第54話 紙袋マスク男



 ハイト達が集めた討伐隊を編成した後、第1フィールドの大ボスがいる場所へ向かう。大ボスの周辺にある北の森、そこでPKの被害が多いことや目撃者があったことから、そこへ向かうことにしたのだ。


「先程に説明したが、ここから俺達のパーティ以外は2つのパーティで行動し、探索を始める。見つけた場合はすぐに他のパーティへ連絡だ」

「わかった。ハイト達も気を付けてくれ」

「森の中は死角が多いから不意討ちでやられることもあるかもしれん。向こうは狩人もいるみたいだからな」


 弓矢を使ってくるPKプレイヤーがいることも確認している。だから、注意深く進むようにと言うハイト。

 ハイトの号令で3つに別れ、PKプレイヤーがいそうな場所を探索していく。




(目撃者が多かったのはこの時間。弓矢と大鎌を使うPKプレイヤーに大分やられていると聞いているが、あの仮面ちゃんと言う奴がいないとは限らん。倒して、弱体化させればいいが……)


 イエローやレッドはプレイヤーやNPCにやられたら、スキルレベルが下がるデメリットがある。スキルレベルを下げることが出来れば、弱体化させたと言っても良いだろう。


「……ハイトさん、今のところは怪しい動きはありません」

「そうか。何もないならいいが、何かあったら教えてくれ」

「わかりました。続けて監視をしておきます」


 皆に聞こえないぐらいの声でレムと話し合っていた。その話とは、一時的にパーティへ入れたルイスのことだ。ハイトが気になるだけで疑っている程度だが、レムにも一緒に監視をするようにとお願いしておいたのだ。

 今は何もしていないようだが、まだ警戒心は解かない。レムがハイトから離れた先に、ルイスが話し掛けてきた。


「ハイトさん、ここにまだPKプレイヤーがいる可能性が高いのですか?」

「ハイトでいい。そうだな、まだ第2の街への門番である大ボスを倒したプレイヤーはまだ少ない。つまり、プレイヤーはここら辺を通る機会が多いから、PKプレイヤーにとっては美味しい狩場って訳だ」

「成る程。大体の範囲は絞り込めているのですね」

「あぁ、怪しいのは三ヶ所。その1つ、北の森から少し歩くと、岩場が見えてくる。そこなら隠れる場所が多いからな」


 ハイト達が向かっている場所、北の森を右、東へ向かうと大きな岩がゴロゴロしている場所へ出る。野宿が出来そうな洞穴も沢山あり、PKプレイヤーにとっては身を隠すには便利な場所である。


「誰か1人でも見つければいいが……」

「おや? 誰かがいますね?」






 森を抜け、岩場へ出ようとしたところに1つの影があることに気づく。その影は神官服を着ていて、顔は紙袋で隠されていて、目のところを開けているだけで誰なのかはわからない。


「……何か被っていますね」

「名前は表示されてないな」


 このフィールドは大ボス周辺であり、結構強いモンスターがいて、ソロで行動するのは危険だ。しかし、向こうに立っている者は1人だけでこちらを見ていたーーーー顔は紙袋で隠されていて、名前も表示されていない。誰が見ても怪しいの一言しか出ないだろう。


「紙袋なんて、このゲームにあったのですね」

「怪しすぎますよ!? もしかしてーーー」


 格闘家の女性が叫んでいた時に、紙袋マスク男が両手に小斧を構えて、こっちへ突っ込んできたのだ。


「戦闘用意だ!」

「こいつもPKプレイヤーの1人なのか!?」

「かもしれませんね。武器を持って突っ込んで来ているのですから」


 こっちへ攻撃の意志があると判断し、迎え撃つことに決まった。同じ斧使いであるハイトは大斧を構え、前衛として動く。同じく、格闘家のメエラも拳を握って走り出す。




「テメーは誰だ!?」

「…………」

「黙りか?」

「はぁっ!!」


 ハイトが小斧を捌きながら叫ぶが、紙袋マスク男は何も言わない。メエラが拳を紙袋マスク男へぶちこもうとするが、軽やかに避けられる。


「早い!?」

「こいつ、神官服を着ているが、中身は前衛だ!」

「…………」

「うおっ!?」


 メエラへ小斧が振るわれるが、メエラは自前の反射神経でぎりぎり避ける。


「『レイ』」

「ちっ、魔法も使うか!」

「離れて! 『ファイアストーム』!!」


 レムが火魔法で紙袋マスク男を燃やそうとするが、範囲魔法であっても直前に悟られて余裕を持ってかわされてしまう。


「実力は高いみたいよ!?」

「あぁ、範囲魔法をあっさりと避けれる奴はあまりいない。こいつはもしかしたら、あの仮面の奴と同レベルだと考えた方がいいか?」


 仮面ちゃんと同じようにプレイヤースキルが高いと判断した。前衛だが、神官服に光魔法を使うことから神官の職業に就いているのも考え、一気に大きなダメージを与えないと回復される可能性もある。


(なんで、厄介そうな男がPKプレイヤーをやっていんだよ!?)


 普通にやれば、攻略陣営の中でもトッププレイヤーになれる可能性があるのに、何故PKプレイヤーをやろうと思ったのか気になるハイトだった。

 魔法で仕切り直しになった状況で、ハイトはもう一回声を掛けてみた。


「……なんで、PKプレイヤーをやっていんだ? その実力なら、攻略陣営の中でもトッププレイヤーになれただろう?」

「…………さぁな」

「ちっ、答えないか」


 紙袋マスク男は喋るつもりはないらしく、また突撃してきた。


「お前ら、集中だッ! やるぞぉぉぉ!!」


 突然に現れた、謎の紙袋マスク男。その正体は何なのか?










(ジュン、予定通りに頼みますよ。ヨミは面白いことを考えますねーーーー)











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