第89話 ギルドホームの案内
会談も終わり、無事にメルナがギルドに入ってきた。次に何をしようかと考えていた所に、マミが鍛治のレベルが5になったと教えてくれた。
「今から鍛治の部屋に行けますけど、どうしますか? あ、ギルドホームの改装も終わったので先に案内をしましょうか?」
そうね、ギルドホームのことを教えて貰ってから鍛治をして貰うのもいいわね。
「先に案内して貰ってもいいかしら?」
「任せて下さい!」
最近、忙しく動いてばかりだったからゆっくりとギルドホームでのんびりするのもいいかなと思い、マミの誘いを受ける。ギルドホームの改装をしたのはマミとメリッサの2人だ。
マミなら詳しく知っているだろうと、改装後のギルドホームがどういう風に変わったか教えて貰うことに。入口である玄関からスタートするようで……
「まず、入口が2つあるわね」
「はい。扉は1つだけですが、そこにある画面で行き先を選べます」
「2つ目のギルドホームを買うと、扉だけになるけど料金は1つ目のと変わらないよね……」
今回は沢山お金を持っていたヨミが全料金を払ったが、3つ目を買う時はギルドメンバーからカンパして貰おうと誓うのだった。
「あ、あの、少ないですが……」
「いえ、今回はいらないわ。次に買う時は皆から集めるから、今は貯めて置きなさい」
「え、まだ買うのですか!?」
「入口は幾つかあった方が良いからね。次は第三の街に着いてからかな」
入口は幾つかあった方が、レッドのプレイヤーは動きやすいだろう。次の購入予定はまだまだ先なので、今は貯金して貰う。
「次にリビングね」
「あ、はい。リビングは広いだけで特別なことはありませんが、幾つかの部屋に繋がっているから行きやすいようになっています」
「部屋は……先程の会議室みたいな部屋を含めて、5つあるわね」
ギルドホームは個人部屋がある2階建てにすることも出来るが、お金が更に必要になるので今は1階しかない。その1階は結構な広さを誇っており、リビングを除けば5つの部屋が作られている。
「まず、キッチン部屋に行きましょう!」
「キッチン……もしかして、メリッサが使う?」
「料理のスキルを持っているみたいですが……マイナススキルになっちゃっていますよね? だからーー」
マミがそう言いながら、キッチン部屋に繋がる扉を開くと、コンロ等の料理道具が2つ並んでいるのが見えた。
「私達も普通に料理もしたいから、分けました」
「うん。キチンと分けた方がいいわ、良い仕事をしたわね」
「ヨミちゃん、その言い方は酷いんじゃない?」
キッチン部屋にはメリッサがいて、ヨミの言葉に頬を膨らませていた。
「分けるのは当たり前よ。メリッサの作る物はほぼ全てが毒性を持っているんだから。同じ鍋を使って、毒が移ったら困るじゃない」
「毒性がないのも作れるわよ!」
「それって、トリモチとかでしょ。せめて、食べれる物を作れるようになってから言ってよ」
「ぷくー」
メリッサが料理のスキルで出来る物は全てが食べられない、食べたら死ぬか毒のダメージを受ける物ばかりだ。
食べれる物を作れないメリッサはヨミの言葉に頬を膨らませて黙る。
「……その鍋、放ってもいいの?」
「え、これ? もう少し煮込みたいよねー」
「黒い煙が漏れ出ている時点で駄目じゃない」
煮込んでいると言い放っている鍋から黒い煙が出ているから、料理としては既に失敗だろう。なのに、メリッサはまだ煮込むと。
「もうキッチンはいいや……爆発する前に出ようよ」
「は、はい」
「爆発はしないわよ」
まだ煮込もうとするメリッサを無視して、キッチン部屋から出る。
「まったく、メリッサは……」
「あははは……では、次は研究室に行きます?」
「研究室ね、ルイスが使うわね」
次に案内されたのは研究室。マミの説明によると、研究室は薬師と錬金術師が使う設備が揃っているらしい。研究室に入ると意外な人がいた。
「あら、カロナ? 貴方も薬師か錬金術師のどっちかを?」
「あ、ヨミちゃんだ♪ そうだよ、薬師もあるよー」
「へぇ、見た目に合わず理系なのね」
カロナの姿はいつも付けている病院で使うマスクにバツが書かれており、パンクな黒い服を着ている。ライブに出ていそうなキャラで薬師の職業を持っていることに驚く。
「あは♪ 薬は色々と役に立ちそうだからね♪」
「薬も使うのね……なら、これをあげるわ」
「これは?」
この前にNPCの露店で買った魔道具のナイフ、ポインズナイフを渡す。テイトクと組んだ時に1度だけ使っただけで、その後はアイテムボックスの隅で埃を被ったまま放置されていた物だ。
「ふぅ~ん、ゴメン。多分、使う機会はなさそうだからいらないかな♪ ルイスさんに渡したら?」
「ルイスね、いるかな?」
「そうだな。戦闘ではなく、研究用で使うかもしれないが構わないか?」
カロナと話していた時にこっちへ近付いていたルイスが話に加わる。
「構わないわ。私は使わないし」
「なら、ありがたく貰おう。代わりにこれを渡そう」
「うん? この薬は……デメリット付きの回復薬ね」
ルイスから貰った薬はデメリット付きだが、普通のより効果が高くなっている。
毒に侵されたポーション レア度:B
HPの30%を回復する。しかし、毒【弱】状態を受ける。
【弱】の毒は1分間、5秒ごとに10ダメージを受ける。纏めれば、120ダメージを受けるが、HPの30%も回復するのは結構高い回復力だと言えるだろう。
私のHPはそんなに高くないから、30%回復しても120ダメージを受けるなら効果があまりないだろう。
自分のHPを参照すると使えないが、HPが高い職業になら使えるだろう。せっかく、渡してくれたから有り難く貰っておくのだった。
「ふぅん、研究室ね。まだ設備が少ないわね」
「道具もお金が掛かりますからね」
「お金を貯めるためにPKをどんどんとして行かないとね♪」
「そうね」
また一緒に組んでPKをする約束をしてから、部屋を出た。
「隣の部屋が裁縫室です」
研究室を出て、すぐ隣にある部屋が裁縫室だ。そこを使う人はマミと……
「メルナ、どう?」
新参者のメルナだ。
「ヨミちゃんね。…………貴女がPKギルドのボスだったことは驚いたけど、ギルドに入ったからにはちゃんと働くわ」
「えぇ、宜しくね。勿論、裁縫師で頑張るならイエローやレッドにもならなくてもいいし」
「それは助かるわ。正当防衛以外のPKはちょっと抵抗があるよね」
「大丈夫ですよ、私もいますから!」
「貴女も普通のプレイヤーだものね。ここは不思議なギルドよね」
ヨミは言いたいことを理解していた。このギルドには普通のプレイヤー、イエロー、レッドが揃っているのだから。
「そうだ、そのお嬢様の服、アップデートが出来そうよ。でも、材料が足りないわ」
「なら、私が取ってくるからあとでメールで必要な物と場所を送っておいて」
「わかったわ」
しばらく、メルナと話をしてから裁縫室を出た。最後の部屋、それは勿論の鍛治をする部屋だ。
「ここが鍛治部屋です!」
「うん、ここも設備が少ないわね」
「うん……でも、金床があれば基本的なことは出来るよ!」
「この前もナイフに鉄屑を当てて唱えるだけだったものね」
「うん、でも『魔法付与』をするにはこの金床が必要なの!」
『魔法付与』、鍛治のスキルレベルが5になれば覚えるスキルで、武器や防具に属性を付けることが出来る。ヨミが試したいのは…………
「私のテイムしたモンスターを武器化、防具化すれば、属性を付けることも可能じゃない?」
「ふえっ!? それはやってみないとわからないです……」
「取り敢えず、やってみよう」
ヨミとマミは鍛治部屋で思い付いたことを試すのだったーーーー
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