第148話 狂宴の魔書



 狂宴の魔書 レベル30


 狂宴の魔女 レベル15



 鑑定で正体を確認すると、2つの反応があった。レベルの差に大きな隔たりがあったが、狂宴の魔女は戦闘経験が無い司書を乗っ取っているから仕方がないと思うが…………




「き、キヒヒヒヒヒ!! ついに身体を手に入れたわ!」




「……動けるようになった」

「敵が2つになっているけど、クエストの更新には救助と出ているんだよね」


 クエストの更新で内容が変わっていて、狂宴の魔書を倒して司書を救助せよと出ている。つまり、司書だった存在である狂宴の魔女を倒すのは不味いと考えられる。


「狂宴の魔書はあの黒い本だけど、似たようなのが飛んでいるし……紛れると面倒だわ」

「……でも、魔女を倒しては駄目だよ」


 おそらくだけど、魔女の方を倒せばこの戦いは終わるだろう。クエストは失敗になってしまうが。


「む、誰だ? 気分が良いとこに邪魔をするゴミは消えろ!!」

「……来る!」


 戦いが始まった合図と言うように、魔女の周りを飛んでいた黒い本達が襲い掛かってきた。


「『夜天月斬』!」

「……『ツインショット』!」


 ヨミとハーミンは黒い刃と矢を放ち、撃ち落とそうとするが、数十はいる本は軽やかに飛んでいて大部分は避けられてしまう。


「チッ、ハーミン後ろに! 『乱月光波』!」


 咄嗟にハーミンを下がらせて、範囲魔法の『乱月光波』で一気に片付けようとするが、魔女が動いた。


「魔法を使うなら、魔法で消えろ! 『ファイアランス』!!」

「なっ!?」


 魔女が魔法を使うと、襲い掛かってくる本から炎の槍が現れて放ってきた。『乱月光波』と複数の『ファイアランス』が衝突することになり、その衝撃でヨミとハーミンまでダメージを受けてしまう。


「……『シャワーアロー』!」


 砂煙が漂う中で、追撃を警戒したハーミンは広範囲のアーツを選択した。大量に降り注ぐ矢の雨は砂煙の中から現れた黒い本達にダメージを与えて怯ませたが、広範囲なだけに威力はそんなに高くはないから、倒すまではいけなかった。


「ほう、ゴミにしては結構抵抗してくるじゃないか。いでよ、狩猟の番犬どもよ! 『サモン・ハウンドウルフ』!」


 魔書が黒く光りだし、影から黒い狼が5体も現れた。


「また敵を増やした……もしかして、あの本は召喚関係?」

「……多分。周りのは攻撃魔法用の本かも」

「それはそれで面倒よね……はぁ、ピクトを出したら司書まで巻き込みそうだし……」


 大量の敵がいるなら、ピクトで一気に片付けたいところだが、それだと司書である魔女まで攻撃がいきそうで出せない。




 クエストに挑む前に何人かNPCを殺しておくべきだったわね。今更、そんなのを考えても仕方がないけど……





 新鮮なNPCの魂がないと『魔融魂合』が使えず、この状況をなんとかできる案を考えていたら…………ハーミンが動いた。


「……ここは私に任せて、あの魔書を倒してくれる?」

「…………わかったわ。何をするかわからないけど、魔書だけを相手にするなら問題はないわ」


 どうやら、この状況をなんとかする術があるようで、ハーミンに任せることに決めた。




「何をぐちゃぐちゃと話している!? 死ねぇぇぇぇぇ!!」




「……これは余り使いたくはなかったけど、仕方がない」


 ハーミンが懐から取り出したのはボロボロになった1本のナイフだった。そのナイフで何をするのか?

 気になったが、ヨミは『等倍速度』で襲い掛かかる本とハウンドウルフを通り抜けて、魔書と魔女の方へ走り出すのだったーーーー






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