第137話 第3回イベント 魔融魂合
『魔融魂合』、新鮮な疑似魂を生け贄にテイムモンスターと融合する禁忌のスキル。テイムモンスターと融合することにより、ステータスとスキルを受け継げる。そして、その姿はカスタムによって発動者が望む姿へ作り替えることが可能。ただし、作り替えられるのは最初の1回だけで後から変更は出来ないようになっている。
カスタムをした後、運営から後付けの仕様が加えられる。それが、1つの特性。
ドルマと融合した際に、得られた特性は…………『武器の能力を無効化』だ。
「うひ、これがピクトと『魔融魂合』した姿よ」
「……虫の頭に寄生しただけ?」
「うひひひ、そうしか見えないよね……おっと、仮面を外すの忘れていたわ」
今、ヨミは真ん中の頭である蟻の頭へ下半身が埋まっている状況になっている。ピクトがでかすぎて、アルティスの仮面の効力が全てに及ばない。だから、仮面を外して、素顔を晒していた。
「ピクトはドルマと違って、姿は変わらないけど……強くなっているのは確実よ」
何故、ドルマと融合しなかったの理由は人形に攻撃して、また10%を引いて脚をやられたら負けてしまう。だから、ピクトと融合することで部位と言える手足を増やすことで外れを引いても戦えるようにと。
それに、融合した際に得られる特性がネヴィルア相手にはあまり活躍しないのも理由だ。
アルベルト戦の時、『聖火装輪』はクラウ・ソラスのスキルだった為、ドルマの『武器の能力を無効化』が活躍したのであり、ネヴィルアの持つ武器、マダルメンの『複体人形召喚』は既に発動しており、無効化したとしても人形が消えることはない。
「ピクトと融合すれば、私が十全に支配することが出来るわ。その意味はわかるよね?」
「……手間が無くなる?」
「当たりよ。命令を出す手間がなくなるだけで…………」
ピクトの身体を使えるようになったヨミは鎌の範囲にいた4体の人形達を細切れにした。
「こうなるわ」
ピクトとの融合で得た特性は『完全支配』。つまり、ピクトの身体を自らの身体の様に動かすことが出来、違和感も抱かせない。そして、ピクトのスキルを使う時は声を出す必要もなく、自由自在に使えるようになるのだ。
「……速い。そして、凄い……」
「褒めてくれるのね。その余裕は…………まだ何かあるかしら?」
「……まだ闇神官としての力を見せていない」
ネヴィルアの職業は、『人形使い』と『闇神官』。人形使いの力、陽光魔法の力は見せたが、『闇神官』としての力はまだ何一つも見せていない。
「『怨霊装衣』」
『闇神官』の職業は、癒すのが仕事ではない。相手を呪う霊を従え、怨みを晴らさせてあげる職業であり、相手へ怨みを持つ霊が多い程に強くなるのだ。ネヴィルアが発動したのは、相手が殺したNPCの怨霊集合体を大きな人形へ装備させるスキルだ。
「うひ、武士みたいな姿になったわね!」
「……闇神官はなったばかりで、スキルレベルは低いから3人分と上限があるけど……『陽錬強化』もあるから充分に戦える」
『怨霊装衣』の怨霊はNPCだけではなく、野生のモンスターも選べるが人間の方が効果が強くなる。
「さぁ、いいかな。最後の戦いを始めよう!!」
「……負けない。行け」
ピクトに寄生するヨミ、武士の人形を従えるネヴィルアがぶつかる。ピクトの鎌が斬り裂こうと振るわれるが、怨霊を纏う刀で止められる。
「溶かされな!」
「……力ずくに押して!」
3つの顔から放たれる、『炎業砲』、『強酸液』、『暴風破』が人形を襲うが、喰らうのを覚悟して前へ押すように剣を押し付けてきた。
「鎌は柔ではないわ! 反対に押しきる!」
「……魔力がもうない。だから、この1手で決まって!」
ネヴィルアは『複体人形召喚』、『陽錬強化』、『怨霊装衣』と魔力消費が激しいスキルを使っていて、もう魔力がない。体力は満タンだが、それを使って発動するスキルは最初から持っていないし、武器も不気味な人形で何も出来ない。だから、残った大きな武士の人形がネヴィルアの最後の武器なのだ。
「もう魔力が無いのね。最後まで温存しておいて、良かったわ。『乱月光波』!!」
「……あ、刀を!?」
蟻の頭にくっついているヨミは両腕がないけど、魔法は発動できる。最後まで残していた魔力を使い、『乱月光波』で鎌と押し合いしていた刀を破壊した。そして、刀を破壊された人形は……
「……貫かれた」
「終わりよ」
「……っ、光が……もう、何も出来ない」
怨霊の装備は防御力がそれほどでもなく、簡単に貫いていた。そして、トドメに『複合破壊放射』で後ろにいたネヴィルアごと武士の人形を消し去ったのだったーーーー
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