第48話 ついに大ボスへ



 日を改めて、皆で大ボスへ挑む。勿論、パーティメンバーは昨日と同じ…………ではなかった。


「おー、今回は頼むわよ」

「うむ、こちらも入れてくれて助かる」


 赤い髪のツインテール、海軍の服装を着ている少女……テイトクもこの場にいた。テイトクはヨミが呼んだ。

 『女神の使徒』が載せた情報を読む限り、ヨミ達だけでは火力が足りないと判断した為、第5位の力を借りることにしたのだ。テイトクもちょうど、野良のパーティに入って大ボスへ挑もうと思っていたので、タイミングが良かった。


「ちょっと、ヨミ……」

「ん?」


 ジュンが呼んでいたので、側に行くと耳に寄せて小声で話しかけてきた。


「大丈夫なのか? お前の力を隠したままで大ボスに勝てるとは思えないが……」

「大丈夫よ。アルティスの仮面は被らないけど、ドルマや『武具化』……アレもあるし」

「2体目の奴か……『武具化』も使うんだな?」

「えぇ、仮面ちゃんでテイトクと会ったことはないから、仮面さえ見せなければ、大丈夫よ。『武具化』はもうバレてもいいと思っている」


 テイムしたモンスターを『武具化』で武器にすることが出来ることは、まだ広がっていないが、もうそれは気にしないことにする。隠したまま、ナイフや初期の剣だけで戦うのが厳しくなるからだ。


「我のことはわかっていると思うが、テイトクと言う。武器は銃で近・中・遠距離でもいけるが、普段は中距離だな」

「そうか、中距離が出来るメンバーが入ってくれるのは助かる。俺はジュンだ」

「僕はルイスと申します」

「アタシはメリッサだよ~」


 自己紹介も終わり、皆は既に大ボス前におり、今からでも大ボスと戦える。


「現場集合になるとは思わなかったな。少しは連携の確認をしてみたかったのだがなぁ」

「私達も組んでからあまり短いから、連携も出来てないわよ。だから、野良のパーティと同じように最低限の連携とそれぞれの役割を理解していれば充分だと思うよ」


 ヨミもジュン達と組んで戦ったのは、昨日が初めてなのだ。別のゲームなら長年は組んできたが、今回は皆が違う職業を選んで、戦い方も特殊になっているから、連携が出来るとは思ってはいなかった。






 こいつが、大ボスねぇ。




サテバウム レベル20



 第1フィールドの大ボスは木彫りの女神彫像みたいなモンスターだ。普通の彫像と違って地面に根を張っており、赤い斑点が所々と見かける。

 まるで、病気に侵された女神……と言う作品のようだが、侵されているよりも……その病気そのもの、ウイルスを扱う側である。


「来るぞ!!」

「いきなり、ウイルスのガスが来るんだったな!」


 テイトクが叫ぶのと同時に皆はサテバウムの正面から飛び退き、サテバウムの口から噴射されたガスを避けた。

 この技は初見殺しで、アルベルトも小さな動作を見逃さなければ避けられなかったのだ。初見殺しなのに、初見で見破られたサテバウムは涙不可避なことだが、それは高い実力を持つアルベルト達だからのこと。もし、凡人だったらーーー




「うげ、地面までも赤い斑点が?」

「無機物も侵すから、踏むなよ!?」


 ウイルスに掛かると毒と脱力の状態異常を喰らってしまい、脱力は病気になったのと同じようにダルくなり上手く身体を動かせなくなってしまう。


「大ボスは動かないのは確かだなッ! 『バースト』『バースト』!」

「……ッ!」


 サテバウムは動かずに戦う大ボスなので、攻撃を当てるのは簡単だ。だが、防御力とHPは高いようで、爆発する弾を当てても、5本ある体力バーの1本目を1割も削ることは出来ていなかった。


「堅いな!?」

「次は私の番!」


 既にドルマを装備しているが、ナイフを両手いっぱいに持って投擲をしていた。弱点を探る為に投げたが、それはあっさりと見つかった。


「情報通り、赤い斑点の所が弱点ね!」


 情報があったからと言っても、自分で確かめなければ気が済まないのだ。サテバウムの身体に赤い斑点がいくつかあり、そこへナイフが当たるとほんの少しだが、他のとこよりダメージが多かった。


「ヨミちゃん、離れて! 『ファイアストーム』に……」

「テイトクもテラバウムの正面と後ろに行くな! 巻き込まれるぞぉぉぉぉぉ!!」


 ジュンの焦る声にビクッとしつつも、従うテイトク。声から高い本気度を感じたからだ。


「何を……」


 するつもりなんだ? と続かなかった。サテバウムの周囲を炎の竜巻と紫色の煙が包まれたからだ。


「使う前に一言は言えよ!?」

「皆なら大丈夫だと思ったからよ?」

「それでもだ!!」

「も、猛毒に……麻痺までも!?」


 大ボス相手に状態異常を与えるのはなかなかないのだが、メリッサが投げたダークマターαは大ボスであっても、状態異常を与えることに成功していたのだった。


「今です! 麻痺しているなら、あの攻撃はないはずです」

「ルイスの言うとおり! 麻痺が切れる前に出来るだけダメージを与える!!」

「お、おう」


 麻痺になった驚きを隠せないまま、テイトクはヨミ、ジュンと一緒に近付いて攻撃を仕掛ける。テイトクにはゼロ距離の攻撃があり、敵との距離が近いほどにダメージがはねあがるスキルを持っているので、2人と一緒に接近していた。


「麻痺は何秒だ!?」

「ボスなら5秒!」

「短いわね。どれだけ与えられるか……」


 麻痺が解けたら、すぐに離れなければならない。何故なら、サテバウムには……


「ッ、解けた!」

「きっちりと5秒か!」

「来るわ!!」


 ヨミはドルマを手に、大きなダメージを与えられたが、5秒はあっという間に過ぎて、麻痺が解ける。

 皆が警戒していた攻撃が来ることで、麻痺が解けた瞬間には、既に離れるように逃げ出していた。




 下からの攻撃、太い根っこが何本も襲ってきて、その根っこにも赤い斑点が見えた。


「触れただけでも、ウイルスに掛かるからな!」

「わかっているわ!」

「ここは我が根っこを抑えよう。その隙に少しでも減らしてこい!!」

「あの中を潜れと!?」


 返事を聞かずに、テイトクは乱射して根っこを弾いていく。


「ジュン、行くしかないわ!」

「ったく! あっさりと高いレベルを要求してんなよ!?」


 ジュンは愚痴を言いつつも、暴れる根っこの群れへ突っ込んでいく。あれだけの根っこをテイトクだけでは抑えるのは厳しいと思ったが…………




「アタシ達もいるからね!」

「やれやれ、溶解液は効果なさそうですね……」


 根っこの範囲外で待機していたメリッサとルイスが大量のネバネバ餅を抱えて、本体へ向けて投げていた。本体へ攻撃されていたなら、もちろん根っこが守らない訳もなく…………


「……!?」

「トリモチか!? いいな、欲しいぞ!!」

「メリッサに言ってね。今のうちに、1本……いえ、2本は削る!!」


 麻痺になっていた時に与えたダメージは1本の半分程度だったが、次は2本分を削ると言い放った。




「『スーパースラッシュ』! 『スーパースラッシュ』!」

「『アックスブレイク』ぅぅぅ!!」

「『三連弾』、『三連弾』!!」


 それぞれが一番高い威力を持っている技で本体へ喰らわしていく。見事、2本分も削り、あと半分になった所でーーーーーー赤いオーラみたいなのが立ち始めた。




「ここからが本番か」




 今までは様子見みたいな戦いだった。あの赤いオーラみたいのが出たことで、サテバウムは本気になったということだーーーーーー












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