第86話 面接



 ヨミが面接に指定した場所に向かっていた。指定した場所はヨミが初めてドルマをテイムした、大きな洋館である。

 あそこなら、今のプレイヤー達にとっては得がない狩場になっていて、ここに来るプレイヤーは珍しい。だから、PKギルドの面接をするのに相応しい場所と言える。

 さっき、リーから連絡が来ていて、もう着いているようだ。


「うひっ、普通のプレイヤーみたいだけど、どんな人なのかしらね」


 ヨミは仮面を被り、奥の部屋に向かう。モンスターはレベルの差が開きすぎて、向こうがこっちを見つけることは出来ず素通りになっている。驚かせる為に静かに扉を開け、『無音・断』のスキルで扉が開いた音は消えていた。


 角に人影があるわね。……ん、何か話している?







「まだ来ないの?」

「そろそろ来る筈だから、待ってくれ……頼むから変なことは言わないでくれよ? 僕にとっては上司になるんだから」

「もう、PKギルドに入ったと聞いて大丈夫なのかと心配はするわよ! しかも、レッドがいると言うし……」

「大丈夫だって! ギルド長は他人には容赦しないけど、仲間には優しいよ?」

「他人って、戦えないNPCも殺しているんでしょ?」

「あぁもう、そうだけど……」

「だから、私は会って見極めたいのよ」


 リーの友達はリーが心配で、どんなギルドなのか見極める為に入りたいと言った。もし、友人を預けられそうにないなら無理矢理にでもそのギルドから引き離すつもりでここへ来ている訳だ。


「ふぅん、この子がギルドに入りたいと言った……」

「ふぎゃぁっ!?」


 真っ暗で会話に夢中になっていたので、ヨミがリーとその友達の背後に回ることが出来た。こっちを振り向いたその友達はパクパクと言葉にならないでいた。


「な、なぁ」

「うひっ、初めまして。私がPKギルドのーーーー」


 自己紹介をしようとした時、顔が良く見えるようになると言葉が止まった。






「…………メルナ?」

「な、何故、私の名前を……リーに?」

「い、いや、名前はまだ言ってなかったが……」

「……こんなこともあるんだ。意外と人の繋がりは狭いんだね。何故、名前を知っているかって? それはーー」


 ヨミは仮面を外し、認識が出来るように戻すと悪戯が成功したような表情を浮かべていた。





「フレンドなんだから」

「なぁっ!? よ、ヨミちゃんーーーー!?」


 メルナは目の前にいる人を知っている。何故なら、ヨミが着ているお嬢様の服を作ったのはメルナ本人なのだから。

 ヨミがここに来ていて、怪しげな仮面を被って来たことから、ギルド長が誰なのかメルナは気付いた。


「よ、ヨミちゃんがPKギルドのギルド長?」

「そうよ。まさか、リーの友達がメルナだと思わなかったわ」

「知り合いになっていたのか? しかし……正体を現しても良かったのか?」

「まぁ、知らない人じゃないし、この服を作ってくれたのがこのメルナよ。メルナなら裁縫師として、ギルドに入れても構わないと思っているわ」


 面接は数秒で終わり、あっさりとギルドへの入隊を認めると言うヨミ。だが、それを止める者がいた。メルナだ。


「ま、待って。まさか、君がギルド長だと思わなかったわ……。聞きたいことがあるけど、答えてくれるかしら?」

「ん、何かしら?」

「……ヨミちゃんはレッドなの?」

「そうよ。それで?」


 メルナが聞きたいのはそんなことではないとわかっていたので、聞き返す。


「なんで、PKをしようと思ったの? ヨミちゃんがあの仮面ちゃんなら強いし、普通にやっても上位プレイヤーになれた筈よ」

「それが聞きたいこと?」

「えぇ……」


 ここは感情のままに話してもいいが、それは全てが正しい答えでもないから悩んだ。


「うーん、ストレス発散と言う理由もあるけど、大部分は言ってもいいかは私では判断出来ないわ。仲間と相談するから待ってくれる?」

「ストレス発散って……」

「ん、んん? 仲間って、最初からいた3人の?」

「えぇ、ジュンが発端でね。待ってて」


 運営が関わっていることを話してもいいか判断出来なかったから、近しいジュンに聞いてみる。









 ジュンと通話して、結果は……メルナをギルドホームへ招待して、皆が集まっている所にジュンが説明することになった。








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