第60話 第2回イベント その4



《ジュン視点》




「ぐぉぉぉあぃおぉぉぁぁーー!!(ふざけんなぁぁぁ!!)」


 時速300㎞の速さで回るルーレットに立っておれず、所々に突き出てる棒へしがみついているジュン。ジュンだけではなく、他の参加者も誰1人も立っておらず、ジュンみたいに棒へしがみつくか、転げ回っているのどちらかだった。


『少しずつスピードが落ちてきて、今は時速280㎞!』

「そぉえぇぇもあああぃわ!!(それでも、まだ速いわ!!)」


 棒から手を離すと、転げ回っているプレイヤーの仲間入りになるのは間違いない。スピードが少しずつ落ちてきているのは聞かずとも、身で感じていた。動くならもっとスピードが落ちてから。




 260㎞ーーーー240㎞ーーーー220㎞ーーーーーーーー






 2分すると、時速150㎞ぐらいまで落ちてきて、ようやく景色がわかるようになった。


(ようやく立てる!)


 まだ棒に捕まりながらだが、人が空気抵抗を受けても立てるぐらいにはなってきた。所々に棒があるから、次々に棒を伝って端まで行ければいいと思っていた先に…………




『ここで妨害する者が現れます!』




 実況の女性がそう叫ぶのと同時に、上空から直径1メートルぐらいはある大きな岩みたいなのが落ちてきて、転がり始めた。


「なんだこりゃ!?」

「いやぁっ、来ないで!!」


 落ちてきた先に、当たりそうなプレイヤーがいた。驚いていた男性は手に持っていた片手剣を盾にして、受け流そうとし……女性はぶつかっても大丈夫ように棒へしがみつき、耐えようとした。だがーーーー




「「うわぁぁぁっ!?」」




 岩のようなモノが剣や身体に触れた瞬間に衝撃波が生まれて、2人とも数字が書かれたフィールドを越えて観客席まで吹き飛ばされていた。観客席へ突っ込むかと思われたが、空中で2人の姿が消えた。


『早速、2人が脱落しました! あの2人は受付前へ転移しましたので、怪我1つもありません~。あの岩のようなモノは『ビンボル』と言ったモンスターになり、当たった瞬間に衝撃波を放つ能力を持っています!』


(モンスターかよ! ここはHPがないから倒せないってことじゃねぇか!?)


 モンスターが現れたが、プレイヤー達が攻撃してもダメージは与えられない。だが、向こうは自由に動くことはなく、ルーレットの流れに乗って転がっているだけのは救いか…………

 何せ、プレイヤー達は攻撃するどころか立つだけでも大変なのだから。


(くそ、時間が掛かるごとに敵が増える展開もあり得ない話じゃない! 早く端に行って、7の場所へ飛び降りないと!!)


 時間を掛けるとまずいと感じたか、足が端へ急いで行こうとするのだった。




『110㎞!』




 ルーレットのスピードは半分以下になっており、今の動体視力でなら狙った数字がある場所へ飛び降りるのは難しくはないと考えられたーーーーーーこのままなら。






『…………100㎞! 時速100㎞になりましたので、また回します!』

「「「ーーーちょっ」」」


 生き残っていたプレイヤーは一瞬だけ、呆けた後に意味を理解して声を出したが…………女性がボタンを押すのを止められるわけがなくーーーー




『えいっ☆』




 スクリーンに映った女性が可愛らしい声と同時にボタンを押すと、スピードが時速100㎞まで落ちていたルーレットが…………時速300㎞へ一気に上がった。





「うわぁぁぁぁぁぁぁーーーー!!」「きゃぁぁぁぁぁ!!」「ふげらぁ!?」「ふのぁぁぁぁーー!?」「ぬぅぁ……ぶぎゃっ!?」


 様々な叫び声が上がる中で、放たれていたビンボルは見えない壁があるというように、外へ出ることもなく中で転がっていたので、ルーレットのスピードが上がるのに連れて、ビンボルの転がるスピードも上がった。

 次々とプレイヤー達が退場していく中ーーーー


「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーー!?」


 ジュンは必死に棒に掴まり、ビンボルが来たら触れないように小斧を投げることで軌道を逸らしていた。触れずにビンボルを退けるには、武器を投げるしかなかったからだ。魔法を放って軌道を逸らそうとしたプレイヤーがいたが、魔法では軌道を逸らせずに吹き飛ばされるのを見ていたし、ある程度の重さがある物をぶつけるしかないと考えた訳だ。




「こぉぉぉああ、うぎを……(このまま、次を待てばーーーー)」




 時速150㎞まで落ちたら、すぐ端まで無理矢理に走って、ゴールしたいと思っていたが、現実は非情だった。




『後に2人が残っていますね! 次の妨害する者が現れます!』




 まだあるのか!? とジュンは思ったが、掴んでいた棒が滑ることに気付いた時は既に遅かった。


(こ、この棒! 最初からモンスターーーーうおぁぁぁぉぉぉ!?)


 そう、皆が必死にしがみついていた棒は『スラボウ』と言うモンスターで、棒の形をしていて、時間が経つと滑る液体を出すだけのモンスターなのだ。命綱だった棒からも見放されたプレイヤー達は転げ回ることになりーーーー




「うわぁぁぁぁぁぐべらぁ!?」




 ここからジュンが出来ることはなく、ビンボルにぶつかって場外へ飛ばされてしまうのだったーーーー





『あらあら、全滅ですね。また次も参加して、当たりを勝ち取りましょうね!!』






 声を聞いて、何も出来ないまま退場させられたプレイヤー全員がこう思っただろう。






 ーーこんなゲーム、勝てる訳がない!!












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