第71話 墓場の中ボス 中盤




『誓いますか?』




『ーー新郎、新婦を幸せにすることを誓いますか?』




『ーー新婦、新郎を支え続けることを誓いますか?』




 変な声が始まったのと同時にヨミとジュンは動けなくなった。更に声も発することも。


 やっぱり、まだ先があったわね。


 第二フィールドの中ボスにしては弱すぎると思っていたが、この展開は読めていなかった。長い宣言が続いたが、これから締めに入る所だった。




『ーー死者になろうが、お互いは一蓮托生であることを誓いますか?』

『『誓います』』


 今まで1つの声が先行する形だったが、それに返事を返す2つの声があった。その声は勿論ーーーー




 なっ! 倒した新郎と新婦が……一蓮托生って、そういうこと!?




 ヨミとジュンが動けない中で、倒した筈の新郎ゾンビと新婦ゾンビが宙に浮いて…………2人が重なっていく。

 そう、融合しているのだ。


 融合し、人型のゾンビだったモノが崩れて変わっていく。戦いに相応しい姿へーーーー


 身体は2人の体積を超え、大きくなり手足がない銅像みたいになっていく。そして、鋭い爪を持った手が4つへ増えて浮いている。

 顔の部分は新郎と新婦の頭がくっついて、2つの顔を持っている化け物になった。




『ゴギャァァァァァァァァ!!』




「っ、動けるようになったか! って、融合してパワーアップかよ!?」

「……レベルが上がっているわ」

「む……レベル30!?」



夫婦レイスター レベル30



 名前にレイスが入っている所から、ゾンビではなくて霊体のモンスターへ変わっていることがわかる。


「ヤバイな、体力バーは2本と少なめだが……勝てんのか?」

「試してみるけど、物理はあまり効果がなさそうね」


 ヨミはナイフを数十本も一気に取り出して投擲するが……


『ゴガァル!』

「アレだけのナイフを捌ききった!?」


 身体へ届く前に浮いている4つの手で打ち落とされてしまった。ナイフを投げるのを止めると、2つの手が頭の上へ持っていき、黒い弾を生み出して大きくしていた。


「げっ、絶対に爆発してドームみたいに広がる奴だろ!? 『レイ』!」

「『夜天月斬』!」


 ヨミもヤバイと感じて、動作の中断させようと黒い刃を飛ばすが残っていた手で止められてしまう。体力バーが少し減ったから手にもダメージを与えられるとわかったが、攻撃を中断させる程でもなかった。




『ダークインフェルノ』




 直径1メートルはある黒い弾がヨミとジュンに向けて撃ち出されて…………


「ッ、仕方がない! キッカァァァ!!」


 ヨミは身を切る想いで、キッカを先行させて囮にした。本来の着弾する場所へ届く前にキッカが途中で当たることによって…………夫婦レイスターとヨミ、ジュンの中間で爆発が起きた。



『キッカは戦闘不能になりました』



 キッカは戦闘不能になったが、そのお陰で2人とも無傷で生き残った。テイムモンスターはやられても、この世界の時間で1日経てば復活する。しかし、ヨミは防御面でステータスが下がってしまった。

 もし、さっきのが当たったら間違いなくやられるだろう…………


「すまない! 助かった! アレは多分、次を放つまで時間が掛かるタイプと読んだ!」


 ジュンは今までやってきたゲームの経験から、『ダークインフェルノ』は次に放つまで時間が掛かるタイプだと判断した。勘なので当たっているかはわからないが、ポンポンと出せる技ではないと信じたい。


「さっきのまた来たら防げないから、短期決戦よ!!」

「ああ! まずは邪魔な手を何とかする必要があるぞ!?」

「いえ、手にもダメージは受けるから纏めてダメージを与えてあげるわ!!」


 夜天月斬は物理よりなので、少ししかダメージを与えられなかったが、ヨミには夜なら2倍の威力になる月光魔法がある。


 月光魔法無しに挑んでいたら負けていたかもね……


 夫婦レイスターは物理に強い中ボスなのは間違いはない。物理だけでもダメージは与えられるので時間を掛ければ倒せなくはないが……時間を掛けすぎると、また『ダークインフェルノ』を撃たれてしまう。


「私の動きに合わせて、手を本体の近くに寄せられるように動いて!」

「キツイ注文だな!? やってみるけどよ!!」


 月光魔法で満遍(まんべん)なく、ダメージを与える為に身体と4つの手を近くに集めるように動く。ヨミは取って置きのMP回復薬を飲みながら、2つの手だけに夜天月斬を放ち続けてタゲを集める。


「うおおおぉぉぉぉぉ!!」


 ジュンも2つの手を攻撃して、タゲを取っていた。充分にタゲを取っていると判断したヨミは合図を出した。




「今よ!」




 お互いが近付いて、2つずつの手が追ってきて交差させる。そこがちょうど身体にも重なったのを確認しーーーー


「魔法で消し去ってあげる! 『乱月光波』!!」

『……!!』


 夫婦レイスターはヨミの動きからわかったのか、防御の動きを見せてきた。4つの手がなんと、形を変えて4枚の黒い壁みたいにして重ねていた。


 まさか、そんなことも出来たの!?


 もう魔法は発動している。これで2本分の体力バーを消し去りたかったがーーーー







 煙が消え去った跡には、壁がなくなってボロボロの姿になった夫婦レイスターがいた…………体力バーは1本無傷を残して。






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