第84話 犯罪者
死体を片付けて、建物を何年も使われていないようなボロボロさに破壊していく。
「劣化具合までは流石に偽装は難しいが?」
「そうね……いっそ、モンスターに襲われて滅んだ! と言うことにしようかしら?」
「……ヨミ、本当は適当でなんとかなるだろと思って動いているよな?」
計画を立てて下準備をするヨミだが、1つの漏れが見つかるとあっさりと計画を捨てて、アドリブで進めていく癖がある。そうしないと会社で苦労してしまうから、身に付けたスキルの1つ、『臨機応変』だ。
「いいじゃない。なんとかなるんだから」
「はぁっ、まぁいいか。ゲームだし」
ヨミが否定をしなかったことにボウは呆れるが、ギルド長として認めたからヨミがやることに着いていくだけだ。
しばらくすると、強襲班が帰って来た。
「おーい、終わったぞ」
「戦いは物足りなかったが、きっちりと仕事は終わらせたぜ」
「馬車ゲットしたよ♪ あと、ちゃんと1人だけ逃がしてあげたから、翌日にはレッドになるよね?」
「おかえり。ちゃんとレッドになるから安心しなさい」
仕事を終わらせ、全員が1人以上は殺したので翌日になれば指名手配されて、レッドになるだろう。
奪った馬車の中身を見ると、薬や食材が多めで他にモンスターの素材も入っていた。
「よし、中身はあとでギルドホームに移しておいて。見せたいモノがあるから、待ってて」
「見せたいモノ?」
ヨミは自分のステータスを弄り、称号欄の所にある1つの称号を見せる。その称号とは…………
『犯罪者』
NPCを殺し、指名手配されてレッドになった者に贈られる称号。
NPCの好感度が大幅に下降する。
レッド同士でパーティを組むと全てのステータスが1.3倍上昇する。
「これは!?」
「へぇ、レッド同士で組むとステータスが1.3倍も上がんのか」
「成る程♪ だから、私達をレッドにしたかったのね!」
「そうよ。最初は良い効果が付くとは思ってなかったけど、これは有用よ。あとで、レッド同士だけじゃなくて、普通のプレイヤーにイエローも一緒にしても効果は発揮するか試さないとね」
「確かに、調べておく必要があるな」
こんな効果が付いているのは、レッドになった状態で死んだ時のペナルティが酷いレベルだからだろう。
そのペナルティのせいでレッドどころかイエローさえも少ない。今も裏掲示板を覗いているが、新しく生まれたイエローやレッドはまだいない。
「もっとレッドの仲間が増えればいいけど、新参者がいないから難しいわね」
「イエローやレッドにもならない人もいるけど、理由があるから仕方がないよね♪」
「なら、スカウトするかぁ?」
「難しいだろ。なりたいと思ってもないのにイエローやレッドに堕ちてくれる奴がいる訳がない」
普通に考えれば、犯罪者から犯罪者になろうと誘われても断れるだろう。そんな話をしていた時、死体を埋め終わったリーが話し掛けてきた。
「あ、あの! 僕と一緒に始めた友達がいるのですが、ギルドを作ったと教えたら入りたいと返事が来て……」
「あら、私達のギルドはPKギルドなんだけど、向こうは知っているのかしら?」
「はい、知ってなお、入りたいと言っていました。多分、僕のことを心配していると思う」
「うーん、……あ、その人って、最初の頃に出ていた友達?」
「あ、はい!」
普通なら断った方がいいかもしれないが、ヨミは1度だけ会ってもいいかなと思った。勿論、仮面ちゃんの姿で。
「なら、面接ね。私は仮面を被って会いに行くから、指定した場所に来てと伝えて。勿論、リーも一緒でいいわ」
「いいんですか! ありがとうございます」
「名前……いえ、職業だけ教えてくれたらいいわ。あとは本人に直接に聞くわ」
「職業は裁縫師と槍士です」
裁縫師に槍士ね。なんか、聞いたことがあるような気がするけど……まぁ、会ってみればわかることね。
ヨミは指定する場所と日時を決め、リーに連絡して貰った。面接みたいなことをすることになったが、今は村のことを進めなければならない。
「よっし、ギルドホームと村のメンバーに分けて進めるわよ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます