第63話 邪教信者



 イベントが無事に終わり、提示されていた全ての職業は解放された。ヨミは終了まであと3時間ぐらいの所で目標金額に届いたが、その前にクリアした人が現れていたようで、第一人者にはなれなかった。

 噂を聞くには、その人は人間ルーレットを何回かクリアしていた猛者とか…………


「んー、何をしようかなぁ……」


 ここは第2の街、マリーナの街で教会や神官が目立つ所である。神官なら職業的なクエストがありそうだが、ヨミにしたら関係がないので何をしようかと悩んでいたら…………


「……んむ?」


 周りの人とは雰囲気が違う集まりがあった。同じ神官だが、薄らと暗そうな感じを放っているように見えた。

 面白そうな予感を感じたので、こっそりと着いていくことにした。







「クソがッ! 何故、ルルイエ教が広まらない!!」

「そうだよな。ルルイエ様はこの世界を創造された際に関わったとされているのに、邪教と呼ばれているのはおかしい!」

「落ち着け、同士よ。俺達はこのままでは終わらない。そうだろ?」

「あぁ、そうだか……ようやく、聖女様を見つけたからな。今度こそ、思い知らせてやれるさ!」


 路地裏を通る男性達の話を聞いていく内に、ヨミの口元が吊り上がっていた。


 ーーふひぃ、面白そうな集団じゃない。あいつらを使って楽しめそうだわぁ……。それに、聖女とかいるのね。


 ルルイエ教、現代で知られているルルイエその物なのかはわからないが、この世界での主要であるイルミナ教と敵対しているような言い方をしていた。


「どう動こうかな? イルミナ教とルルイエ教が宗教戦争をするように動かさせる? ……いえ、何もしなくても戦争を起こしそうな気がするわね」


 聖女がいれば、思い知らせてやれると言っているから準備は終わらせているようにも聞こえる。


 …………ふひっ、やってもこっちには損はないし、楽しませて貰おうじゃない!




 ヨミはやることを決め、動き出していくーーーー







 ここは邪教と呼ばれているルルイエ教のアジト。教会の街であるマリーナの街に邪教と認定されているルルイエ教が教会を持つことが出来ず、普通の家をアジトにして隠れ潜んでいる。


「追跡はないか確認出来ているな?」

「あぁ、大丈夫だ。幾つかの囮にしている家を通って来ている」

「なら、いい」

「聖女様の様子はどうだ?」

「聖女様に選ばれたことで調子に乗っているようだ。まぁ、ルルイエ様が選んだから文句は言わないが、決して怒らせるようなことはするなよ?」


 聖女に選ばれたのは元は男爵令嬢だったが、両親が横領の罪によって平民へ落とされている。冒険者に身を落とし、僅かなお金で頑張っていた時にルルイエ教の聖女に選ばれた。

 それで聖女になった元男爵令嬢は調子に乗って、更なる地位を得られるようにとイルミナ教を潰す思惑を持つようになった。


「ルルイエ様から得られた特別な魔法があれば、教会を潰していくのは難しくはないが……最近、別の世界から呼ばれた存在がいるだろ?」

「確か、渡り人だったか?」

「そうだ。噂ではイルミナが呼び出した者で、イルミナ教の兵隊にするとか……」

「うげっ、あいつらは不死身だろ!? 死んでも生き返るような奴等に勝てる訳がないだろ!?」


 この世界の人はヨミ達のことを渡り人と呼んでおり、死んでも生き返る不死身だと知っている。

 敵対することになったら嫌な相手であり、イルミナ教の兵隊である可能性から慎重に進まなければならない。


「何で、タイミングが悪い時に……」

「あぁ、渡り人の目的がわかればーーーー」

「目的ね、ただ遊んでいるだけよ」

「「「ッ! 誰だ!」」」


 突然に知らない声が聞こえ、警戒心を上げる邪教信者達。その声は…………




「うひっ、ここへ遊びに来た渡り人よ♪」




 入口から堂々と入ってくる仮面を被った存在がいたーーーー









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