第113話 謎の幼女と出会う



 第3の街は『アドル王国』で立派な王城を中心に、他の街よりも栄えている感じがある。


「あ、この前に聞いていた騎士団って……」

「多分、ここの騎士団かもね」


 ヨミも2人が言っていた通り、ワールドクエストの最後に出てきた騎士団はここの王国から救助で動いていたのだろう。


「思ったより広いわね」

「迷子にならないように気を付けないと……」

「……ふむ、メルナ、マミ。ここからそれぞれが行きたい場所もあるだろうし、解散しない?」

「そうね……構わないわ」

「わかりました! 店の品揃えを見てみたいですし」


 2人も賛成し、アドル王国に入ってから解散した。まず、ヨミが向かった先は…………






「あ、これは悪くないわね」


 ヨミは冒険者ギルドにいた。冒険者で出されている依頼票を眺めていたら、ヨミが受けたい依頼を見付けた。


 オーガとゴブリンの巣を潰して欲しいか……。この巣が洞窟ではなく村みたいな場所なら、望んでいた場所と合致するわね。


「ねぇ、聞きたいことがあるわ。巣と書いてあるけど、洞窟なの?」

「この依頼は……いえ、洞窟ではなくて山奥に村が出来たと報告されています」

「ふ~ん、ありがとうね」


 この依頼はパーティで受ける必要があるので、まだイエローやレッドになっていないメリッサとルイスと合流してから受けようと決める。

 もう冒険者ギルドに用はないので、他の場所に向かおうとしたらーーーー


「あら? 何か用?」

「こんにちは!」


 冒険者ギルドを出ていくと、後ろから服を引っ張ってくる者がいた。振り返ると水色のワンピースを着ていて、笑顔を浮かべる銀髪の幼女がいた。自分より小さくて、まだ10歳にもなっていないと思える幼女が自分に何か用があるのかと考えていたらーーーー



 ーーー強制クエストが発令されました。

 目の前にいる幼女をしばらく世話をせよ。幼女の満足度によって、報酬が変わる。



 ……は? 強制!?



「お姉ちゃん、どうしたの?」

「あぇ、……何でもないわ。何か用があるのかしら?」


 強制的にクエストを受けさせられたことに驚愕するが、すぐ切り換えて話し掛ける。


「お姉ちゃんは渡り人だよね!? どんな冒険をしているか聞かせてくれる?」

「成る程ね……構わないわ。何処かのカフェに行きましょうね」


 ひとまず、強制クエストは解除出来ないのでしばらくは幼女に付き合うことにした。満足度で報酬が変わるのも、気になっていたので面倒だとは思わなかった。






 近くにあったカフェに寄り、好きなものを注文していいと言ったら結構喜ばれた。


「わぁ! 何でもいいの!?」

「いいけど、残さない程度の量にしてね」

「うん! お母さんからもご飯は残しては駄目と言われているから大丈夫!」


 ちゃんと躾もされているのね。んー、何から話して……あ。


「そういえば、名前を聞いていなかったわね。私はヨミと呼んでね」

「うん! ヨミお姉ちゃん! 私はクロエだよ!」


 幼女の名前はクロエらしい。今回きりかもしれないが、満足度の高さで報酬が良くなるなら、ちゃんと自己紹介はした方がいいだろう。


「冒険の話を聞きたいよね。でも、その前に注文をしようね」

「うん! これとこれが食べたい!」


 注文を終わらせ、ヨミは今までの冒険を話し始めた。勿論、PKプレイヤーとしてやってきた生臭い事を伏せつつ、魔物使いで色々なモンスターをテイムした、ボスモンスターと戦ったとかのワクワクするような話をしていくのだった…………







 注文した物を食べながら話をして、1時間が経った頃。


「ヨミお姉ちゃん、色々と話を聞かせて貰って楽しかった! ありがとうね!」

「えぇ、私もゆっくり出来たし」

「また会ったら話を聞かせてね。ばいばいーー!」


 手を振って、ヨミから離れていく。姿が見えなくなるとアナウンスが聞こえてきた。



 ーーー強制クエストをクリアされました。報酬がこちらになります。


 エイリアルの靴



 あら……これって、真っ白なブーツじゃない。この服にピッタリだわ。性能は…………えっ!?



 エイリアルの靴 レア度:S

 希少な生き物の材料から作られた、最高峰の靴。装備している間は『二段ジャンプ』が可能になる。(スキル枠は必要しない)


『二段ジャンプ』

 1回だけ空中を踏み、ジャンプをすることが出来る。MP消費は無し。



 レア度:S!? こんなに良い物を……それだけ満足したってことかしら?


 ヨミはカフェでデザートを奢って、話をしただけ。それだけでこんなに良い物を貰っていいのかと眉を潜めるのだった。









《クロエ視点》


 ヨミから離れた幼女は機嫌良く、街をぶらついていたら……


「ふふ~ん、私からのプレゼントは気に入って貰えたかな?」

「クロエルナ様」

「あちゃぁ~、もう見つかっちゃったかぁ」


 クロエルナ様と呼んだのは、執事服を着た優男に見えるが普通の人間ではない。目立つ服装をしているのに、周りにいる人は2人の姿を認識をしておらず、通り過ぎていくだけ。


「全く……また城から抜け出してこんな街に……」

「こらこら、こんな街にとか言っちゃ駄目だよ。カフェのケーキは美味しかったし、面白い冒険者にも出会えたし」

「面白い冒険者ですか? ここはレベルが低い者しかいないのですが……」

「バルトは強さにしか興味がないんだよねぇ。まぁいいわ、面白いよ。見た目はただの少女にしか見えないのに独特な雰囲気を持っていたわ」


 クロエはヨミのことをただの冒険者、渡り人ではないと見破っていた。




 また会った時、どれだけ変わっているか楽しみね。ふふふっ…………




 クロエの笑みはヨミが浮かべているのと同種だった。手を動かしただけで2人の姿はアドル王国から消えたのだったーーーー







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