第76話 報酬と企み
暗殺を終わらせたヨミはルファスへ報告をしていた。
「終わりましたよー」
「怪我は……なさそうだな。すぐ確認をするからしばらく待ってくれ」
ヨミに怪我がないことにホッとし、確認する為の人材を送らせる。場所はそんなに離れてはいないので、すぐ確認は終わるのことでゆっくり待たせて貰うことに。
「ヨミ、依頼を完遂してくれて助かった」
「あら、確認はまだでしょ?」
「それはそうだが、お前が失敗するとは思わなくてな」
応接室で確認が終わるまで待っていたらギンシが入ってきて、御礼を言ってきた。
「随分と私の腕を信用しているのね?」
「腕もそうだが、仕事に対する向き合い方をな」
「…………まぁ、受けた仕事はきちんとするつもりだし」
ヨミはブラックな会社にいた時から受けた仕事は諦めずに最後までやり遂げてきた。だから、その癖で受けた仕事は途中で投げ捨てる気にはなれないだけだ。
数十分は経った頃に、ルファスが応接室へ入ってきた。
「確認出来たようだ。汚れ仕事をやらせて、すまなかった」
「いいのよ。受けると決めたのは私だし、謝るよりは御礼の方が嬉しいわ」
「ははっ、そうだな。ありがとう。そっちがヨミの素か? 随分と大人っぽいな」
「……まぁ、28歳だしね」
「ん、何か言ったかい?」
「うぅん、何でもないよ。ルファスお兄ちゃんが無事でいてくれるなら、私は嬉しいの♪」
「ぐはっ!」
大人っぽいとわかっていながらも、甘え声で笑顔を見せるとルファスは胸を押さえて呻くのだった。
「はぁっ、ルファス男爵。確認が終わったのであれば、報酬を渡してはどうですか?」
「あ、ああ。そうだな。ヨミ、着いてきてくれるか?」
宝庫室があるとのことで、お金の1000000ゼニに加えて、宝庫室にある宝を1つだけ譲ると。
「え、どれでもいいの!?」
「そうだな。家宝は別の場所にあるから、ここにある物でSSSランクの国宝級はないがそれなりには価値はある物ばかりだぞ」
「別館なのに、それなりの価値がある物が……?」
「そりゃ、本館だと人が結構入るからな。パーティなどで」
人が多く入る建物より、別館みたいにアグネウス男爵関係しか入らない建物の方が安全の考えで、家宝や宝庫室は別館にあるのだ。
「そうなんだ……色々あるのね」
「武器、魔道具、スキルオーブなどもあるからゆっくり見て決めるといいぞ」
全てを一つ一つ見るだけでも時間が掛かるので、欲しい物を考えてみる。
武器や防具は別にいらないよね。魔道具は……使う機会が少なそうだからスキルオーブが1番良いかしら?
スキルオーブに絞り、ルファスにオススメを聞いてみる。
「うん、スキルオーブでオススメか? 難しいな……」
「ヨミの場合はプレイスタイルが独特なので、ルファス男爵のオススメを勧めても合わないかもしれない」
「すまないな……オススメではなく、珍しさでいいならこれはどうだ?」
そう言って、ルファスが持ってきたスキルオーブは2色の輝きを放っていた。
「他のは1色なのに、これは2色?」
「このスキルオーブはこの世でも珍しく、2つのスキルが込められている。しかし、このような特殊なスキルオーブは人を選ぶ」
「え、人を選ぶって、どういうこと?」
「俺達は適合出来ず、どんなスキルが込められているかは知らないんだ。鑑定をして貰ったことはあるが、結果は同じだった」
「……もしかして、貸して貰って良いかな?」
「あぁ、構わないよ」
ルファスからスキルオーブを受け取り、鑑定してみたらーーーー
【プレイヤー専用】
と出てきた。ヨミにはスキルオーブの内容を読めていた。
「やっぱり。これは私達、渡り人専用のスキルオーブだわ」
「そうなのか!? そういうのもあるのか……」
「えぇ、皆には秘密だけど、アルティスの仮面もそうなの。現地人では全ての効果を発揮出来ない物なの」
「む、そうなのか。もし、現地人が奪えても使うことは出来ないということか?」
「奪えるような物でもないから安心するといいわよ」
ギンシの心配はわかるが、それは無用である。強奪は不可能になっているし、ヨミが装備した状態でプレイヤーやNPCに殺されたらアルティスの仮面は消滅する。なので、他人に奪われる可能性は0だ。
「あら、このスキルオーブは渡り人でも更に条件があるみたい。ふむふむ、面白いスキルね……」
「ヨミには使えそうか?」
「えぇ、私は条件をクリアしているから使えるわ。これを貰ってもいいのかしら?」
「問題はないぞ。ここにある物なら何でもいいと言ったからな」
報酬はこのスキルオーブに決まり、ヨミは内容を読んで企みを思い付いていたのでルファスにお願いをしてみる。
「ルファスお兄ちゃん、ちょっとお願いがあるけどいいかな?」
「うん? もしかして、他に欲しい物があったかい?」
「うぅん、物が欲しいじゃなくて……」
ヨミの企みに必須であるお願いをしてみたらーーーールファスとギンシに驚かれた。
夜が明けて、アルトの街に1枚の指名手配が広まった。手書きである似顔絵には…………仮面を被り、周りがモザイク風になっている人物が書かれていたのだった。
名はーーーー仮面ちゃん。
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