第101話 蠱毒
《メリッサ視点》
今日も上手く出来なかったな……。料理は難しいわ。
メリッサはギルドホームのキッチンで料理の腕を上げようと頑張っていたが、何故か全ての料理が錬金術のように化学変化を起こして食べれる物は何一つも出来ずに終わった。
何故、そうなるのか考えてもわからないままで気分が落ち込み、気分変えに外に出ていた所だった。
「……あら、ヨミちゃんがいる?」
廃村を出ると、そこには穴らしきものを覗いているヨミの姿があった。そこにあんな穴があったのか気になり、ヨミに声を掛ける。
「ヨミちゃん、何をしているの?」
「ん、メリッサ?」
メリッサに声を掛けられ、覗いていた穴から視線を外し、こっちへ向いてくる。
「穴を覗いているけど、何があるの?」
「うーん、教えてもいいけど刺激が凄いから見ない方がいいわよ?」
「……何をしているの?」
メリッサはその言葉からとんでもないことをしていると悟った。
「ねぇ、メリッサは蠱毒って、知っている?」
「蠱毒? 確か、五月五日に小さな壺へ百種の虫を集めて共食いをさせて、最後に残ったのを呪詛の媒体に用いる呪術だよね?」
「流石、博識ね。わかるよね?」
説明の途中でまさかと思ったが、ヨミが笑顔を浮かべ、穴に向けたことで考えてが正しいと理解した。慌てて、穴の底を覗くとーーーー
「え……ひぃっ!?」
「あー、見ない方がいいと言ったのに」
穴の底には、大量の虫型のモンスターがうじゃうじゃと敷き詰められていた。
「何をしているのよ!?」
「え、蠱毒だよ? 共食いじゃなくて、戦わせているけどね。試しにやってみたけど、同種の種族でなければ、モンスターは戦うみたい。閉じ込められた場所に入れないとお互いが縄張りというか干渉の範囲には入らないようになっているわ」
「そ、そんなことじゃなくて! なんで、こんなことをしていると聞いているのよ!」
虫が嫌いなメリッサは虫が敷き詰められた所を見てしまったことに機嫌が悪くなり、詰め寄っていた。その詰問に当の本人はあっけらかんに答える。
「あぁ、そういう意味ね。新しいテイムモンスターの枠が空いたんだけど、ここら辺にいるモンスターじゃ、ドルマ達に劣るじゃない? レアなモンスターはあっさりと見つかる訳でもないから、作……育てようと思って!」
「作ろうと言い掛けたよね!? なんで、虫型のモンスターにしようと考えたのよ!?」
「虫型のモンスターが1番育ちやすいから。β時代の掲示板にも載っていたし」
「えぇっ……」
ヨミからしたら、3体目のモンスターは『武具化』や『防具化』の対象にするつもりはなく、普通に戦わせようと考えていた。だから、どの種族でも良かった。蠱毒のやり方で強いモンスターを生み出せないかと試してみたら、思ったより良い結果になりそうだとヨミはご機嫌だった。
虫型のモンスターは戦い続け、倒したり倒されたりとしているから経験値は間違いなく得ていると考えられる。進化もしているモンスターもいるので、このまま最後の1体まで戦い続ければ、ヨミが望んでいる強いモンスターが生まれるだろう。
「いいわ、戦い続けなさい~」
「悪趣味よ……」
悪役として、メリッサは悪辣なことでも協力をするが、嫌いな虫が戦っている所を笑顔で見続けるヨミに引く。
メリッサに引かれているのを理解しているヨミは気にせずに強いモンスターが出来ることを楽しみにして見続けるのだったーーーー
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