第149話 召喚の楔(くさび)
《ハーミン視点》
……これを使うことになるのは予想外だけど、仕方がない。
「……死者騎士、出番だよ。召喚の楔『虚ろのナイフ』」
ボロボロのナイフを掲げると、ハーミンの前に黒い霧が包まれて……中から首無しの騎士が現れた。首の中から青い人魂みたいのが漏れでて、両手には黒い大剣とナイフが握られている。
『…………』
召喚の楔、特殊なアイテムでテイムのスキルがなくてもモンスターと契約して、最大MPの半分を払うことでそのモンスターの技を1つだけ使える。
「……死者騎士、黒い本達を片付けて。『|虚ろの波動(ホロウ・バースト)』」
ハーミンが命令を下すと、死者騎士と呼ばれる存在を中心に青い光が発光し、その範囲内にいた黒い本とハウンドウルフ達は何かに侵されたように苦しみ始めた。
「……ぐはぁ、気持ち悪い。慣れないなぁ」
召喚の楔で出てくるモンスターはどれも強力な技を使えるが…………
その範囲内にいたハーミンまでも青い光を浴びたことにより、《脱力》と《嘔吐》の状態異常を受けていた。
何故、使用者であるハーミンまでダメージを受けているかは、召喚の楔と呼ばれるアイテムのデメリットであり、使った瞬間に1歩も移動が出来なくなる。今のように範囲の攻撃を使うモンスターだと、使用者までも巻き込んでしまうことがある。レアなアイテムであるが、使い所を間違えると反対にやられてしまう。
……強力で便利だけど、仲間がいない時は使いたくないなぁ。
自分も状態異常を喰らって、床に座り込み脱力して動けなくなったハーミン。しかし、これで主力以外は全てを無力化することが出来た。後はヨミに任せることにーーーー
えっ、自分までも喰らってない? あんなの自爆戦法じゃない!?
その自爆戦法を選択したハーミンに舌を巻くが、ハーミンは確実に雑魚モンスターを無力化してくれた。なら、こっちもやるべくはやらないと駄目だなと思うのだった。
「な、なんだと! 次を……ぐはっ!?」
「やらせる訳がないでしょ!」
次のモンスターを出される前に魔女を蹴り飛ばし、魔書から距離を取らせる。
本だけになったら、何も出来なくなるかしら?
このまま、魔書にHPがなくなるまで攻撃をし続ければ終わるけど、レベル30もあるクエストのモンスターがこのままで終わるとは思えなかった。
その考えは正しかったようでーーーー
狂宴の魔書が動き出した。魔書の能力は召喚だけで終わらず、表紙に目が浮かび上がった。その目を見た瞬間に、周りの景色が変わった。
「っ!?」
いつの間にゴブリン達に囲まれている!? 魔書どころか、魔女とハーミンもいない?
周りの景色が洞窟みたいな場所に変わっており、複数のゴブリンに囲まれた状況に切り替わっていた。更に、目の前にいた魔書が消えていて、魔女やハーミンまでもいなくなっていた。
「転移された? …………まさか!?」
咄嗟に自分のステータスを見ると、そこには《幻覚》の状態異常が記載されていた。
「成る程、成る程ね…………」
これだけ本物みたいな雰囲気がある幻覚だと、抜け出すのは容易ではない。しかし、魔書は気付いていない。
ヨミは魔物使いでもあることに。
「ドルマ! やっちゃいなさい!!」
「グガァァァァァ!?」
魔女の声が響き渡ったのと同時に、景色が元に戻った。再び、ステータスを確認すると《幻覚》が消えていた。つまり、今に見えている景色こそが本物である。そこにはーーーー
ドルマによって貫かれた魔書の姿があった。
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