第107話 第2の大ボス その2



「ジュン! キルーのタゲを取っておいて!」

「わかった、お前は!?」

「ヴァリの方を少し見てみるわ!」


 キルーとの戦いで邪魔をされないようにと、大盾使いのヴァリに手を出してどういう動きをするのか確認をしたい。

 体力バーを見ると、キルーは1本に対して、ヴァリは5本もあった。


『…………』

「さぁ、このナイフはどう捌くかしら!?」


 ヨミはヴァリを中心に回りながら大量のナイフを投げて、どう動くか見てみる。あれだけのナイフ、スキルで防ぐと予想していたヨミだったが…………ヴァリはスキルを使うこともなく、全方位から襲い掛かるナイフを技術だけで捌ききってしまう。

 後方に下がっているリーから驚きの声が漏れた。


「な!? あれだけのナイフを捌いたのか!?」

「1つも当たらないなんて、あんな動きは最前線のプレイヤーでも難しいじゃない?」

「流石、大ボスですぅ……」

「いやいや、大ボスだからと出来る訳じゃないからな?」


 あまりゲームの経験が少ないマミは大ボスなら普通だと思っている所にリーからツッコミが入る。


「ドルマ!!」

『ギゲゲゲ!!』


 ドルマを本来の姿に戻し、高いスピードを以てヴァリへ伸びていく。真っ直ぐへではなく、撹乱するように方向をあっちこっちへ曲げながら刃で切り裂こうとするが……


「これでもほぼ防ぐの……? ドルマのATKは800を超えているのに、ダメージが少なすぎる!」


 直撃はしないが、たまにカスることもある。ドルマのATKならカスっただけでもダメージに期待は出来るレベルなのに、ヴァリの体力バーは全然減っておらず、ジュンが言っていた自動回復で少しずつ回復していて、普通に戦って削りきるのは無理だとわかった。


「ジュン、キルーに攻撃をしてみて!」

「わかった!」


 キルーの攻撃を避けながら、ジュンのハルバードで少しずつ攻撃を当てていく。

 キルーに攻撃が当たるとヴァリの体力バーが減っていくのを確認出来、それがヴァリへ直接に攻撃したよりもキルーに攻撃した方がダメージが多い事がわかった。


 私達がやるべき事は決まったわね。


 ジュンと2人でキルーを全力で倒しに行き、ヴァリの体力を減らしていく。それが、この戦いでの勝ち筋なのだろう。




「ピクト、『召喚』! ヴァリを足止めしなさい!」

「ピギィィィィィ!!」

『……!』


 ヴァリはピクトに任せ、ヨミはドルマをキルーに差し向ける。


「ジュン、全力を以てキルーへ攻撃よ!!」

「了解だ! ……だが、まだアレを出してこないぞ?」

「アレね。まだ出されてないの? 条件とかあるんじゃないの?」


 アレとは、この前にジュンが挑んでやられた時で最後に何をされたのもわからないまま、凄い衝撃を受けて退場された不明な技のことだ。


「まぁ、戦っていれば出してくるだろう」

「そうね、キルーは攻撃に優れているけど、防御と回避はそんなでもないわ」


 2人でキルーを襲い、ダメージを重ねていく。動き回るヨミ達に焦れたのか、キルーが大技を出してきた。




『トルネードスイング』




 キルーが極大ハンマーを回転しながら振り回していた。ヨミは凄い風圧も合わさって吹き飛ばされないように、ドルマを地面に刺して耐える。回転が終わるまで耐えればいいと思ったが、回転の終わりに勢い良く極大ハンマーを振り上げたことで、2つの竜巻が襲ってきた。


「ぐぅ、『乱月光波』!」


 まだ強い風が吹き荒れており、動くとバランスを崩しそうなので、月光魔法で迎撃した。


「うわぁぁぁ!?」


 迎撃は……したけど、威力負けしたのね。


 ジュンも魔法で迎撃したが、威力負けして壁まで吹き飛ばされていた。2つの竜巻が消えたことで風が大人しくなってきた時、キルーがフラフラしているように見えた。


 そりゃ、あれだけ回転したら酔うよね!


 その隙を逃すヨミではなく、ドルマをキルーの胸に向けて刺し伸ばす。


『…………ッ!?』


 急所だったようで、ヴァリの体力がグンと減った。


 行ける!


 急所を狙って攻撃し続ければ、ヴァリの自動回復も間に合わなくなってヴァリが先に倒れるだろうーーーー




「ピギィィィ!?」




 倒す算段が付いたと思った先に、ピクトの悲鳴に振り返ってしまう。そこには驚きの場面があった。


「なっ……」


 ヴァリの大盾が形を変えており、先程は普通の盾の形だったが、今は六角形の形になっていた。それはいい。問題なのは…………




 ピクトのHPが半分以上も減らされていたのだ。




 一体、何が起きたのかわからないまま戦況が進んでいく。


「ヨミちゃん!」

『ディープインパクト』

「しまっ!」


 咄嗟にドルマを盾にしていたが、その前にヨミの両腕両脚に巻き付いていたキッカが動き出して、ヨミを守った。


『!?』

「あ、キッカは布だから打撃はあんまり効かないのだったわね……」


 極大ハンマーを柔らかく受け止めたことでヨミを守り、更に衝撃を分散させることでキッカ自身も耐久力を大きく減らすことはなかった。


「キッカ、助かったわ」


 キッカのお陰で危機から脱して距離を取ることが出来た。




 ピクトのことが気になるわね……あ、離れていた3人なら見ていたよね。




「ジュン、またお願い!」

「またかよ! ……はぁ、向こうのことが気になるんだろ? すぐ戻れよ」

「わかっているわ」


 ヨミはピクトのHPを半分も減らした件、放っていたらそれが敗因になりそうだと勘が訴えていた。だから、見ていた筈の3人へ話を聞くことにーーーー









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