第110話 第2の大ボス その5



 武装乙女ヴァルキリーの武器は既に6本目へ増えようとしていた。その頃に、ヨミ達はようやく全ての神兵を倒し終わった所だった。

 ヴァルキリーによるスキルで魔法禁止のフィールドになってしまっているので月光魔法を使えず時間が結構掛かってしまった。


「重装備の騎士よりも飛んでいた天使が面倒だったな」

「こっちは飛べないし、遠距離攻撃の魔法を封じられていたからね」


 飛んでいた天使の神兵はピクトが叩き落としてから攻撃を加えたり、ドルマを伸ばし切り裂いて体力を減らしたりして倒していた。




 魔法以外の遠距離攻撃方法を持っていなかったら厳しい戦いになるわよね。メリッサ達は……大丈夫でしょう。




 後から挑むメリッサ達は弓使いのボウに薬やトリモチを投げて捕らえることも出来るから心配は必要ないだろう。


「最後に攻撃を当てればいいよな! おらっ!」


 ジュンがサブ武器である小斧を投げて、6本目の武器を創造していたヴァルキリーの邪魔をした。小斧はあっさりと当たり、作っている途中だった武器は霧散した。


『……!?』

「鎖が解けたわ! ……体力バーは3本!」

「行くぞ!」


 鎖がバラバラに散り、無敵状態が消えたヴァルキリーへ2人は同時に突っ込んだ。ヴァルキリーも戦闘体勢に入り、周りに浮いていた武器から1本を掴む。

 最初に掴んだ武器は輝いている3本又の槍……トライデントで翼を羽ばたきながら突撃してきた。


「念の為に正面から受け止めるなよ!」

「わかっているわ! まずは、ナイフの嵐よ!」


 お互いが衝突する前にヨミがナイフを投げていく。その攻撃にヴァルキリーはスピードを落とさずにトライデントを回して打ち落としていく。


「うらぁぁぁっ!!」


 回して防御していたトライデントを構えさせる前に、ジュンがハルバードを下から斬り上げて攻撃する。構えをせずに不安定な状態で防ごうとすれば、トライデントを弾きつつ、身体を切り裂けるが…………そう簡単にはやられない。


「な、避けた!?」

「チッ! 『夜天月斬』!」

『…………』


 ヴァルキリーはハルバードを防ぐことをせず、紙一重で翼を使い回避していた。トライデントでジュンを貫かれる前にヨミが『夜天月斬』を放つが、攻撃を途中で止めて上空へ羽ばたくことでヨミの攻撃もスカせる。


「翼を使うのが上手いわ!」

「む! 武器を変えるぞ!?」


 今度はトライデントを手放し、片手剣と小盾を装備した。作り出した武器は常にヴァルキリーの周りを回っているが、ヴァルキリーが手にしていない武器は薄っらと透明になっていてぶつからないようになっていた。


「飛んでいて、速いなら魔法が使いたいわね……」

「なら、あの輪っかを破壊してみないか?」

「さっき、本体に当てられなかったのにあの小さいのを狙えると?」

「厳しいな……」


 双子と同じように泥試合になるのかと思ったが、後ろでリー、マミと一緒に下がっていたメルナが前に出ていた。


「私も加わるわ! リーはマミを守っていて!」

「メルナ!? お前のレベルじゃ厳しいだろ!」


 今のメルナはまだレベル20に近いので、レベル40もあるヴァルキリーの前に立つのは自殺行為だろう。


「大丈夫! 私に考えがあるの!」

「……わかったわ。ドルマ、本気でやりなさい!」

「ギゲェェェ!!」


 ヴァルキリーは話が終わるまで待ってくれない。だから、ヨミはメルナに近付かせないようにドルマに全力で動いて貰うように言った。

 ドルマは勢い良く伸びていき、カクカクと曲がりながらヴァルキリーへ斬ったり噛みついたりしている。武器を変え、バランスが良い片手剣と小盾で上手く受け流していた。しかし、反撃をする余裕はないようでヨミ達から目が離れた。


「何か案があるの?」

「私のスキルなら…………」








 成る程。それなら、あの天輪を狙えるかもしれない。まさか、裁縫師だから使えるとはね……。


 メルナからの提案を聞き、それなら可能性はあると判断した。ドルマを引かせた時が、メルナの策を開始する合図になる。

 ヴァルキリーを倒すならまず、相手の得意な状況を壊すことからだーーーー







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