先に攻撃してきたのが水遁だったので、日傘を突き出した。日傘は火と水を弾く性質を持っているので、水弾はヨミへ当たることもなく散らされるだけだった。


「……!?」

「また身を隠すのね……」

「火遁、鳳仙火!」

「レッドは火なのね……ッ、周りを!?」


 身を晒したままのレッドは火遁でヨミへ直接に狙うこともなく、ヨミの周りを攻撃して砂煙を上げていた。それで終わらず、何処からか声が上がり……数本の木の根っこが襲い掛かってきた。


「今度は木……木遁! 『夜天月斬』!」


 隠し刃を抜き、襲い掛かってきた木の根っこを黒い刃で刈り尽くしていく。そのまま、手を突き出す。


「『乱月光波』!」


 手の先にはレッドがいる。砂煙を散らすと、レッドの姿は光の放流に呑み込まれるのが見えた。


 まず、1人ーーーーいや!


 ヨミは勘で頭を伏せた。その上を刃が通り過ぎた。


「チッ!」

「忍者なら分身を使うわよね!」


 分身を囮にしてレッドがヨミの後ろに回り込んでいた。隠し刃で空振りした腕を切り落とそうとしたが……その前にレッドが煙玉を落としていた為、視界が塞がれてしまう。


「真正面から戦うつもりはない!」

「雷遁、電磁光線」


 他の忍術と違い、早い攻撃が来ているのを感じ取り、隠し刃の攻撃をキャンセルして転がった。ヨミがいた場所を狙っていた光線をかわすが……また次がすぐに来る。


「鬱陶しいわね! ヒーローらしくない戦いよねぇ!?」

「うっさいわぃ!」

「そこね! 『夜天月斬』!」

「うおっ!? 危な!」


 挑発でレッドの声を引き出せたのは良いが、黒い刃は避けられたようだ。まだ煙が充実している場所でヨミは休みもなく攻撃されて、面倒臭くなってきていた。


 今回は隠し刃の試し斬りで来たけど、当たらないし視界を遮られるし……


 いつまでも煙が晴れないのは、誰かが定期的に煙玉を使われているからだろう。ヒーローらしくはない戦いだが、地の利や連携でヨミを自由に戦えないようにしていた。




 ヨミは鬱陶しいと思いながらも、ヒーロー達の実力を認めた。ここからは試し斬りなどと舐めた戦いは止め、解放した。




「ドルマ! キッカ! ピクト!」




 ヨミの戦いはこれからだ。身を隠し続けるヒーロー達を叩き潰す為に、テイムモンスター達を召喚するのだったーーーー







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