第95話 上位の強さ



《ジョー視点》



 南の門に向かったのはジョーとリー。南の門側もジュンのように順調…………とはいかなかった。


「うはははっ! 斬り裂かれろ!」

「ふん、土遁術『瓦礫弾』!」

「吹き荒れろ! 風魔法『ファングストリーム』!」


 尖った瓦礫を風の牙で相殺して、お互いは急遽に接近戦で刃を打ち合う。双剣と短刀が身を斬り合い、致命傷を受けずに数回は斬り結ぶと…………同じタイミングで離れた。


「やるじゃねぇか。第3位よ」

「お前はPKプレイヤーの中でも高い実力を持っていそうだな」

「持っていそうじゃなくて、持っているんだよ!」


 モンスターとプレイヤーで乱戦になっている中心でジョーは第3位のダンと相対していた。リーは邪魔にならないようにモンスターを上手く使って、影でプレイヤーを狩っている。


「……なら、お前は仮面ちゃんと言う奴に勝てるのか?」

「……チッ、戦ったことはねぇが、今は勝てねぇだろうな」

「やはり、あいつは別格側か……」


 その別格側である存在と一緒に戦っているダンは理解していた。あの仮面ちゃんはそう簡単に勝てる存在ではないと。

 しかし、ダンは1人では勝てないと諦めるつもりはなくーーーー


「『デュアル・リアクト』、氷魔法『アイスブラスト』!」

「チッ!?」


 想像以上の数である氷の礫(つぶて)が放たれ、周りにいたモンスターごと抉っていく。ジョーは魔法では相殺出来ないと判断し、自らの剣技で捌いていく。全てを捌くことは出来ず、傷が幾つか刻まれていた。


「第2位ィ!」

「耐えたのね。でも、貴方でも私達を同時に相手にするのは無理では?」

「来るのが早かったな」

「西はモンスターだけでしたので、後は他の人に任せましたわ」


 ヒルダとダンは前もって決めていたことがある。もし、PKプレイヤーが来たらすぐ連絡し、合流すると。その方が確実に葬れるからだ。

 ダンは仮面ちゃんが相手でも、ヒルダと共に戦えば勝てる可能性があるという信頼はあった。


「うはっ、確かに2人同士はキツイだろうな」

「なら、そちらの男と協力しますか?」

「…………いや、あいつはまだ力不足だな」

「なら、1人で戦って倒れるか?」


 確かに俺でも2人同士に戦うのは厳しいだろうな。しかしーーーー


「うはははっ! 本来なら1人でもやってやる! と言いたいところだがーーーー」

「そうね。私が手を貸してあげましょうね」

「「ッ!?」」


 挟み撃ちになるように、門側から仮面ちゃんが現れる。


「やっぱり、ここに来ますか」

「お前達! モンスターに邪魔をされることにならないように動いてくれ!」


 周りにいたプレイヤー達はダンの言葉に頷き、陣形を変えていく。


「うひっ、これで2対2の対局を作ったのね…………でもね、私達が合わせてあげる理由はないよねぇ!!」


 ヨミ達の目的はプレイヤーを全滅させることではなく、ワールドクエストを失敗させることだ。なので…………


「なっ、皆を!?」

「畜生が!」


 モンスターの邪魔になりそうな箇所を狙って、ナイフを投げる。そのナイフには、先程の爆発で使ったのと同じ小さな爆弾を付けており、投げた後に一言のワードを唱えることで…………


「『ボン』」


 小さな爆弾は街で建物を崩した威力はないが、密集した場所で小さな爆発が起きれば生き物は光、音、熱の暴力に吹き飛ばされて混乱する。混乱した隙にモンスターが襲えばーーーー


「うぎゃぁっ!」

「しまっ……ぎゃっ!」

「じ、陣形が!? さっさと建て直……ぐはっ!」


 このようにカオスな状況に陥る訳だ。その効果は戦場では伝播して、ダン達にも伝わっていた。現にダンとヒルダはぐちゃぐちゃになった戦場に意識を取られていた。


「貴様!」

「余所見をする余裕があるのか!?」

「しまっ!」


 敵はモンスター、仮面ちゃんだけじゃない。先程まで戦っていたジョーがいて、隙を見せてしまったダンは避けきれずに右腕を斬り落とされる。


「ダンーーふぐっ!?」

「おっと、アンタは先に退場して貰うわ。ドルマ、『武具化』」


 一瞬で仮面ちゃんはヒルダの顔を掴んで、ドルマを召喚して急所の心臓を貫いた。


「魔法使いは前に出るならもっと周りを警戒すべきね」

「ヒルダぁぁぁ!!」

「ごふっ、だ……ん、ゴメ……ン」


 ヒルダはHPを一気に全損され、退場した。


「クソ! ここは……」

「逃げんのか!?」


 まさかの選択、ダンはここから逃走した。ヨミはダンが選んだ選択に気付き、すぐ追うことに決めた。


「ジョー、リー! ここは任せるわ!!」

「お、おう。わかった!」

「任せてくれ!」


 南の門は2人に任せることに。








《ダン視点》



 ッ、追ってくるか! だが、このスピードなら森の中で撒(ま)ける!


 ダンはただ逃走した訳でもない。アルベルトを呼ぶ為に安全な場所へ身を隠す必要があった。しかし、後ろには仮面ちゃんが追ってきている。しかし、スピードがほぼ同等なら森の中なら撒ける自信はあった。もし、撒けたら希少なアイテム、『呼び鈴』でフレンドの1人をこの場に呼び寄せることが出来るアイテムを使って、アルベルトを呼び寄せるつもりだ。

 そのアイテムは相手の許可が必要で、近くにモンスターがいないと言う条件があるから少しは時間が必要で、南の門から離れたのだが、仮面ちゃんが追ってくるから撒く必要があった。もうすぐで森があるフィールドが見える。




 よし、もうすぐだ! これなら撒ける!




 ーーしかし、仮面ちゃんはダンを逃がすつもりはなかった。1つの切り札を切った瞬間だった。




「ーー『悪堕ち』」




「……は?」


 距離を離したまま、森があるフィールドに入れると思っていた時に仮面ちゃんが既に隣で並走していることに呆気に取られる。


「な、何がーー」

「残念だったわね」


 その言葉が聞こえた瞬間に、ダンの身体が上半身と下半身に別れていた。


 う、嘘だろーーーー!?


 あれだけの距離を離していたのに、一瞬で隣にいて、どういった攻撃で半分に切られたかもわからないまま、光の粒になって消え去るのだった。









「ふぅ、間に合ったわね。まさか、ここで使うとは思わなかったわ」


 切り札の1つである『悪堕ち』、アルティスの仮面で変化がわからないようにしてあるがスピードが上がって追い付いたことはダンに知られている。それだけの効果ではないが一部といえ、アルベルトがいるパーティに知られたのは少し痛かった。

 このスキルはアルベルトに勝つ為に隠していたのだから。




 ーーーワールドクエストは失敗しました。一部を除く全プレイヤーにペナルティが与えられました。




 あら、皆がよくやってくれたわね。さぁ、帰ろうかしら。




 切り札を切る羽目になったが、ワールドクエストを失敗させられたので、機嫌良く我が家のギルドホームへ帰るのだった。




ーーあとがき


週間のSFランキングで25位に入りました!

読んでいただいている皆様、ありがとうございます!

今後も応援を宜しくお願いします!!


まだまだヨミは暴れ続けますので、お楽しみに!!





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