第77話 カフェで雑談
「この指名手配って、お前だよな!?」
「そうだけど、それが?」
「普通なら、指名手配にされたら街の中に入るのも難しくなるのですが……」
指名手配になった日の夜、初日に寄ったカフェへジュンによって集められていた。
「もしかして、レッドになったの……?」
「まぁ、なっているよ。普通のやり方でじゃないけど」
「うん? それはどういうことだ?」
「レッドになる条件は知っているよね?」
「確か、NPCを殺すだけでは駄目でしたね。目撃者に見られ、その目撃者が翌日まで生きていたら指名手配されて、レッドになるのでしたね?」
そう、目撃者がいなかったらレッドにはならない。レッドになりたくないなら完全犯罪をすればいいのだ。
しかし、ヨミが仮面を被った状態での指名手配がなされている。
「この指名手配はわざとなの」
「わざと……?」
「ある理由があって、レッドになる必要があったのよ。でも、指名手配は似顔絵があるでしょ? 手書きとはいえ、私の顔を書かれちゃうとアルティスの仮面で名前を隠せても顔バレしちゃうのは望ましくないのよ」
もしバレるならもっと盛大にバレたい。人が沢山いる場所で、皆を驚かせたい。だから、指名手配ごときでバレるのはつまらないと思って……
「だから、仲良くなった貴族に協力して貰ったのよ」
「貴族の友になったのは聞いたが、そこまでか……もしかして、その貴族はヨミが人殺しをしたのを知っているのか?」
「えぇ、だから暗殺依頼が来たもの」
「そんなのあるの!?」
ゲームの世界でNPC殺しをNPCから依頼されるとは思っていなかったメリッサは絶句していた。
「このゲームのNPCはAIが高いのは知っていたが、そこまでだったか……」
「暗殺依頼は……あ、口止め料を貰っているから詳しくは話せないわね。それよりも、指名手配のことね。レッドになりたい。でも、まだ顔バレはしたくない。だから…………仮面を被った状態に、名前もニックネームで指名手配して貰おうと考えた訳よ」
「その手配をしたのが、協力者の貴族ですか?」
「そうよ。そのお陰で、私はレッドでも堂々と街を歩けるって訳」
素のヨミと指名手配されている似顔絵では全く違いすぎるし、名前も隠せているからバレる要素がない。いや、ルファス男爵がヨミを裏切ればバレることになるが……もう共犯みたいな状況になっているから、こっちがルファス男爵の不利になるようなことをしなければ大丈夫だろう。
「罪名が貴族殺しですか」
「うん、丁度良い罪があったし」
「わかったよ、詳しくは聞かねえ。でも、どうしてレッドになりたかったか教えてくれんか?」
「理由は2つあるけど、1つは秘密。秘密にした方が皆が楽しめるもの」
「はいはい、もう1つは?」
「ーーギルドに関することよ」
ヨミはギルドホームが作れるようになったら、すぐギルドを作るつもりだ。勿論ーー
「犯罪ギルドを作るんだな」
「当たり。私達だけじゃなくて、仲良くしているPKプレイヤー達に闇商人のマミも入れるつもりよ」
「それでレッドになりたかったのは……」
「まぁ、格付けね。犯罪ギルドと言えば、強い者に従うみたいなこともあるじゃない? それか犯罪度? が高いとか」
「ヨミならイエローのままでも問題はなさそうだが、ヨミがしたいようにやればいいさ」
「えぇ……あ、ルイス。あの薬を見つけたと聞いたけど?」
鳴海と朝御飯を食べた時に聞いた話を思い出し、話を変えた。
「ありますよ。幾つ必要ですか?」
「そうね、4人に5個ずつは持たせたいから20個頂戴」
「わかった。あとで渡しておこう」
「ギルドが出来たら……何かするつもりなんだ? 俺達はいつから動けばいい?」
「……私が決めちゃっていいの?」
「ヨミが1番楽しんでいるだろ? なら、俺達はヨミが指示をしてくれた方が楽しそうだと思っただけだ」
「ギルドが出来たら、ヨミにギルド長をして貰うのも良いですね」
「なら、私が副ギルド長になってヨミを手伝うね!」
「あはは、ありがとうね。ギルドが出来るまではまだイエローにもならないでくれるとありがたいわね」
ヨミには頭の中では既にシミュレーションが出来ている。成功したら楽しいだろうとワクワクする。
「うひっ、楽しいわね!」
ヨミは悪どい笑みを浮かべて、注文したパフェを食べるのだったーーーー
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