第61話 第2回イベント その5
『人間ルーレット』という頭が可笑しいゲームに参戦したジュンだったが、ゴールといえる数字までに辿り着けたプレイヤー達は皆無で、全員が転げ回って吹き飛ばされる結果になるのだった。
「あー、ないわー」
「あれは無理だぞ!?」
とぼとぼとヨミ達がいる観戦席へ戻ったジュンだったが、励ましの一言もない。泣きたくなるジュンだったが、掛け金のこともあり、謝ろうと…………
「……掛け金、すまなーー」
「もう! 100ゼニを無駄にしちゃったじゃない!」
「たった100ゼニっ!? 俺はもう半分も無くなっているんだが!?」
「負けたのは自分のせいでしょ?」
「ぐぅっ!」
ヨミの言う通り、掛け金は自分で決めていて、ヨミに言われたからではないので何も言えなかった。
「……どうする?」
「このゲームは私も無理そうかな? そろそろ、モンスターレースが始まる頃じゃない?」
「あ、あと5分です! 急ぎましょう!」
1レースがもうすぐで始まるので、急いで戻ることにした。ヨミとマミは既に賭けており、結果は後からでも確認出来るが、初めてのレースなので実際に走っている所を見たいのだ。
「ちょうど、始まる所でした!」
「間に合ったわね。マミは何を買っていたかしら?」
「私はスラリンですね! あ、あの黄色のスライムです! ヨミちゃんは……」
「バタフライよ」
このレースに参加するモンスターはスラリン、バタフライ、ウルフ、ゴブリン、ボア、スケルトンの6体で、ヨミはバタフライに1000ゼニも賭けている。
「あら、これでは道を無視して飛んでショートカットも出来ないわね」
「そりゃ、ショートカットが出来たらレースにならないだろ」
レース場は競馬場みたいな作りで、道を結界で外や内にも囲んでいて、ヨミが考えていたようなショートカット方法は無理そうだ。
「まぁ、負けても仕方がないけど、出来れば勝って欲しいわね」
「一緒に応援をしましょうね!」
「……私も応援する。ふれーふれー、ウルフ……」
「私達が買ったモンスターにしてくださいよ~」
「ボケはいいから。スタートしたわよ?」
ハーミンがボケていた間にレースが始まっていた。先頭に飛び出したのはやはり、1番人気のウルフで後からボアが追っている形になっていた。他のモンスターは遅れており、2体の勝負になると思われた…………
「あら? バタフライが何かしている?」
「……あれは、狂気を発症させる粉を蒔(ま)いている」
「ふぇっ! あ、あれを!!」
「す、スラリンが飛び出した!?」
バタフライからの粉を浴びて狂気の状態異常になったスラリンが身体をゴムのように伸ばし、パチッと勢いをつけて飛び出したのだ。
「速い速いよ!? これなら、スラリンが……」
「でも、軌道が……突撃した!?」
凄い勢いで突っ込むスラリンだったが、後ろからボアにぶつかり……ウルフをも巻き込んで転げ回る。
「……乱闘になった。後から来たゴブリンとスケルトンも喧嘩になった」
「これだと!」
「うん、飛んでいるバタフライだけが巻き込まれないから……」
狂気の状態異常を受けたスラリンがボアとウルフに突撃したことで乱闘になり、それほどに広くはない道なので地上を走っていたゴブリンとスケルトンも乱闘に巻き込まれる。つまり、飛んでいるバタフライだけが乱闘に巻き込まれずに悠々とゴールまで飛んで行き…………
『ま、まさかの1レース目から乱闘が起こり、巻き込まれなかったバタフライがゴールをしたぞぉぉぉぉぉ!!』
「「「ブーブー!!」」」
実況した言葉に観戦していたプレイヤー達が持っていたハズレ券を破いて文句を垂れ流していた。
「サービスレースじゃなかったのかよ!?」
「うわぁぁぁ! 1レース目から2000ゼニも無くなったぁぁぁ!!」
「バタフライ……5番人気が1位……読めなかったわ……」
1レース目から波乱な結果に終わり、しばらくは文句が鳴き止むことはなかった。バタフライを買っていたヨミの方では……
「バタフライ、5番人気でオッズも買った時から上がっていて12倍だから……」
「12000ゼニ! 凄いですね!」
「……稼いでいる貴女にしたらはした金かもしれないけど、あっさり当てたのは凄いかも」
「読めねーよな。あの結果は」
イベントでの目標金まではまだまだだけど、当てられたのは嬉しい。次のレースも買おうと思ったら、マミが最後のギャンブルも気になると漏らしていた。
「確か、『マジックスロット』だったわね?」
「名前から考えると、魔法を使ったスロットだと思うが……」
「……魔法で動くスロット?」
「それじゃ、ただのスロットのとあまり変わらないわよ。……気になるわね」
モンスターレースはまだ23回も残っているので、すぐに次のを賭けなくてもいいかと思い、最後のギャンブルへ向かうことにした。『マジックスロット』、どんなギャンブルなのか楽しみにするヨミ達だったーーーー
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