第96話 表掲示板回 その2



 ヨミがギルドホームに帰ると、既に皆も戻ってきていた。


「お、戻ったか」

「あら、集まっているけど何かあったのかしら?」

「いや、重要なことでもないが、一応報告をしておこうと思ってな」


 何か報告する程のことはあったのかしら?


「テイトクがペナルティのことを愚痴っていたから知って貰った方がいいかなと」

「あ、ペナルティのことね」


 ワールドクエストのペナルティは『銀月の使者』には適用されないから内容も伝えられなかったが、メリッサがテイトクから聞いていたようで報告をしようとしているらしい。


「ペナルティはNPCからの信頼度の低下、アイテムの高騰で数倍に上がったらしいよ。それに、3日間は死亡した時のペナルティが少し重くなるとか」

「あー、アイテムの高騰はキツイな。更に死亡した時のペナルティが重くなったなら無茶して金稼ぎに出るのも難しくなったか」

「あと、門を守りきれなかったからプレイヤーの実力を疑うようになるのも仕方がないわね」


 このペナルティは失敗からの流れから可笑しくはないレベルなので皆は文句を言いつつも受け入れはするだろう。


「次に俺からな」

「あは、あの騎士団ね♪ あれは無理♪」

「騎士団?」

「向こうも現れたのか? 挑むのは流石に厳しいと判断したが、正解だったな」


 ジュンからの報告。ジョー側も騎士団が現れて、門の守護を失敗した後に現れたようだ。


「大体50人の騎士で鑑定をしてみたら、殆どがレベル30ぐらいで隊長っぽい奴には鑑定は弾かれた。おそらく、レベル40~50じゃないかと疑っている」

「あー、使えないプレイヤーに変わってモンスターを退治した訳ね。レベル30以上って……引いて正解よ」


 つまり、街の中にモンスターを入れることもなく騎士団がプレイヤーの尻拭いをした状況になっている。


「ふんふん、確かに実になる報告だったわね。……あら、マミからも何かあるの? 何か言いたそうな顔をしているわよ?」

「ふえっ!? そんな顔をしていますか!?」


 マミがペタペタと顔を触ると皆がクスクスと笑顔を浮かべるのだった。顔を赤くして恥ずかしがるマミだったが、報告したいことはあるようで、説明してきた。


「あ、あの、入口にある画面を見たら新しい項目が出ていました……」

「新しい項目?」

「はい、街のNPCから買えるアイテムがここで買えるようになっていました。しかも定価で」

「へぇ、どういう条件で? 裏クエストではそういうご褒美は含まれてなかったよね」


 1度メールを確認したが、設備の割引と経験値の増加だけ。


「すいません、わからないのです」

「知らない内に条件を達したからじゃねぇのか?」

「別にわからなくても、定価で買えるならラッキーでいいじゃない?」


 確かに使えるようになって、得はあっても損はないから気にしなくても構わない。


「まぁいいわ。今回は良くやったわ、私達の勝ちよ…………私が良いことを言っているんだから、画面を見ていないで聞いてよ?」

「ん、すまんすまん。掲示板が面白くてな」

「掲示板?」

「表の方な」


 ジョーがニヤニヤとして掲示板を見るようにと皆にオススメする。ヨミは気になり、言う通りに掲示板を開いた。その掲示板にはーーーー




ワールドクエストのスレpart2





1:名無しのゲーマー


ここはワールドクエストについて語るスレです。


次スレは>>950を踏んだ方が宣言して立てること。

471.名無しの冒険者

 お通夜のスレはここですか?


472.名無しの冒険者

 間違っていませんよ。


473.名無しの冒険者

 はぁぁぁぁぁぁぁーーーー。どうなっているんだよ……( ノД`)…


474.名無しの冒険者

 ワールドクエストがあったと聞いて、掲示板を覗いたのですが……。


475.名無しの冒険者

 未参加者か? 前のスレ通り、失敗したよ。…………失敗したよ!! またあいつらのせいで!!


476.名無しの冒険者

 そう、あいつらだ。あのPKプレイヤー、イエローとレッドのせいで!!


477.名無しの冒険者

 あぁ……また仮面ちゃんが暴れたのね。でも、仮面ちゃん達もプレイヤーだよね? ペナルティとか怖くないのかしら?


478.名無しの冒険者

 そのことだが、推測になるけどな。失敗した後のアナウンスで言っていただろ? 一部を除く全プレイヤーと。

 つまり、その一部はあいつらのことじゃないかと思っている訳よ。


479.名無しの冒険者

 えっ!? ワールドクエストって、全プレイヤーを対象にしているじゃなかったの!?


480.名無しの冒険者

 普通ならそうだろうけど、何かの方法でワールドクエストに対する反逆をすることが出来たじゃないかと考えている。例えば……魔王の配下と出会ってクエストを受けたとかな。推測でしかないが。


481.名無しの冒険者

 あー、あるかもな。魔王配下が人と話せるタイプだったら、その可能性はあるな。


482.名無しの冒険者

 そんなことが出来るのか……?


483.名無しの冒険者

 いやぁ、あの仮面ちゃんだぞ。1番先にレッドになり、今まで俺達の邪魔をしてきたんだぞ? 可能性はないとは言い難くないか?


484.名無しの冒険者

 あの仮面ちゃんならか……。


485.名無しの冒険者

 それに、他のレッドも…………






「なっ、面白いことが書いてあっただろ?」

「私達が魔王の配下からクエストを受けたかも? ってところね。真実は運営からだけど」


 ヨミは考えたこともなかった、魔王の配下からクエストを受ける可能性。もしかしたら、いつか魔王側からそういうクエストを受けられるかもしれない。


「…………うひ、それも面白いかもね。本当にあるならね」


 いつか倒す相手だが、魔王側からのクエストもあるならやってみたいと思うヨミだった。表情に出ていたのか、同じく楽しそうにする者、呆れる者に分かれるのだった。


「あー、また悪そうな顔をしているわよ? 今は勝ったことを喜びましょうよ?」

「そうね、軽くパーティでもやる?」

「良いですね! ギルドホームの建設パーティも含めてやりましょう!!」


 メリッサとマミの案に皆も祝杯をあげたい気分になり、パーティを急遽(きゅうきょ)に開くことになるのだったーーーー







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る