第80話 『銀月の使者』



 もう1つのギルドホームを建てに街の外へ行こうとしたが、ジュンに止められる。


「待った、俺達のギルドはどんな名前にするんだ?」

「そういえば、まだ決めていなかったわね。何か案があるの?」

「俺らはPKギルドだからな……『ブッ殺し隊』とか?」

「最低なネーミングね。却下!」

「そのネーミングは無いわ」

「そうですよ。これだから、一生下っぱは……」

「冗談にそこまで言うか!? って、お前らなら冗談だとわかっていただろ……」

「冗談でも、頭が悪いネーミングは無いわ♪」


 カロナまでも突っ込まれて膝を地に付けて落ち込むジュン。


「お前らは仲が良いのだな……いいから、さっさと名前を決めようぜ」

「そうね。でも、ギルド名は有名になれば何処までも広がるから、迂闊な名前には出来ないわよ。マミは何が良いかしら?」

「ふえっ!? わ、私ですか……えっと……、『ウェアウルフ隊』とかは?」

「ウェアウルフ……人狼だよね?」

「う、うん。敵を騙して、隙を見つけて噛み殺す。だから、ピッタリかなと思って」


 PKギルドとしてはアリかもしれないが、ヨミは皆を見回すが人狼の軍団と言うには少し外れているかなと思った。

 確かに敵を騙したり、不意打ちをして殺し掛かることもあるが本能で襲う獣ではなく、人として殺意を持ってやっているから違うと感じた。


「うーん、私達には少し違うかな」

「そうですか……」

「じゃあ♪ 思い切って『魔王軍団』は?」

「既にいるじゃない。だから、駄目」

「えー」


 カロナが言った魔王は実際にいるので、そのネーミングは被る可能性があるから駄目だ。


「ド直球なのも、良くないだろう? だから、厨二臭くしてPKギルドであることを隠すのはどうだ?」

「……ふむ、それはいいかもね。ギルド名からバレるのは色々と勿体無いわね……ね? ルイス」

「確かに。第4位の懐へわざわざ入ることが出来たのに、それを台無しにされるのもね」


 そう、ルイスはある事件から第4位のハイトと仲良くなったのだ。ルイスがハイトを利用する為に繋がった絆だから、切れても問題はないが、何も得ずに切れるのは勿体ない。


「厨二ね……夜、闇、使徒とか付ければ、それっぽいよね?」

「あはっ、それなら私に任せて♪ んふー、『銀月の使者』! 夜月もいいかなと思ったけど、ヨミちゃんの髪から銀月イメージしてみたの!」

「月は何処から出たんだ?」

「なんか、髪が月の光みたいにキラキラと輝いてない? だから、銀月なの♪」

「えっ?」


 カロナに言われて、皆が髪に注目する中でヨミも髪を調べると……


「あ、気付かなかった……最初はそうでもなかったよね?」

「う、うん。確かに良く見れば輝いているわね。最初は普通だったのに……」

「あ、あの魔法のせいじゃねぇの?」


 一緒に戦って、月光魔法を見せたことがあるジュンだけが月光魔法に関係があるんじゃないかと。


「あー、あるかもね。それよりも、そのネーミングだと私が皆を従えているような感じじゃない?」

「構わないじゃないか? お前が連中を集めただろ」

「アタシもそのギルド名がいいわ」

「他の案よりは良いかと」


 ジュン達はヨミがギルド長に指名したのだから、そのギルド名でも問題はなかった。そして、他の人も……


「俺も構わねえよ。どうせ、お前の動きに合わせることになるだろう?」

「僕もいいと思う」

「『銀月の使者』か……気に入った!」

「私の案だし、問題はないよ♪」

「私もそのギルド名が良いです!!」


 反対意見はなかったので、ギルド名は『銀月の使者』に決まった。


「もう、いいわ。『銀月の使者』ね、最初の活動を話すわ」


 自分を冠したギルド名に恥ずかしさを感じるが、すぐ切り替えてこれからの活動を説明する。






「まず、街外にもギルドホームを作る。その為にーーーー村を潰すわ」






 第一フィールドよりも広くなっている第二フィールドでは、休憩地として活用出来る村が幾つかある。ヨミはその1つの村を潰して拠点にするのが『銀月の使者』での最初の活動になるーーーー







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る