第154話 ヒーロー軍隊



 ヨミは日傘を差して、森の中を歩いていた。日傘に隠された刃での試し斬りをする為に。


「んー、モンスターが見つからないわね?」


 試し斬りをしたいのに、相手が見つからなかった。プレイヤーでも良かったが、殆どのプレイヤーはダンジョンに潜っているからモンスターの方が見つけやすいと思っていたが…………


 もしかして、何か起きている?


 例えば、ワールドクエストやイベント等が…………でも、そんなアナウンスは流れていない。このまま、モンスターの気配がしない森の中をさ迷っても仕方がないので、確実にプレイヤー達がいるダンジョンへ向かおうと考えたところにーーーー




 あら、メール…………イエローから?




 メールの相手はヒーロー軍隊のイエローからだった。フレンド交換をしたが、関わりはあまり無い相手からメールが来たことに驚きながらも、中身を読む。


 はい? 『今から戦いを挑むことになるわ。せめて、最初の挨拶だけは攻撃をしないでくれるとありがたいです。あと、戦いが終わったら話があります』…………ッ!?


 突如に5つの気配がヨミの前に現れ、5人の人物がポーズを決めながら、名乗り上げた。



「『勇気』を司り、皆を率いるリーダーのレッド!!」


「『正義』を司り、正しさを証明するブルー!」


「『希望』を司り、皆に笑顔を与えるイエロー!」


「『仲間』を司り、皆を守るグリーン!」


「『愛』を司り、皆に癒しを与えるピンク!」




「「「「「五人が集まって」」」」」




「「「「「悪を即断し」」」」」




「「「「「我らは冒険者だけで終わらず」」」」」




「「「「「ヒーローとして、平和を掴む」」」」」」




「「「「「『赤青黄緑桃ヒーロー見参!!』」」」」」





 …………はぁっ、面倒なのに捕まっちゃったなぁ。




 ヨミの前に現れたのは、『赤青黄緑桃ヒーロー見参!!』のパーティであるプレイヤー達。このノリが苦手であるヨミは変なのにロックオンされたなとため息を吐いていた。


「悪の女幹部に相応しき少女よ! 悪は断罪させて貰う!」

「わぁっ! 前より可愛くなっているぅぅぅぅぅーーーーぐへっ!?」

「こらこら、抱きつこうとしないでよ? 空気を読みなさい」

「イエローの言うとおりだ。我らはこれから戦うんだぞ」

「やれやれ、ピンクはいつも通りだな……」


 レッドが宣言しているのに、ピンクが空気を読まずにヨミへ抱きつこうとするところにイエローが首元を掴んで止めていた。ブルーとグリーンはそんなピンクに呆れていた。

 ヨミも宣言されたのなら、応えてやるのも悪の形だろうけど…………




「悪の女幹部どころか、ボスなんだけど?」

「「「「「…………そうだった」」」」」




 ツッコミを入れてしまい、更に空気が混沌になってしまうのだったーーーー







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る