第41話 模擬戦 ヨミvsジュン




 メリッサとルイスの実力はまだわからないところもあるが、今はアイテムを使って戦う予定らしい。メリッサにダークマターの後ろにαと付いているが、他にないか聞いてみたけど……


「ないわよ。αだけでも、レア度にA~Cとバラツキがあるけど……気に入らないことがあるのよ。アタシが良く出来たと思った料理がレア度:Cなのよ!?」

「そりゃ、マイナスの資質が高いほどにレア度も高くなるんだよ。何せ、お前の『料理』は|マイナス(・・・・)なんだから」

「むむぅぅ……」


 どうやら、今はαしか出て来ないようだ。おそらく、スキルが上がれば?下がれば?で別の代物を生み出せるのだろう。


「そうだ! 称号! 『ポイズンクッキング』を貰ったんじゃないのか!?」

「…………『…………料理…』よ」

「は? 声が小さくて聞こえねえぞ?」

「だから! そんな称号は貰ってない!! その代わりに『死を誘う料理人』を貰ったと言っているのよ!!」


 称号は貰ったが、ジュンが知っていたのと違っていた。『ポイズンクッキング』よりも物騒な称号に冷や汗をかいてしまうジュン。


「し、『死を誘う料理人』?」

「……そうよ。不本意だけれども」


 メリッサが貰った称号はこちらだ。


『死を誘う料理人』

 料理に壊滅的な腕を持った人へ贈られる称号。ダークマターの製作が可能になる。




 強力な料理というか、アイテムのダークマターを作れるようになったのはこの称号のせいらしい。最初はゴミばかりだったが……


「運営の奴らがゴミばかり生み出すメリッサが哀れだったから、少しでも役立てるようにと、この称号をくれたんじゃねぇの?」

「喰わすわよ?」

「お断りだッ!!」


 メリッサから距離を取り、アイテムボックスから大斧を取り出した。


「ヨミ! 俺達も始めようぜ!」

「大斧……? 神官だよね?」

「神官だけど、戦士でもあるからな」


 戦士なら大斧を持っていても問題はない。だが、神官服を着ているから違和感が凄い。


「アルティスの仮面を被る?」

「そういえば、被った姿を見たことはなかったな。見てみたいから被っていてくれ」

「わかったわ」


 ここならHPが0になる心配もないので、アルティスの仮面を被って、身体中にノイズを走らせる。




「どう?」

「……ヨミだとわからねぇな」

「身長までも惑わされていますね」

「声で性別までは判断出来るけど、それだけね」


 見た目からヨミだと判断出来る材料がないらしい。そして、ドルマを召喚すると感心したような声が聞こえた。


「ほぅ、カナタムか。1対1だと厳しい相手になるがーーー「『武具化』」ーーー!?」


 ドルマを武器にしてみせると、ジュン達は驚きの表情を浮かべていた。


「テイムしたモンスターに『武具化』を使う……僕には思い付きませんでした」

「詳しくはジュンを倒してからね」

「うおっ!? ぐっ!」


 ジュンはドルマを受けたが、思ったより重かったことに驚いていた。


「なんだそりゃ! 力は……そっちか上だと!?」


 見た感じでは拮抗しているようだが、長らくゲームで培った経験がヨミの方がATKが高いのを教えていた。大斧は武器の中で高いATKを誇る筈なのに、押されていることに驚きを隠せないでいた。


「レベル差もあるのに!?」

「あ、レベルは19に上がっているわよ?」

「もう19!? ……あ、イベントでのPKか!」

「あれだけをやっていればね……」


 イベントの時に30人以上もPKをしたのだから、ドルマと分配されてもこれぐらいは上がるだろう。


「なんで、大斧を選んだの? 神官でもあるから、メイスで良くない?」

「っ、この! 話すなら、手を止めてくれよ!?」

「……『回収』の舞をあっさりと受け止めるとは思わなかったわ」


 ツツジにやったと同じように、『回収』を使った舞と言える剣技を初めて披露したというのに、ジュンは危なげながらもかすり傷だけで済ませていた。

 このまま、かすり傷だけでも時間を掛ければ勝てるだろうが、これでは実力が見れないので、攻撃を止めて下がるのだった。


「ふぅ……、さっきのが『回収』なのか? こんな使い方をしてくる人は初めてだぞ」

「そう? 探せば、1人2人ぐらいはいるんじゃない?」

「ったく、考えもしないことを思い付く奴だよ。で、メイスじゃなくて大斧を使うかだったな?」

「えぇ、今はまだないけど、回復力を高めるスキルが付いたメイスもあるでしょ? 大斧には……」

「わかってんよ。だが、俺はメイスよりも大斧が使いやすいと判断したから、大斧を選んだだけだ。大斧には回復力を高めるスキルなどは付かんが、戦闘系のが結構あるからな」

「……だったら、神官じゃなくても良くない?」


 ヨミの言うとおり、神官ではなくて他の戦闘職を選べば良いのに、何故神官を選んだのか? その質問にジュンはシンプルに答えた。


「弱点を埋めるためだ」

「弱点?」

「そうだ。剣士は魔法に弱く、HPも其ほどには高くない。だから、MDFが高く、回復魔法を覚えられる神官を選んだ訳さ」

「そこまで考えて、選んでいたの?」

「当たり前だろ。剣士との組み合わせでINTが伸びないが……問題はねぇ!」

「アーツを使わないで攻撃してくるのね?」

「半端な時に使っても反撃されるだけだしなーーーぐお!?」

「言ってなかったけど、私にはこれもあるわよ?」


 そう言うヨミはナイフを投擲し始めていた。


「ちょっ! か、数が多過ぎ……終わらないぃぃぃーーー!?」

「忘れたの? 『回収』があるわよ」

「そうだったーーーー!!」


 ジュンは接近戦に特化しているので、長距離攻撃を持っていない。なので、大斧でナイフを防いで収まるまで耐えるしかないのだが……、ヨミの『回収』が終わらない弾幕を張り続けるので、反撃も出来ず逃げ回るしか出来なかった。


「何を逃げているんですか。これは鬼ごっこじゃありませんよ?」

「情けないー」

「お前らもこのナイフの嵐を受けて見ろや!? 反撃の隙も見当たらねえよぉぉぉぉぉ!!」



 結果、ジュンは回復しながら逃げ続けていたが、MPが切れた後は積み重なったかすり傷のダメージがHP1まで届いてしまい、締まらないヨミの勝利になるのだったーーーーーー













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