第151話 歴史書
クエストをクリアしたヨミとハーミンは気絶している司書を連れて、教会へ戻っていた。
「あ、お二方…………何かあったのでしょうか?」
「大丈夫よ、気絶しているだけだから。寝かせられる場所はないかしら?」
「はい。シスター、変わってあげなさい」
「畏まりました」
ハーミンがおんぶっていた司書は側にいたシスターに渡し、横になれる場所へ連れていった。
「……では、何があったかお聞かせ願っても?」
「そうね。図書館で下水道があることに気付いたことから…………」
「成る程。そんな場所が……」
「……これが、あの場所に残された1冊の本」
地下水のあの部屋を出ようとすると、その部屋は一瞬で消え去って古ぼけた1冊の本が落ちてきたのだ。中身を見たが、そこそこのレベルである『解読』を持つハーミンでは読めないぐらいに複雑な文字が並んでいた。これもクエストに関わる本かもしれないかと、司教へ見て貰うことに決めていた。
「これは……歴史書ですね」
「え、ここの?」
「はい、そのように書かれています。しかし、何故神聖文字で……?」
「……神聖文字って? 司教が読めたことにも理由が?」
「そうですね。この文字は司教クラスから上の役職に着いていなければ、学ぶことも知ることも出来ないのです」
この歴史書がわざわざ神聖文字で書かれていることから、一般には知られたくない歴史があると言っているようなモノだ。何が書かれているか、読んでもらえないかと頼んでみると……
「構いませんが、長くなりますよ?」
「……私も聞きたいけど、クエストが終わったらパーティに戻ってほしいと連絡があったから、後で聞かせてもらっていい?」
「大丈夫です。では、ヨミ様はすぐに聞きますか?」
「宜しくお願いするわ」
ここでハーミンとお別れだ。向こう、ダンジョンで何かがあってハーミンの力が必要で呼び戻したのだろう。
「……また」
短い言葉を残し、ハーミンは教会を出ていった。残ったヨミは司教から歴史書の内容を聞くことにーーーー
話を聞いて、30分ぐらい経った。
「へぇ、そんな歴史があったんだ。見た目はボロボロなのに、20年前に書かれた歴史書だったのね」
「そうですね、この本が保存された場所が悪かったかもしれません」
あんな臭い下水道の中にあったなら、ボロボロになったとしても仕方がないだろう。それよりも、歴史を聞いてヨミは面白い情報があったことに笑みを浮かべる。この情報は出来れば、ハーミン達には知られたくはない。
「……お願いがあるけど、この情報は広めたくはないよね。ハーミン、さっきの人にも知られたくないわ」
「……難しいですね。この情報はクエストのご褒美に含まれていますので」
「そう……それは仕方がないわね」
クエストの報酬となれば、取り消しにするのは不可能だ。そう、その本と依頼者である司教がいることにはーーーー
翌日、教会が賊に押し入られて、司教が殺害されてしまう。更に火を蒔かれ、火事になってしまう。消火し終えた時は、既に跡形も無くなっていたのだった。保管していた歴史書も燃えて消え去っていたーーーー
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