第92話 誘導
《メリッサ視点》
……もう、よくそんなことを思い付くわね。美世は元々優しい子だったけどなーー。
初めて会った時は小さくて優しい子で周りが私をマドンナとかを呼ぶ中で美世だけは普通に接してくれた。潤や累などもそうだけど、女子の中では僻(ひが)みや妬(ねた)みで大変な時期もあった時は人先に助けてくれたのが美世だった。
「……なんだろう、前のことを思い出しちゃって」
「どうしたの?」
「いえ、何でもないわ」
今はマミと一緒に行動していた。ヨミが考えた策で邪魔になりそうな人を舞台から外す為に動いており、これから会いに行く予定だ。
「これから会う人は誰ですか?」
「そういえば、言ってなかったわね……あ、噂をすればね」
マミと話をしていた時に目標である人物を見つけた。向こうもこっちに気付いて声を掛けてきた。
「来たか。む、そちらは初対面だな? 我はテイトクだ。宜しく頼むぞ」
第5位の銃使い、テイトクだ。大ボスの時に面識があり、メリッサもフレンド登録をしていた。マミも第5位と面識があったことに驚いたが、ヨミから頼まれたことを達成する為に気を引き締める。
「わ、私はマミです。宜しくお願いします!」
「はははっ、恐縮するな。これから一緒に戦う仲間だろ」
「ええ、ヨミちゃんは忙しいから来られないけど貴女が仲間にいると助かるわ。で、実はワールドクエストに関しての話があるのだけれども」
「む、なんだ?」
「えぇ、PKプレイヤーのことで……」
《ルイス視点》
「久しぶりですね」
「そうだな! 確か、しばらくはログインしてなかったよな?」
「はい、仕事で後輩を育てる必要があってね」
ルイスは第4位のハイドと対面していた。前のPKプレイヤー討伐戦から仲良くしており、たまに戦闘に関してのことで手伝って貰うこともあるぐらいだ。
ちなみに、ログインかログアウトの確認は普通なら出来るが、オンオフの機能が付いているのでオフにしていた。ギルドホームの件が通達された1週間前にヨミから提案されていて、これからはログイン、ログアウトの確認をされると不味いことが起きる可能性を考え、オフにしておくようにと言われていた。
「メールで言っていたそのことだが……」
「皆に伝えましたか? PKプレイヤーが狙いそうな街は……」
「あぁ、伝えたぞ。確かにその可能性が高いと判断している……あの仮面ちゃんと言う奴がいるとワールドクエストを失敗してしまうかもしれん」
やられたことを思い出したのか、苦い表情を浮かべていた。
「では、アルベルトがいるパーティにも既に伝えて?」
「既に伝えてある。そしたら、向こうは2つのパーティに分けて、こっちにはアルベルトが来るようだ」
「ほう、それなら戦力は充分ですね」
「4つの門があるから、どの方向から来るかわからないが、もし目撃したら俺に連絡するようにと仲間に伝えてある。そして、仲間からアルベルトに目撃した場所に行って貰うことにしてある」
「成る程。その情報は信頼出来る仲間だけで共有されていますね?」
「問題はない。勿論、お前のことも信頼しているぞ」
この話を知っているのはハイドとパーティの仲間に……ルイスだけだ。
「それは嬉しいですね。でも、気を付けてください。もし、向こうの仲間がこちらに紛れていたら破綻してしまう」
「わかっている」
アルベルトのことは仮面ちゃんに最強の駒としてぶつけたい。高いPSを持っている仮面ちゃんと1対1になっても確実に倒せる人物はアルベルトしかいないとハイドは考えていた。
思い通りに動かせたことにルイスは内心で笑みを浮かべていた。
これで準備は終わりました。後は任せましたよ。
ふ、ふひひひぃ、成功ね。これで戦力の配分は偏ってくれたわ。まだ大ボスを倒せていないプレイヤー達は必然的に、アルト街を守るしかない。それらを狙おうとする私達…………と誘導は出来たわね。
策を考えたヨミはメリッサ、ルイスからのメールに口元が吊り上がる。
「準備は完了したみたい。じゃ、私達も動くわよ」
「はいよ、俺達は2つのパーティに分けて、2つの門を襲うか」
「門を狙うのは無理だから、モンスターに頑張って貰わないとね♪」
「モンスターが殺されないようにプレイヤーを減らせばいいだろう。それなら俺達の得意なことだ」
「まぁ、プレイヤーを狙うなら気持ち的には楽かな」
「ふむ、この位置がバレにくいか」
「私は後方で待機よね。もし薬が足りなくなったら下がってくるのよ!」
ヨミ達も準備は終わらせており、街の外で始まるまで待機していた。これからヨミが襲おうとしている街はーーーー
「私達が狙うのはマリーナの街。厄介な敵はアルトの街に集まっているから気楽なのかもしれないけど、やられるのは駄目よ? ……うひっ、楽しみだなぁ」
『銀月の使者』が狙う街はマリーナの街。厄介なプレイヤーであるアルベルト、ヨミの戦い方を知られているテイトク、指揮が上手いハイトにはアルトの街を守らせるように誘導出来ており、全てはヨミの思い通りだーーーー
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