第82話 蹂躙



 ーー平和だった村に騒ぎが起きる。村で1番大きい屋敷が突然に崩壊し、中央の広場で血の水溜まりが次々と出来上がっていた。


 その騒ぎを起こした者は勿論ーーーー




「うひっ、『乱月光波』の1発だけで屋敷があっさりと崩壊するわね。2人は…………うひひひっ!! 楽しんでいるわね!」


 仮面を被ったヨミが村長の屋敷を破壊して、一緒に来たジョーとカロナが中央の広場で暴れていた。

 広場に戦える衛兵や冒険者が30人程集まっていたが、2人のPSに着いていけず1人1人と倒れていく。アルトの街やマリーナの街だったら、少数では数の暴力で磨(す)り潰されていたかもしれないが、この村の人口が100人未満で殆どが戦えない一般人。

 村の周りが岩壁に囲まれているのもあり、滞在している衛兵も少なかった。


「あはははっ!! 楽しぃわね♪」

「そうだな! 雑魚が、相手にならねぇんだよぉぉぉぉぉ!! もっと楽しませて見せろぉぉぉぉぉ!!」


 テンションが高く、理性を捨て去って本能だけで戦っているようで、そうでもない。2人は連携を取って、後ろをカバーし合いながら殺しを楽しんでいるのだから。


「楽しむのはいいけど、逃げようとする人も殺さないと駄目だから、さっさと皆殺しにしなさい!」

「おう、わかっているぜ!」

「これぐらいに減ったなら、任せていい? 私も仮面ちゃんと殺し回りに行くから♪」

「任せとけ!」


 衛兵と冒険者の数が減り、これぐらいならジョーだけでもやれると判断して、カロナは周りで逃げ惑う人を襲いに行く。

 暴れまわるヨミ達に恐怖の表情を浮かべながらも、一般人を出来るだけ逃がせるように命を賭けているがーーーー




「うははは! 弱い弱いぃぃぃぃぃ!!」

「ひっ! お、お前らは何で!」

「何でだぁ? 殺しを楽しみたいからだよぉぉぉぉぉ!!」

「ッ、こ、この異常者がぁぁぁぁぁ!!」


 衛兵の隊長が怒りで恐怖を抑え込み、ジョーに突きを放つが…………




「さてぇ~、充分に吸ったかぁ? 『乱舞血裂』」




 ジョーのスキル、『乱舞血裂』は斬った時に出血した量で威力と範囲が変わっていく。ジョーの双剣が赤く光り出すと血で出来た刃が鞭のように伸びて、周りを切り裂いていった。その技で生き残っていた衛兵と冒険者がバラバラになっていく。隊長も例外でもなく…………


「き、貴様……地獄に、落ちろ……」

「運良く即死はしなかったか……地獄か、あるなら行ってみたいな。あははははは!!」








 小さな民家で…………


「うひっ、隠れても無駄よ?」

「ひぃぃぃ!! 命だけはーー」


 命乞いをする男性は嵐が過ぎるまでは隠れていたが、ヨミに見つかって首を落とされていた。


「隠れていたら助かると思っていたのかしら…………おっと」


 ヨミはわかっていた。もう1つの反応を見つけており、クローゼットに向かう。クローゼットを開き、その床を剥がすと…………


「ばぁっ、いたわね」

「きゃぁっ! あ、あぁぁぁ……ぱ、パパ!!」

「パパならもう死んじゃったわよ」


 さっきの男性はわかりやすい場所に隠れていた。つまり、見つけにくい場所に娘を隠し、パパである男性は自分が簡単に見つかることで囮の役目を請け負っていた訳だ。しかし、気配に敏感なヨミには見つかってしまった。


「首を斬られて死ぬのがいいかしら?」

「ひっ、痛いのは嫌……」

「じゃ、これで殺してあげるわ。『魚群アロー』」


 死にたくないではなくて痛いのは嫌と言ったので、痛みも感じないまま死なせてやろうと、『魚群アロー』を発動した。


「あ、あれ……眠く……」

「うひっ、永い眠りをプレゼントよ」


 体力は少なかったので、1発で死を迎えた少女。死体になった少女を放って、他に隠れている人はいないか探していくヨミ。






 カロナは入口へ逃げていく人を短距離転移のスキルで追い詰めて、ノコギリで脚を斬って逃げられないようにする。


「あはっ♪ 逃がさないよ~」

「お、殆どは殺し終わったのか?」

「えぇ、隠れているのを除けば、動ける人はいないと思うよ。入口に向かう人はもういないみたいね♪」

「なら、後は足が無い奴らだけか」


 入口に逃げた人達は既に入口班によって、片付けられている。1人も通さなかったから、外に逃げた人はいない筈だ。

 あと、生きている者はカロナによって脚を斬られて逃げられなくした者と隠れている人だけ。カロナとジュンが倒れている人にトドメを刺していたら、ヨミがゆっくり歩いてくるのが見えてきた。


「ヨミちゃん!」

「こらこら、メリッサ。仮面を被っている時は仮面ちゃんと呼んでよ。隠れている人は大体片付けられたと思うけど……ボウ、『気配察知』で調べてくれるかしら?」

「わかった」

「入口の方はどうだったかしら? メリッサとリーがいるから外に逃げた人はいないみたいだけど」


 ボウ以外が入口に集まり、ヨミが成果を聞いてきた。入口班も問題はなく、作戦は成功したのでヨミはニッコリだ。


「いいわね。後はボウが来るまで待ちましょうね」


 ボウが村を回り、生きている人の気配は自分達しかいないのを確認出来、逃げた人はいない。村にいた人を全滅させることに成功したと喜び合うのだったーーーー








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