第118話 第3回イベント 始まり



 第3回イベントへの参加は内容が告知された日、運営からのメールに是か否と返事をする必要がある。

 ヨミは勿論、是と返信を返した。そして、イベントの当日になりーーーー







「あいつはまだ来ないのか?」

「一度、ギルドに寄ってから来るって♪」

「待つのは構わねぇが……場所はここで良かったのか?」


 レッドであるジュン、カロナ、ジョーは待ち合わせをしており、あと1人を待っていた。しかし、その待ち合わせ場所に問題があってジョーは周りの視線を気にしていた。


「まぁ、無視しとけ。あいつらは手を出せねぇからな」

「あはっ♪ こうなることをわかっていて、ここを待ち合わせにした心がわかんないや♪」

「はぁ、鬱陶しいんだよな……」


 3人がいるのは、イベントの会場に繋がる場所、マリーナの街にある広場だ。周りには参加するプレイヤーと警備をしていた衛兵がいて、レッドである3人を警戒していた。

 プレイヤーは特殊な状況を除き、元より街の中ではプレイヤー同士の戦いが出来ない仕様になっている。NPCの衛兵なら指名手配されているプレイヤーと戦うことは出来るが、運営という神から正当防衛の時以外での手出しを禁止されていた。

 なので、プレイヤーに混じって何かされないように囲んで警戒をしている。

 そんな状況になっていた時、人混みを退かして3人の元に向かう者がいた。


「……お前らも参加するつもりなのか?」

「おや、仮面ちゃんにぼろ負けした第4位のハイドさんじゃないか?」

「くっ! 確かにやられたが今回はそうはいかないぞ。何せ、バトル・ロワイアルに参加したら、真っ先にお前らが狙われるのはわかりきっていることだ」

「あは♪ 言われなくてもわかったうえでここに来ているのよ。足りない頭でもわかることでしょ♪」


 ジョーとカロナの煽りにハイドはぶちギレそうになるが、耐える。


「ふん、後悔だけはしないことだな……」

「うひ、後悔はそちらがしないといいわね?」

「ッ!?」


 ハイドの後ろから聞き覚えのある声に警戒心が更に高まって、咄嗟に距離を取って振り返った。そこにいたのは…………


「ふふっ、そんなに怖がらなくてもいいじゃない」


 アルティスの仮面を被った仮面ちゃんだった。


「怖がってはおらん! お前のことを警戒しただけだ!」

「恐れを隠そうとしても無駄よ。目が揺れているもの……うひひひひひ!」

「こ、この狂人がッ!」


 ハイドを馬鹿にするように笑った後、無視して通りすぎた先にいるジュン達へ声を掛ける。


「遅れてゴメンね?」

「いや、まだ待ち合わせの時間になっていないしな」

「あら、そう? ……あと5分かぁ。暇潰しに衛兵でもやろうかしら?」


 周りにいる衛兵達に目を向けると、恐怖を浮かべて後退りしてしまう衛兵達がいた。

 今の仮面ちゃんは仮面以外がモザイクのようなモノに覆われたうえに気味が悪い気配を発しているので衛兵達には恐怖の対象だろう。


「貴様! こんな時でもNPCに手を出すつもりか!?」

「あら? 冗談だったけれども? これから楽しいイベントが始まるし、雑魚を狩ってもねぇ…………でも、貴方達がもっとやる気になってくれるならアリかな?」


 仮面ちゃんにしたら、多人数に相手をするだけではハンデにもならないと思い、もっとやる気を出して自分を殺しに来てくれたらもっと楽しくなるかなと思っていたら…………ジュンが止めていた。


「やめとけ。無駄な体力を使う程にあいつらには価値はないだろ? それに、イベント前に暴れると運営がうるさそうだ」

「……まぁ、そうね」


 イベント前に暴れて運営の機嫌を損ねて、参加が取り消しとなったら…………


「貴様……」


 ハイドは仮面ちゃんを止めてくれたのはいいが、見逃せない言葉があったことに異論を唱えようとした。しかし、その続きを放たれることはなかった。


「もう止めときなさいよ。ハイド?」

「む、ヒルダか……アルベルトにダンも」

「パーティのメンバーを置いてきたのは揉めない為にだろ? 少しは落ち着けよ」


 ヒルダとダンが前に出て、ハイドを止める。その後ろには……第1位のアルベルトも来ていた。


「しかし……」

「揉めるならイベント内でやればいい。今はダンの言う通りに落ち着け」

「……すまねぇ」


 アルベルトからの言葉もあり、落ち着くことにしたハイド。


「……君達が話題になっている者だね?」

「だったら、何♪」


 カロナが応えるが、アルベルトからは特に反応もなく、仮面ちゃん達を見回した後に仮面ちゃんだけに目を向けていた。


「…………この中で1番強いのはこの子だね。仮面ちゃんと呼ばれているようだな。やり方は好きではないが、強さには期待している。当たることがあれば、楽しみにしているぞ」


 アルベルトはそう言うだけで、ヒルダ達を連れてこの場から離れるのだった。ハイドも悔しそうにするが、大人しく仮面ちゃん達から離れた。

 

「……ったく、アルベルトの奴は仮面ちゃんにしか興味がないみたいだな」

「私なんか、無視されちゃったんだけど♪ ムカつくなぁ♪」

「まぁ、アルベルトからしたら、本当の強者にしか興味がねぇだろうしな」

「ジョーはアルベルトの強さを知っているんだっけ」

「まぁな……」


 ジョーからはアルベルトのことをこれ以上は話すことがなかった。仮面ちゃんはアルベルトのことを考察していた所に…………イベントが始まるアナウンスが流れた。


「始まるぞ」

「あは♪」

「まっ、頑張るか」

「うひひ、楽しみだなぁ」


 広場に集まっていたプレイヤー達がこの場から消え、会場へ転移されるのだったーーーー








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