第129話 第3回イベント 身体能力



 アルベルトが本気で行くと言った。しかし、それは切り札と言う手札ではなくーーーー


「手加減をしなくていい相手に会えたことを感謝する。さぁ、生き残れよ?」

「な、まだ速くなるの!?」


 アルベルトの動きが更にキレが出て、スピードが上がった。新しいスキルを使っている様子もなく、剣の打ち合いが始まるとヨミの手に痺れが出てくる。


「パワーまでも上がって……いえ、抑えるのやめたってことね」

「そうだ、これが本来の力だ。周りが弱すぎて、少しでも楽しめるように手加減をしていただけだ」


 単に手加減を止めただけで、基本の性能でしかないと言う。




 どんな状況で生きてきたのよ? アルベルトって、軍人だったと言われても驚かないわ。




 これが基本の性能だと言うなら、特殊な訓練をしていないとここまでにバグみたいな強さを得られないだろう。




 今更の説明になるが、このゲームでは現実の身体を基礎にしている為、現実の時よりも強くなることはあっても弱くなることはない。つまり、現実の身体能力が最低値の強さになっているということ。

 そうなると、現実で身体が強い人がゲームに有利になるのでは? の話になってしまうかもしれないが、その差を埋めるのがステータスとスキルと言う訳だ。身体の動かし方、スキルの使いようで自分より強そうな身体を持っている人に勝てるようになっている。


 話を戻すが、ヨミがアルベルトが特殊な訓練をしていたのでは? と思ったのは、それほどにアルベルトの身体能力が桁外れなのだ。

 戦ってみてわかったことだが、アルベルトは身体能力、反射神経…………おそらく、思考能力も常人よりも格段に高いと感じた。


「このままじゃ、押し切られそうね。『悪堕ち』」


 力と速さで負け始めたので、切り札を1つ切った。素の身体能力に対して、ヨミはゲームの恩恵、スキルで強化をすることでアルベルトと相対する。魔人へなり、ダークエルフのように肌が黒く染まり、眼が紅くなった。力と速さで押してくるアルベルトに対して、上がった力と速さで押し返した。


「ほぅ。これでも着いてくるか。いいぞ!」

「うひっ、笑みを浮かべられるじゃない」

「……まぁ、楽しくなってきた所だ。武器も変えるか」


 初心者の長剣をアイテムボックスに仕舞い、本来の武器を取り出した。取り出した武器に観客が戸惑いの声が響く中で、ヨミも驚きに眼を見開くのだった。


「剣……と言ってもいいのかしら? ガラス?」

「勿論、このままで使う訳じゃないさ」


 アルベルトが取り出したのは、打ち合えば割れそうなガラスで出来た刃の剣だった。しかし、そのままで使う訳じゃないようだ。




「来い、光の精霊よ!」

「「「えっ!?」」」


 また、観客から驚きと戸惑いの声が上がった。精霊を呼び出した、つまりはアルベルトの職業が精霊使いであることがわかる。


 …………実は、精霊使いはβ時代で使えない職業と呼ばれていたからだ。精霊を操る職業は人気が出そうだが、使えない職業になった理由が…………精霊と出会えなかったからだ。

 勿論、精霊がいない精霊使いなどは何も出来ない案山子になってしまう。




 しかし、アルベルトは精霊を呼び出した。光に包まれた、妖精みたいな女の子が現れて、肩に座ったのだ。




「『精霊武装』」




 ただのガラスで出来た刃に呼び出した光の精霊が融合したかと思えば、第二フィールドの大ボスが使ってきた聖剣に劣らない程の剣が生まれたのだった。




「これが俺の武器、『クラウ・ソラス』だ」




 新たな武器を手にして、2ラウンドを始めようという風にクラウ・ソラスを向けられる。







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