第111話 第2の大ボス その6



 メルナに策があるということで、ヨミはそのサポートに回る。


「一瞬でもいいから、地上に降ろせる!?」

「わかったわ。ドルマ、ピクト!」

「ギゲゲゲ!」

「ピギィ!」


 1体ではヴァルキリーに避けられたり防いでしまうので、ドルマとピクトが協力して空中から地上へ引きずり落とそうと動く。逃げ道は地上にしかないと言うようにドルマが上へ回り込み、ピクトがヴァルキリーの周りに『炎業砲』、『強酸液』を放っていく。


『……!』

「地上へ逃げたわ!」

「ありがとう! 『針通し』!」


 『針通し』は近くの穴へ糸が付いた針を通すだけのスキル。攻撃用ではなく、裁縫師が大きな布に針を通しやすくする生産スキルだがーーーー


「通った!」

「うおぉぉぉぉぉ!!」

『!?!?』


 メルナが投げた、糸が付いた針は綺麗に天輪という穴を通り、その糸はジュンが受け取り引っ張った。そしてヴァルキリーは、天輪だけじゃなく身体ごと地面へ叩きつけられることとなった。


「来た! ピクト、『巨斬鎌』! ドルマ、『破咬』!!」


 強力な物理攻撃である『巨斬鎌』と耐久力を大幅に減らし、部位破壊をも出来る『破咬』で天輪を狙う。


『ーー!?』




 バキッ!




 頭の上にあった天輪が破壊され、ヴァルキリーが怒りを浮かべて立ち上がろうとするが、その前にヨミが動いて顔を掴んでいた。今までの鬱憤を晴らすと言うように、月光魔法を使った。


「『乱月光波』! 『乱月光波』!! 『乱月光波ぁぁぁぁぁーーーー』!!」


 残ったMPを全て使いきる勢いで零距離から3連発の『乱月光波』を放った。屋敷を一撃で破壊する程の威力が綺麗な顔へ向かって放ち…………


『……ガ、ッ!』

「これでもまだ倒れないの!?」


 ヴァルキリーは魔法を食らわせ続けられながらも、掴まれていた手を振りほどいて空中へ逃げた。


「体力バーは3本目の半分まで減らしたが……まだヴァルキリーに手が残っていたみたいだな」

「今度こそ、パワーアップするみたいだわ」


 今まで武器を増やしたからと言っても、代わる代わる武器を変えながら戦っていたから劇的にパワーアップした訳でもなかった。

 だが、3本目の半分まで減らされたヴァルキリーは空中に逃げ、更なる何かをしようとしていた。作り出していた武器を全て束ねようとしている所だった。


「最後まで見てあげるにはいかないわよ! ピクト、『複合破壊放射』を撃てぇぇぇ!!」

「ピギギギ!!」


 お互いに完成まで時間は掛かるのだが、ヨミはヴァルキリーが上へ逃げた時にピクトへ既に脳内で命令を下していた。だから、ピクトの溜めは終わっていた。全てを破壊する破壊光線がヴァルキリーへ向かうーーーー





『|勝利を約束された剣(エクスカリバー)』






 当たる前に、完成されてしまう。そして、武器の名にスキル名でもある『|勝利を約束された剣(エクスカリバー)』は上段斬りで『複合破壊放射』ごとピクトのHPを0にして吹き飛ばしたのだった。


「ピクト!?」

「え、エクスカリバー!? なんで、こんな所で……しかも敵に持たせてんの!?」

「あ、もしかして負ける?」


 ヨミはピクトがやられたこと、ジュンは伝説の剣がこんな序盤で出てくることに驚く。メルナは強者であったヴァルキリーが更に強くなったことで諦めの心境に陥っていた。


「い、いや! あれだけの強い剣、序盤に出てくるなら必ずデメリットがある筈だ!」

「……ん、待って! ヴァルキリーの体力バーが1ミリしか残っていない?」


 ヨミが気付いたのは、ヴァルキリーの体力が1ミリしか残っておらず、誰でも1擊を当てれば勝てそうだ。


「あれがデメリットか!」

「一撃……でも、当てられる?」


 『|勝利を約束された剣(エクスカリバー)』が出たら、体力が1になるデメリットを受けるが、その代わりに勝利を約束されたと付くぐらいに…………


「はやっ!」

「避けろぉぉぉぉぉ!!」

「キャァッ!」


 メルナはジュンに服を掴まれ、後ろにいたリーがいる所まで投げられた。その隙で……


「ぐはぁっ!」

「ジュン!?」


 庇ったジュンは逃げるのが遅れ、右手右足を切り落とされて体力バーも赤まで減らされる。トドメを差される前にヨミがナイフを投げることで体力が1しかないヴァルキリーに距離を取らせることに成功した。


「ジュン!」

「大丈夫だ。もう戦えないが、体力は回復させた!」

「……そう。もう使うしかないわね」


 ジュンは右手右足を切り落とされて、もう戦えない状態なのでヨミだけで戦う事になった。見た限り、ヴァルキリーはパワーとスピードがパワーアップしており、あの剣にまだ別の能力があるかもしれない。

 だから、別の能力を使われる前に終わらせる必要がある。





「『悪堕ち』」





 切り札であるスキルを使ったヨミ。本当なら仲間であるジュン達にもイベント時までは見せたくはなかった。もしかしたら、ジュンとともに戦うかもしれないのだから。

 ヨミが使った『悪堕ち』の効果でヨミの肌がダークエルフのように黒く染まり、目が紅くなっていく。大ボス戦ではアルティスの仮面を被っても効果は薄いから使っていなかった。だから、肌が黒く染まっていくヨミの姿に周りの皆が驚く中で…………




『!?』

「もう何もさせないわよ。3人分を消費して……『等倍速度(アクセレータ)』」




 危機を感じたのか、『|勝利を約束された剣(エクスカリバー)』を振るおうとしたヴァルキリーだった。しかし、『悪堕ち』によって、種族が魔人になって使えるスキルが増え、そのスキルを発動したヨミはヴァルキリーを通りすぎた場所にいた。


『!?!?』

「終わりよ」


 ヴァルキリーは両断され、HPを0にされた。ヴァルキリーは何が起きたかわからぬままで光の粒になって消え去ったのだったーーーー






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