第138話 第3回イベント 終幕






「……ふぅっ」


 優勝したヨミは今、ギルドホームのリビングでソファーに寝っ転がっていた。大会で満足出来る試合が出来て、程よい疲れが身体中に巡っている。このまま、転(うた)た寝ねしようと思っていた先にーーーー




「あーーいた!!」




 メリッサがギルドホームの扉を開けて、ヨミを見つけるとそう叫んだのだった。


「ちょ、ちょっと! どうして、表彰式にも出ないで帰っているのよ!? 皆、困っていたわよ!」

「あ~、表彰式なんて、もうどうでもいいじゃない。あんなことがあったし」

「あんなことって……アレね」


 ヨミは大会が終わり、表彰式へ出ずにギルドホームへ戻っていた。それに、2人が言うアレとは?


「まさか、あんなサプライズが起こるとは思わなかったわよね」









 ーー30分前。




『ゆ、優勝が決まりました! なんとの、レッドプレイヤーであるヨミ選手が優勝しましたぁぁぁぁぁ!!』


 司会者のクイナがそう叫ぶが、観客からは歓声が起こらず、拍手もヨミの仲間からしか聞こえない。

 それはそうだ。犯罪者が優勝したことに喜ぶ一般人のプレイヤーなどはいない。更に、先程に街へピクトを襲わせる迷惑を被(こうむ)ったばかりだ。しーんとした状況からどうやって表彰式へ移ればいいかわからず、困惑していたクイナだったがーーーー




 上空から会場全体へ拍手の音が響き渡った。




 上空から? 何かと皆が上へ見上げると、巨大な画面が現れて幕に1つの人影が映った。


『素晴らしい戦いだった。渡り人……いや、プレイヤーと呼ばれていたのだな。レベルはまだ我らの足元にも及ばないが、闘志は評価している』


 声から女性だとわかる。その正体はなんなのか、イベント関係でまだ何かあるか気になってきたプレイヤー達だったが…………次の言葉で皆が声を失うことになる。




『そうだった、我のことを知らぬのな。我は魔王だ』


 魔王。プレイヤーの最終目標である存在がそこにいる。


『世界を手に入れるべく、プレイヤーという存在を観察していたが、面白い人が何人かいたな。しかし…………』


 少しだけ声が低くなる。怒っているよりも何処か物足りないような感情から生まれた声だった。




『先程も言ったが、レベルが我どころか、四天王にも及ばん。我らは強者を望んでいる。…………そうだな、我らはプレイヤー達にプレゼントを贈ってやろう!!』


 魔王がそういい、手をかざすように動くと世界が揺れた。立っていられない程でもないが、凄い揺れの地震が起きていた。


『ダンジョンと言うものを生み出してやった。そこでレベルを上げ、先へ進んで来い! 我らは待っているぞ!!』


 そういい、魔王が映る画面が消え去ったのだった……………







「ダンジョンを作ったと言っていたよね。後から、運営が告知を出していたわ。後で見てみるといいわよ」

「それはわかったけど……表彰式に参加しない理由にはならないよね!?」

「えー、面倒臭い。周りに祝われない表彰式なんて、興味はないわ」

「あー……確かに、周りはねぇ。でも、それは自業自得だとわかっている?」


 ヨミはわかっていると言うように、ソファーに顔を埋めて手を振るのだった。それを見たメリッサは諦めたというように溜息を吐いて、ギルドメンバー達にメールを送るのだった。




 ダンジョンね、まだこの世界は楽しませてくれるよねぇ。







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