第90話 ワールドクエスト



「成功しました! これで風属性を付与出来たかと」


 鍛治部屋でマミの声が響き渡る。ヨミの案で武具化、防具化されたモンスターに『魔法付与』で属性を付けることは出来るのかと試していたところに、スキルが発動して成功と表示されたようだ。

 風のスキルオーブを使い、強化したのは…………キッカ。最初はドルマに付けようと思ったが、今のドルマは明らかにオーバーキルな強さを持っているから、拘束や囮にしか役に立てていないキッカを強化しようと言うことで、キッカを選んだのだ。


「……うん、付与は出来ているけどスキルになっているみたい」

「え、そうなんですか!?」


 普通の武器や防具なら属性を付けるだけなのだが、今回はキッカに風のスキルオーブを使った『魔法付与』をしたら、何故かスキルが増えた訳だ。そのスキルは……


『風防壁』

 常に纏う風で遠距離攻撃のダメージを30%減少させる。


 このスキルはパッシブなので、キッカを装備している間は遠距離攻撃のダメージを減らせるようだ。


「良い効果じゃない。普通に属性を付けるよりは役に立ちそう」

「役に立てそうなら、良かったです!」


 予想してない結果だったが、良い方向に動いてくれたので良しとする。そんな訳で、防御面でなかなか出番が少なかったキッカに役目が増えたことでキッカも嬉しそうに動いていた。

 やることが終わり、マミと一緒に鍛治部屋を出ようとした所にーーーー



 ーーー『女神の使徒』様が北の中ボス、主従エルダーを初回討伐に成功致しました!



 あら、あのパーティが北の中ボスを倒したのね。


 早い段階で中ボスを倒したことに感心していたらーーーー



 ーーーアルベルト様が南の中ボス、兄弟ルイルムをソロ討伐に成功致しました!



「は? アルベルトって、『女神の使徒』のパーティだよね?」

「もしかしたら……」

「うおい! 聞いたか!?」


 マミが何かに気付き、ヨミに伝えようとしたがジュンが言葉を切ってしまう。


「聞いたわよ」

「マジかよ、あいつらは初見でアルベルトのソロ討伐と『女神の使徒』で初回討伐をするとはな!」

「気になったけど、『女神の使徒』って、アルベルトのパーティよね?」

「ん、あぁ……マミが何かを言いたそうな顔をしているぞ? 言ってみなよ」

「ふえっ!? 顔に出ちゃっていました? えっと、アルベルトを抜いたパーティで戦ったかと」


 『女神の使徒』はアルベルトがいなくても、第2、3位とそれらに近しい実力を持った人がいるから中ボスぐらいなら問題はなかったかとマミは言いたいのだ。


「あー、成る程ね。アルベルトがいなくても、『女神の使徒』は最前線クラスのプレイヤーが揃っているのね」

「倒されていない中ボスはあと1体か。俺が見つけてやるぜ!」


 ジュンがそう言ってギルドホームから出ようと動き始める前に、また別のアナウンスが流れた。



 ーーーーワールドクエスト、『魔王配下の魔物』が発生しました。


 第二フィールドの中ボスが2体以上が倒されたことで条件を達成され、魔王配下が支配するモンスターが街へ攻めてきます。

 プレイヤーの皆様はそれぞれの裁量でアルトの街、マリーナの街に別れて防衛をして下さい。

 モンスターは街へ目指して4つの門を襲います。門の損害が50%を超えた先からプレイヤー全般に対するペナルティが出ます。損害具合でペナルティの質が変動します。

 全ての門が損害が50%以下でクリアした場合は街からご褒美を受け取れます。


 勝利条件:襲ってくるモンスターの全滅。

 敗北条件:損害が100%の門が2つ出た場合、その街の防衛に失敗します。



 また防衛戦ね、守護対象が違うけど。


 この前のイベントではNPCを守るモノだったが、今回は街を守る大きな門だ。


「ワールドクエストが発生したのか! ヨミ、今回はどうする?」

「うーん」


 ペナルティはどんなモノかわからないが、自分達にも降りかかるならイベントみたいにプレイヤーの邪魔は自分達にも損になる。レッドやイエローが協力しようとしても信じられないのだろうし、大人しくしておくのがベストだと思った所にーーーー




 ピロリ♪




「あら、こんな時にメール?」


 フレンドになっている誰かさんに協力の要請が来たのかと思ったが、違った。




「あら、………………………うひっ」

「あっ! またヨミちゃんが悪い顔をしている!」

「何か面白いことを思い付いたのかね」


 1つのメールで考えが変わった。この場にいるマミとジュンに皆を会議室に集めて欲しいと頼む。





 今回も面白いことになりそうねーーーー





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