第152話 隠された情報




『……ヨミ、やった?』




「いえ、私はやっていないわね」


 予測していた通り、あの事件のことでハーミンから連絡が来た。通話でヨミに疑いを掛けてくるが、ヨミの返答は…………


「私も事件のことを聞いて、驚いたし。もし、私だったとしてもやる意味がないじゃない。司教は私に好意的だったじゃない」

『……それはそうだけど、容疑者が他にいない』

「そうかしら? 司教という地位なら他の宗教から狙われても可笑しくはないし。ルルイエ教とかもあるし」

『……ルルイエ教?』


 そのまま、罪を被せることは出来るが、勘が良いハーミンを騙しきれるとは思えないので可能性はあるとだけ伝えておく。


「そういえば、歴史書のことが聞きたいなら私から教えてあげるけど?」

『……わかった。疑いを掛けてゴメン』

「構わないわ。私は疑われるような立場にいるからね」


 なんとなくだけど、謝ってはいるけど疑いが晴れてないってとこかな。まぁ、教えると言っても全ては話さないけどね。


 もし、歴史書のことを教えて欲しいと言われたら、嘘は言わない。ただ、全てを話さないだけで…………






「よう、通話は終わったみたいだな」

「中断させて悪かったわね」


 ここはギルドの会議室。この場にはマミとメルナ以外が集まっていた。


「2人共、お疲れだったわね」

「構わねえよ、ギルド長の命令だしな」

「問題はないよ♪」


 司教に手を下して教会を燃やしたのはヨミではなく、ジュンとカロナの2人だ。レッドであるジュンとカロナが街の中に入るのは普通なら大変だが……ヨミは抜け道を見つけていた。

 その抜け道を使い、2人は人が少ない時間である早朝に教会を襲った訳だ。


「はぁ~、イルミナ教の司教を殺しちゃったらヨミは大丈夫なの? 一応、女神から好かれていて、信者ということになっているでしょ」

「あれ、話したことあったっけ?」


 メリッサには信者になったと言ったが、好かれて『女神イルミナの寵愛』を貰ったと言ってない。


「……あ、ゴメン。話しちゃった」

「まぁ、いつか言おうと思っていたし…………というか、話すの忘れていたしね」

「ヨミちゃん!?」

「まぁ、知っても知らなくても問題があるようなことじゃなかったからね。それよりも、質問なんだけど……何も変化はなかったわ」


 女神からアクションが来ると思っていたが、何もなかった。連絡が出来る司教を仲間が殺したといえ、お願いしたのはヨミだ。それがわからないとは思えないし、ヨミに何か文句が来ると思っていた。最悪、称号の取り上げも考えられたが……それに反して何もアクションが来なかった。


「無いってことは、それぐらいは問題なかったと考えた方がいいわ」

「寛容過ぎるでしょ、女神イルミナは……」

「うーん、広い心で許したとは違うかな。あの女神は多分、性格が子供で……善悪に差を付けてはいない。私に称号をくれるぐらいだし」

「善悪に差を付けない?」

「そうね、女神イルミナはこの世界を通じて、何かを学んでいると思うわ。だから、面白そうな存在がいたら気にかけるし、その存在が悪だとしても自分を楽しませ、何かを知ることが出来るなら信者が殺されても問題はない……ところじゃない? まぁ、関わって来ないなら気にしなくてもいいじゃない?」

「…………はぁ~、難しいわね。見えない存在、神のことを気にしても仕方がないわね」


 あの女神のことを考えても無駄だと理解したメリッサはため息を吐いて机にペタッと伏せた。


「また話が逸れたから戻すわ。忙しいマミとメルナにはあとで連絡するとして……歴史書には面白そうな情報が書かれていたわ」

「面白そうな情報ね、何があった?」


 マミとメルナはアドル王国でNPCとの人脈を築くために忙しく働いている。だから、ここに来ていない。そして、歴史書に書かれた面白そうな情報とは?





「実はね、アドル王国が建国された理由がね……あるモンスターが王国の地下に封印されていて、その監視の為だって」

「「「はぁ!?」」」

「うひっ、面白そうな情報だったよね! 王国を乗っ取る為に情報を手に入れようとしたけど、とんでもない情報が出ちゃった♪」


 ヨミはワクワクしていた。この情報を使い、王国を陥落させられるか思考するのだったーーーー




ーーあとがき


SF週間ランキングにて、8位へなっていたことに驚きました。

皆様、こんなに読んで頂いていることに嬉しく思っています!

ありがとうございます。今後も応援を宜しくお願いします!



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