第32話 後ろ楯



 ルファスの魔法でブレイブグリズリーが倒れたとわかったのは、特殊クエストをクリアしたとアナウンスが流れてからだ。


「やりましたね!」

「あぁ…、ほとんどはヨミのお陰だったな」

「そうだな。これ程に活躍するとは思っていませんでしたがね!」

「全く、ヨミが何者か聞きたいところだが……先に硬質の刃は手に入れているか?」


 NPCもモンスターを倒せば、アイテムボックスへ自動に入ってくるようだ。


「ちゃんと入っているぞ。ヨミ、アグネウス男爵として、礼を尽くす。報酬を渡そう」


 どうやら、特殊クエストとは別に報酬を貰えるようだ。貰った物は…………




アグネウス男爵家の通行証

 アグネウス男爵の刻印が入ったメダル。これがあれば、いつでもアグネウス男爵家へ遊びに行けるぞ。

※譲渡・売却・強奪不可能


スキルオーブ『風魔法』


ルファスのフレンドコード




 NPCからもフレンドコードを貰えるんだ!?



「このメダルを門番に見せれば、街の中心にある貴族の街に入れる。屋敷まではその門番に案内してもらうといい」

「ありがとう! いつでも行ってもいいの?」

「勿論! と言いたいところだが、しばらくは忙しくなるだろう。時間が空いたら、そのフレンドコードで連絡をしよう。その際に、何か困っていることがあれば、助けになろう」

「あぁ、忙しいのは一人前のことで?」

「まぁな。じゃ、街へ戻ろう」







 結果を纏めると、ヨミはルファスとフレンドになり、後ろ楯が出来た。特殊クエストでまた手にいれたスキルポイントとお金、ルファスの屋敷へ遊びに行ける通行証と『風魔法』のスキルオーブ。


「では、また会おう」

「うん、ルファスお兄ちゃん、またね!」

「おっふ……」


 最後にサービスとして、笑顔で手を振ってばいばいするとだらしない表情のルファスが見れたのだった。

 ルファス達と別れて、溜まったドロップ品を売りにいこうとしたら、アナウンスが流れた。



称号『貴族の友』を獲得しました。



 どうやら、二つ目の称号を手に入れたようだ。効果は、貴族からの好感度が加算され、絡まれにくくなる。


「おっ、これならメルナみたいなことにならないで済みそう」


 絡まれにくくなるだけで、完全に絡まれることはなくなるのではないが、面倒事が減るだけでも嬉しいことだ。


「んー、これはどうしよう……」


 困っているのは、このスキルオーブだ。ヨミは『魔法不可』の制限スキルで魔法が使えない。サブに控えれば、使えるけどINT+100がなくなるし、勘だが、ずっとメインに入れておけば良いことが起きそうな気がするのだ。


 ドルマに使えればいいけど…………あ、『武具化』は街の中でも使えたよね? なら、普通に使わなくても…………


 テイムしたモンスターにスキルオーブを使うのは無理なのだが、ヨミが思い付いたことなら、出来るかも? と思ってしまう。『鍛冶』を持つ人の協力が必要だが。


「……マミしかいないね。いえ、ジュン達の誰かが取っていれば、頼んでみるのもいいかな」


 今すぐ聞かなければならない訳でもないので、スキルオーブは放っておくことにする。


 スキルと言えば、『回収』は有能だったわね。ハズレだとしても、ナイフを回収出来るだけでも使えたからいいけど。


 ヨミはこの『回収』をナイフ集め以外に何か使えないか、試していた。そしたら、ブレイブグリズリー戦で結構使えるとわかったのだ。

 例えば、投げた後に敵へ当たる前に回収して驚かすことも出来たし、意外だったこともある。『回収』は自らの手から離れていなくても、回収出来たことだ。ブレイブグリズリーが横薙ぎで攻撃してきた時、左手に持っていたドルマを回収(・・)し、右手に移すことが出来たのだ。


 ふひっ、まだまだ面白いやり方が隠れているかもしれないわね。


 『回収』だけではなく、他のスキルも同様に隠された使い方があるかもしれないので、PKでもして試していこうかなーーーと思っていたら、メルナが現れた。


「あ、帰って来たのね! 大丈夫だった?」

「問題はありませんよ。むしろ、貴族とフレンドになれましたし」

「えっ!? NPCとフレンドになれたの!?」

「β版では、誰もNPCとフレンドになっていないの?」

「聞いたことはないなぁ……いたかもしれないけど、その話は広まってなかったわね」


 そうなんだ。まぁ、知らない人のフレンド関係を知っていても無駄な知識にしかならないしね~。


「それより! お礼なんだけど…………何日か待ってくれる?」

「うん? 急ぐことでもないから構わないけど……何日かすれば、何かあるの?」

「うん、綺麗な包帯がもうすぐで10に届きそうなのよ。それで、その服のアップデートをしようと思ってね」

「アップデート?」

「見た目は変わらないけど、性能が上がるって意味よ」


 どうやら、今着ているお嬢様の服が更に強くなるようだ。その為に、綺麗な包帯を…………


「…………えっ、包帯で?」

「そうよ。その服は元、汚れた包帯から作ったのよ?」

「初耳なんだけど!?」


 汚れた包帯って、あの包帯!? とんでもない汚い奴が!?


 思ってもなかったことに愕然するヨミ。だが、今着ているのは包帯から作られているようには見えず、綺麗なワンピースのまま。


「そうだったんだ……」

「という訳で、少し待ってくれると助かるわ」

「うん、楽しみにしているね!」


 集まったら連絡するということで、別れた。


「あ、もう5時になるかぁ」


 そろそろログアウトして、飲み会へ行く準備をしなければならない。ドロップ品を売り出して、すぐログアウトするのだったーーーーーー








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る