第147話 下水道
「……臭いわね。ここに来たの後悔してきたわ」
「……我慢」
ヨミとハーミンは司書が見つけた下水道への入口前にいた。クエストは原因を見つけるだけでもクリアに出来るが、解決まで行けば、報酬が上がるから下水道に向かったが…………
「ずっと使われてないのに、臭いってどういうことよ!?」
「おそらく、清浄もされずに長年放置されたからでしょうね」
「……どう?」
「はい、感じます。図書館のよりも強く……」
2人だけではなく、護衛対象である司書も一緒に来ていた。この気配が何なのか、自分の目で確認したいのことで着いてくるらしい。
「街の中だからとモンスターがいないとは限らないわよ?」
「はい、迷惑を掛けますが自分の目で確かめたいのです」
「……私が守るから安心して」
「ありがとうございます」
クエストで必ず司書も一緒と決まっているので何を言っても無駄だろう。司書の守りはハーミンに任せ、下水道へ入っていく。
「あら、モンスターが出てこないわね。別れ道があっても、崩れていて一方しか行けなくなっているし」
「……仕様かも」
「楽に進めるならいいけど……なんか、不気味ね」
廃棄された下水道は水が流れておらず、藻に覆われた道が続いている。多少はモンスターが出てくると思っていたが、そんなことはなく静かだった。まるで、先にいる何者かが誘っているような気がするのだ。
「……いきなり、ボス戦もありえるかも」
「なら、ドルマを先に出しておくわね」
歩いていく内にヨミとハーミンも嫌な気配を感じるようになった。近付いていると思い、警戒心を高めた。
「……? 扉が見える?」
「下水道の道じゃなくなってきたわね」
「え、ええっ? 図書館と似た廊下……?」
歩いていく内に、空間が変わったように藻に覆われた道が消えて、図書館と似た廊下が現れた。そして、その奥には1つの扉が見えてきた。
ゲームだから可笑しくはないけど、司書にしたら異空間に入ったように感じちゃうわよね。
「……開けるよ」
扉前に着き、ドアノブに手を掛けるハーミン。扉がスッと開かれると…………
本棚に囲まれた空間が広がっており、その中心には1冊の本が置かれていた。警戒を持って、その本に近付こうと3人が部屋に入りーーーー
「っ、動かない?」
「……ボス戦の時に動けない時間があった。それと同じ」
「何か見せられるってことね……司書?」
ヨミとハーミンが動きを止められている中で、司書だけが1冊の本があるところまで歩いていた。司書の顔を見ると、目に光が無くて正気だと思えなかった。
「……そういうタイプかな。司書が操られて、戦うことになる奴」
「その場合だと……」
司書が本を手に取ると黒い霧が吹き出して、司書の姿が変わっていく。司書は魔女みたいな姿になり、影から大量の黒い本が飛び出してくる。
ーークエストの更新
狂宴の魔書を倒し、司書を救助せよ。
あー、やっぱり戦いになるのね。
本のモンスター? と戦うことになり、動けるようになったヨミとハーミンは武器を持ち、構えるのだったーーーー
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